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 ディプロ・タイタン新聞    AC400年 暖の月(6月)下旬   通巻0021号
新聞 NO.21

命令内容(赤字は不履行)(青字は消滅)
トカゲ王軍
 王軍 ザンバー・ボーンの塔 待機

シャーリラ軍
 王軍 マイアウォーター 待機
 陸軍 ゾルタンの塔 待機
 陸軍 ストーンブリッジ 待機

ケリスリオン軍
 王軍 氷指山脈 援護 陸軍 アンヴィル 援護 陸軍 ストーンブリッジ 待機
 陸軍 ゼンギス 援護 陸軍 火吹山 援護 陸軍 ゾルダンの塔 待機
 陸軍 異教平原 援護 王軍 マイアウォーター 待機
 陸軍 カアド 援護 王軍 マイアウォーター 待機
 陸軍 火吹山 援護 陸軍 ゾルダンの塔 待機
 海軍 ファング 援護 陸軍 カアド 援護 王軍 マイアウォーター 待機
 陸軍 アンヴィル 援護 陸軍 ストーンブリッジ 待機

マルボルダス軍
 海軍 西の海(北部) 援護 王軍 ザンバー・ボーンの塔 待機
 王軍 火山島 援護 陸軍 陸軍 西の海(北部) 援護 王軍 ザンバー・ボーンの塔 待機
 海軍 西の海(南部) 援護 陸軍 西の海(北部) 援護 王軍 ザンバー・ボーンの塔 待機
 陸軍 ポートブラックサンド 援護 陸軍 西の海(北部) 援護 王軍 ザンバー・ボーンの塔 待機
 陸軍 シルバートン 援護 王軍 ナマズ河 援護 陸軍 ストーンブリッジ 待機
 陸軍 シャザール 待機
 陸軍 南部平原 待機

バルサス軍
 陸軍 ダークウッドの森 移動 ゾルダンの塔
 陸軍 月岩山地 援護 陸軍 ダークウッドの森 移動 ゾルダンの塔
 陸軍 ヤズトロモの塔 援護 陸軍 月岩山地 援護 陸軍 ダークウッドの森 移動 ゾルダンの塔
 陸軍 クモの森 援護 陸軍 月岩山地 援護 陸軍 ダークウッドの森 移動 ゾルダンの塔
 陸軍 チャリス 援護 陸軍 月岩山地 援護 陸軍 ダークウッドの森 移動 ゾルダンの塔
 王軍 ナマズ川 援護 陸軍 ストーンブリッジ 待機

 
トピック
 シャリーラの残党を挟んで、アランシアは南北に分断された。その戦力は拮抗し、一進一退のせめぎあいが続く。【記事参照】
 マルボルダス軍は西の海の北部に全艦隊を集結させ、非常に大規模な演習を行った。

 
不協和音と協和音(Cacophony&Symphony)
 魔獣ガーガンティスがアランシアの地に召喚されることを予見していた人物が《混沌の要塞》にいた。アランティス出身の占星術師、《黒の司書》ソード・チャ・コークである。彼は来たるべき日に備え、五万冊の文献と古文書を調べ上げた。その結果わかったのは、オーフュースという夢幻界の幻獣の力をもってすれば、一角の怪竜を眠りにつかせることができるということだった。
 ソード・チャ・コークはあらゆる儀式を執り行って、そのオーフュースと接触をとろうと努めたが、すべて徒労に終わった。そして、ガーガンティス降臨の日が目前へと迫ってきた。《黒の司書》は最後の手段をとることに決めた。
 死と混沌のシンボルに彩られた巨大な魔術円の中心に、蒼白く痩せ細ったエルフに似た影があった。バルサスに仕えるミクのひとり、《わが名はあまたにして無、わが貌はあまたにして虚、わが力はあまたにして零》である。名を呼ぶ必要のあるときはリージョンと呼ばれていた。
 魔術円の外には、冥府の住人を表した黒い髑髏にペリュトンの枝角を結びつけた、奇怪な仮面をかぶった魔術師が、ゆらゆらと身体を揺らしながら踊り続けていた。降霊術を行なうソード・チャ・コークである。
 儀式が頂点に達したとき、リージョンの頭上に白い霞のような人影が現れた。それは、オーフュースの言及を残していた古代の執筆者の霊であった。《黒の司書》はすかさず呪文を詠唱し、哀れな亡者をミクの身体へと封印してしまった。
 ガーガンティスが地響きをたてて、ストーンブリッジへ迫ろうとしていた。雪の魔女の支配から脱したトロールたちは我が物顔で街を占拠していたが、このときばかりは彼らの餌のホビットのように縮み上がっていた。狂気の波動を漏らす怪物の前に、ストーンブリッジはひとたまりもないかと思われた。
 そこへ痩せこけた死神のような小人がひょこひょことやってきた。うつろな目をして、狂人のごとく独り言を繰り返している。引き裂かれた意識に苦しみ続けるリージョンの姿であった。ソード・チャ・コークは遠くからその様子をじっと眺めていた。
 リージョンの身体が粘土のようにかたちを変えはじめた。ミクは目くらましの名人で自由自在にどんな姿にもなれるのだ。彼はいま、古代人の霊の記憶を借りて、伝説の幻獣オーフュースへと変身しようとしているのだ。ソード・チャ・コークは、あのガーガンティスを永遠の眠りにつかせるというオーフュースがどんなに恐ろしい化物かと、好奇と畏怖の目で見守った。
 ミクの身体は一瞬大きく膨れ上がったが、みるみるうちに縮んでしまい、予想もしないかたちへと変形していった。ついに動きが止まったとき、そこに存在したのは、ガラスのような管と球が複雑に絡み合い、楽器のように弦が張り巡らされた奇怪な構築物であった。
 キン・コン・カン・キン・コン……
 それが音を出しはじめた。
 ソード・チャ・コークはそれに合わせたかのように激しく震え出した。この失敗に主人のバルサスがどのような処断で報いるか、そのことを考えただけで平静ではとてもいられなかった。それ、オーフュースであるはずの物体は、涼しげな耳に快い音楽を奏でていたが、アランティス出の占星術師の耳にとっては協和音でも何でもなかった。
 コン・カン・カン……
 馬鹿げた演奏が続いていた。
 そのとき、ソード・チャ・コークは荒々しい不協和音が響いてくることにようやく気づいた。その音はとんでもなく騒がしいものだったが、それまで呆然自失の《黒の司書》には届いていなかったのだ。
 それは魔獣の大鼾であった。ガーガンティスがストーンブリッジを前に座り込み、眠っていたのだ。オーフュースは文字どおりに、ガーガンティスを眠りにつかせてしまったのである。巨大な怪物の喉から響いてくる鼾は、ソード・チャ・コークにとっては快適な協和音であった。
 だが、この状況ははなはだ危ういものであった。戦闘の騒擾でガーガンティスが目覚めないとは限らず、バルサス軍もまた動くことができなかったのだ。オーフュースは途切れることなく音楽を奏で続けているが、それがいつまで続くのか誰にも答えられなかった。
 ガーガンティスの鼾が響くストーンブリッジでは、トロールたちの間で、仲間の指を切りとって耳栓がわりに使う習慣が広まっている。