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 ディプロ・タイタン新聞    AC400年 番の月(8月)下旬   通巻0025号
新聞 NO.25

命令内容(赤字は不履行)(青字は消滅)
シャーリラ軍
 王軍 マイアウォーター 待機
 陸軍 ゾルタンの塔 待機
 陸軍 ストーンブリッジ 待機

ケリスリオン軍
 王軍 ファング 徴兵 陸軍
 陸軍 ゼンギス 援護 陸軍 火吹山 援護 陸軍 ゾルダンの塔 待機
 陸軍 異教平原 移動 マイアウォーター
 陸軍 カアド 援護 陸軍 異教平原 移動 マイアウォーター
 陸軍 火吹山 援護 陸軍 ゾルダンの塔 待機
 海軍 ザンバー・ボーンの塔 調査(援護を受ける)
 陸軍 アンヴィル 援護 陸軍 ストーンブリッジ 待機

マルボルダス軍
 王軍 火山島 援護 海軍 西の海(北部) 待機
 海軍 西の海(北部) 待機
 陸軍 ポートブラックサンド 援護 海軍 西の海(北部) 待機
 陸軍 シャザール 待機
 海軍 オイスターベイ 待機
 陸軍 シルバートン 援護 王軍 ナマズ河 援護 陸軍 ストーンブリッジ 待機
 海軍 ブラッド島 行動不能

バルサス軍
 陸軍 ダークウッドの森 移動 ゾルダンの塔
 陸軍 月岩山地 援護 陸軍 ダークウッドの森 移動 ゾルダンの塔
 陸軍 ヤズトロモの塔 援護 陸軍 月岩山地 援護 陸軍 ダークウッドの森 移動 ゾルダンの塔
 陸軍 クモの森 援護 陸軍 月岩山地 援護 陸軍 ダークウッドの森 移動 ゾルダンの塔
 陸軍 チャリス 援護 陸軍 月岩山地 援護 陸軍 ダークウッドの森 移動 ゾルダンの塔
 王軍 ナマズ川 援護 陸軍 ストーンブリッジ 待機

 
トピック
 ついに動いた!(詳しくは記事を参照)
永遠のエンジニア(The Eternal Engineer)
 マイアウォーターのドワーフ王、グルボロンが謁見の間に姿を現わさなくなって、すでに久しい。己の寝室のベッドにうずくまって、敵の襲来に脅え続けていたからである。以前は手入れを欠かさなかった長い髭も絡まり合って、食いかすで汚れてしまっている。
 グルボロンは、先王グルハーンの腹違いの弟であった。闇エルフの協力を得て、ストーンブリッジからまんまとジリブランの戦鎚を盗み出しすことに成功した男でもある。その後、トカゲ兵の軍隊をマイアウォーターへ引き入れて、兄に忠誠を誓っていた勢力を滅ぼし、王位を簒奪してしまった。
 彼の裏切りは露見することなく、ジリブランの戦鎚による効果もあって、トカゲ兵を追い払う抵抗軍の指導者として、ドワーフ族の信頼を得た。トカゲ王の支配からはなかなか脱することができなかったが、火山島にカアスの軍勢が上陸したとき、ついにトカゲ兵の軍は力を失った。
 現在は雪の魔女に支配されていた混成軍を迎え入れ、三勢力に囲まれながらも独立を保っていた。幸い闇エルフとは手を組んだ仲であったため、南方からの侵攻を防ぐ砦の役割を買って出ることで、同盟関係を結ぶことができた。
 グルボロンに不安はなかった。手元にジリブランの戦鎚があったからではない。彼が受け継いだ《マイアウォーターの遺産》のおかげである。いにしえの《遺産》の力をもってすれば、街が陥落することなどありえない、そう確信していた。
 マイアウォーターは本来アランシアの技術レベルでは到底考えられないような防衛機構を備えていたのだ。地下より回転式にせり出される塔が二十基、街の周りに配置され、それぞれには《アカラデューンの火箸》と呼ばれる巨大火焔砲が据え付けられている。
 そのような設備をマイアウォーターにもたらしたのは、《永遠の技師》ガロク・ヴァロクロクセンロクである。この不死のドワーフは、異なる次元からふらりとマイアウォーターに立ち寄ると、数々の発明を生み出した。
 そして、マイアウォーターの防備がととのったとき、当時のドワーフ王はヴァロクロクセンロクの知識が他勢力に渡るのを恐れ、ドワーフにとってすら果てしなく深いとされる地下牢に彼を監禁したのだった。新生児の血にひたされた処女の髪の毛で撚り上げられた呪いのいましめが、《永遠の技師》の次元移動をも封じ込めていた。
 マイアウォーターの安定が続くと、ヴァロクロクセンロクの存在は忘れ去られ、防衛設備の機能を知る者すらいなくなってしまった。グルボロンがその秘密を知ったのは、王族の図書室で秘密の小部屋を偶然発見したからである。
 だが、《永遠の技師》の存在はもはや彼だけが知る秘密ではなかった。
 ヴァロクロクセンロクが地下牢から姿を消したことが判明したのである。鋭利な刃物で切断されたいましめの残骸が、外部の助けによるものであることを示していた。生来の陰謀家であるグルボロンは直感した。彼が誘拐されたのだということを。

嘲笑う八角髑髏(The Sneering Octagonal Skull)
 闇エルフ族において、誘拐すなわち奴隷確保の任務を請け負っているのはキャムカーネイヤー家である。したがって、地上襲撃部隊はキャムカーネイヤー氏族に属する者だけで構成されるのが普通である。
 しかし、血統にこだわらず、闇エルフ全氏族から特殊な能力に秀でた者だけを集めた、特殊誘拐部隊が存在した。それが《嘲笑う八角髑髏》団である。元はキャムカーネイヤー家の精鋭集団だったため、八角髑髏という呼称にその名残をとどめているが、現在は半数が別の氏族出身で、闇エルフ以外の種族さえ混じっている。
 《嘲笑う八角髑髏》は、一般の部隊では成し遂げられない特殊な誘拐任務を、評議会のシェルン・ケリスリオンから直接命じられる。闇エルフの間ですら、その名は相手を脅かすときの決まり文句に使われる。「おい、《嘲笑う八角髑髏》に見つめられているぞ」というように。
 現在の団長は、《義人》ヴァライナ・ヘラトロンである。ケリスリオン家の貴族のひとりで、剣と陰謀の使い手だ。美しい黒い肌の露出を好む闇エルフにあって、彼はどういうわけか鮮やかな青の絹布に銀の刺繍がほどこされた服で全身を覆っている。手袋やスカーフ、ドミノ仮面を身につけているので、外から見ることができるのは常に濡れた唇のあたりだけである。ヴァライナは自らの欲望を満足させるためだけに、美しい子供を性奴隷として攫ってくる。そんな彼が《義人》の異名で知られている理由はまったくの謎だが、ふさわしい呼び名に直そうとする勇気のある者はいないし、闇エルフの歪んだユーモアを満足させているようだ。
 副団長は、《毒腺》アンゴナッセ・ランディル、キャムカーネイヤー氏族の一員である。優れた暗殺者であると同時に、毒を主とした薬物の研究家である。いつも地味な濃緑の厚手の服を着ており、薬品の染みがあちこちについている。目は狂人のそれであり、紫に変色にした長い舌は、得物を舐めただけで毒の刃へ変えるとまで言われている。ヴァライナが飽きた子供をもらいうけ、毒の効果を試す実験台に使っていることは公然となっている。恐れられているという点では、《義人》以上である。
 《銀の横笛吹き》テルペリン・フィンデはテサラス家に属し、岩ウジを笛の音で操る能力の持ち主である。彼女の身を包む布はほんのわずかで、黒光りする肌を銀の彫り物が覆っている。ほとんどの時間を岩ウジと一緒に過ごし、ほかの闇エルフと交流することはまずない。侵入路や脱出路を強引に確保する役目を果たす。
 《能無し山師》オロンオロド・ミリスグロスは、採鉱を専門分野とする一族の中で役立たずの扱いを受けていたが、ヴァライナに才能を見出された。絶対方向感覚を備え、わずかな傾斜も感覚的にとらえることができ、正確な地図を作成することができたのだ。そんな彼が無能とみなされていたのは、極度の金属アレルギーだったからである。革製の衣服を着込み、頭や顔にも布を巻き、ぎょろりとした目だけが外に覗いている。
 《無貌》、彼に――いや、それにあるのは仇名だけで、本来の名前はない。なぜなら、闇エルフの戦士の姿をした《無貌》の正体は、変化(へんげ)だからである。この化物がなぜ獣性を抑えて、闇エルフに仕えているのかは誰にもわからない。《無貌》の潜入を防ぐことはまず不可能である。
 《嘲笑う八角髑髏》の団員はもちろんこれだけではない。《アーハロゲンの仔》リアンテ・オレダン、《タールの影》ダイオ・モルドフェリア、《岩搾り》ケズドーなど、恐るべきメンバーが揃っているのだ。

恐怖のジアルガノート(Dreadful Xiarganaut)
 異教平原にて、巨大な攻城兵器の建設が進められていた。
 指揮をとるのは、《永遠の技師》ガロク・ヴァロクロクセンロクであった。この狂気のエンジニアは、嬉々として闇エルフに協力していた。助けられた恩からではない。ひとつは、マイアウォーターへの復讐のため、もうひとつは――こちらのほうが彼にとっては大事なのだが――自らが開発した防衛機構を打ち破る兵器を生み出すことに激しい喜びを感じていたからである。
 ヴァロクロクセンロクの存在を《闇の祖》に明かしたのは、裏切者の黒エルフ、ミスレグ・グレイソーンであった。この謎めいた男が何故マイアウォーターの秘密を知っていたのか、それはいずれ明らかになるであろう。彼が見た目どおりの者でないことはたしかである。
 ヴィライデル・ケリスリオン王は《嘲笑う八角髑髏》に命令を下した。《永遠の技師》を生きたまま誘拐し、マイアウォーター攻略に協力させよ、と。
 そして、それはすみやかに遂行されたのである。
 攻城兵器の完成には数ヶ月を要した。あまりに巨大で、たった一台で二十基の塔をすべて無力化できるしろものだったからである。その兵器は、角のある蛇ジアルガの姿を模して作られていた。神話に登場する混沌の怪物である。
 機械仕掛けの大蛇から噴き出す黒い煙は、《魔櫃》の力で暗雲たれこめた空をますます暗くした。不吉な遠雷のごとき音を常に鳴り響かせ、分泌腺でもあるかのように機械油の臭いを撒き散らしていた。
 《アンガロックの脚》リュグンゴル・カルハロスは、この現実化した悪夢の存在を目の当たりにしてひどく悦んだ。ドワーフも狂気に冒されていれば、優れた芸術を生み出せるのだ、そんなことを考えたものである。
 《永遠の技師》は渾身の傑作に《ジアルガノート》の名を授けた。
 恐るべきジアルガノートは進路上に存在するありとあらゆるものを押し潰しながら、マイアウォーターへと移動を開始した。