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大ケリスリオン皇祖
御帰還! 十六世紀の歳月を経て、ついにわれらの真の王がこのティランデュイル・ケルサスに御帰還された。大いなる力をもって世界を導くために。 AK(ケリスリオン暦)1813年、血の月、影ティリエル(満月)の夜、大ケリスリオン陛下は、エイユー・リンデール・ケリスリオンより全臣民に詔を下された。以下はその宣旨である。 ![]() わがティランデュイル・ケルサスの民すべてに告ぐ。 余は、高貴なる闇エルフ最初の王にして、偉大なる都市ティランデュイル・ケルサスの建造者、ヴィライデル・ケリスリオンである。 タイタンの世界は再び混沌の時代を迎えた。ヴォルゲラ・ダークストームの弟子である三魔術師が再び目覚め、北方に雪の魔女、南方に〈嵐の子〉、火山島にトカゲ王、いずれ劣らぬ混沌の代表者がよみがえったのだ。 かの者たちのあいだで、闘いは飽くことなく続けられるであろう。終わりを告げる鐘を打ち鳴らすことができるのは、もっとも聡明にして長命、もっとも手腕があり、強大である種族、すなわち闇エルフだけである。わが民がほかのすべての種族の王となり、支配者になるのは自然の摂理なり。わが一族が指導者となり、将軍、司令官となれるなら、軍を見事に組織して、湧き上がりし混沌を地上から一掃できよう。 余は、この聖戦でわが民を率いる者として、大いなる復活を遂げた。これはアル・アンワール・ゲリサンの御意志である。余の霊威に打たれて、評議会〈シェルン・ケリスリオン〉および忠実なる臣下たちは、余に対しおごそかに服従を誓った次第である。そのようなわけで、余に従うわが民も力ある神の御加護を受けている。 余は、魔界から〈失われた苦悶の櫃〉ミュアリエル・シャーレンを持ち帰った。この魔櫃に備わる力をもってすれば、オークやゴブリン、トロールといった混沌の僕たちはことごとく隷従するであろう。奴隷の人間やドワーフは、わが民に叛く意志を完全に失うこととなる。 さらに、ミュアリエル・シャーレンがあれば、忌わしき陽光を恐れる必要もない。余の支配する地は常に暗雲垂れ込める闇の世界となろう。夜な夜な孤立した農場や小村を襲撃する時代は終わった。〈ブレシンの破滅〉はもはやその力を失ったのである。〈静かなる守護者〉ティリエルが昼も夜もとこしえに見守ってくださる。 いざや立て! 立ち上がれ、ティランデュイル・ケルサスの民よ! 先王アイルドン・ケリスリオン 逝去す ヴィライデル・ケリスリオン王の弔辞 アイルドン・ケリスリオンは自らの力が足りぬことを自覚し、熟慮のすえ、いかなる強制を受けることなく、己の意志でティランデュイル・ケルサスの支配権と魔術王の座を放棄した。 余が魔術王の座について二日後、アイルドン・ケリスリオンは自らの尊厳を守るため、クァルメルッセの儀にのっとり自害した。余はわが裔の死を深く悲しむものである。彼の遺骸はクァルメロンダの洞穴に運ばれ、そこに埋葬されるだろう。 わが忠実なる臣下のすべてに魔術王としてまた建国の皇祖として勧告する。 彼の亡骸に別れを告げ、彼のクイレに救いがあらんことを願いつつ、ティリエルに篤き祈りを捧げんことを。そしてまたこの厳かなる死を、アル・アンワール・ゲリサンのみが御存知である運命の道へと、わが民を導く摂理の現れとして受けとめんことを。 |