2002年6月

 6月26日
 ここんとこずっと雨だが、このくらいなら合羽を着ていれば防げるから大したことはない。
 雨には4段階ある。
 第0段階 合羽を着なくても平気な雨
 第1段階 合羽を着れば濡れない雨
 第2段階 合羽を着ても濡れる雨
 第3段階 合羽なんざ着ようが着まいが一緒だ! パンツまでずぶ濡れだ! という雨
 
 さらにこの上に
 「第4段階 濡れるとか濡れないとか以前に、流されるんですけど! という雨」
 もあるらしいのだが、幸いなことに経験したことはない。

 とにかく今週・先週の雨は第1段階で、このくらいなら荷物の防水も楽だし、運転中に前がよく見えなくて困ったりもしないし、仕事に差し支えることはない。
 しかし油断したころに第3段階あたりの、機関銃みたいな雨が襲ってくるもんである。
 おととしの7月、よりによって合羽を持ってくるのをわすれた日に第三段階が発生。
 渋谷の陸橋下、溜池交差点辺りが池になったあの日。
 マフラーに水が入るかと心配したあの日。
 私は、合羽なしで走っていた。
 
 いや、それでもまだいいのだ。
 問題は冬である。真冬に第三段階が発生するとマジで泣ける。
 思い出しただけで体が震える。
 
 本の感想。

 北方謙三「三国志7」(角川春樹事務所)。
 掲示板にも書いたんだけど、もう一回感想を。
 戦争の形勢が逆転するときというのはこんなにあっけないものなのか!?
 あれだけの優位がすべてパーに!?
 現代の戦争では、「あそこで勝敗が決した」と言い切れるほどの決定的な瞬間はなく、じわじわと差が開いていくものだが。
 それをひとつの戦闘でひっくり返そうとしてもできないもんだが。
 いや、それは後知恵かな。
 そのとき、戦いに立ち会っている人間と後から論じてる人間では感じ方が違うのは当然。
 曹操が「老人」と呼ばれているのでわが目を疑ったが、確かにもう、この時代では老人だよな。
 
 今野敏「ST 黒いモスクワ」(講談社ノベルズ)。
 まあ、ミステリとしては、その、トリックがあまりにすぐわかって、ちょっと。
 微妙にどんでん返しもあるけど。
 ロシアという異国の描き方も、人種を超えた男の絆も、曲者ぞろいである「ST」たちのキャラ立ての仕方も、どうもいまひとつ。
 読んでる間にストレスはない。それは立派なこと。
 陰惨な出来事が作中で起こっても、読後感はさわやか。それもすごい。
 でもなあ。
 これだ、というものがない。すべて、さらっと流すだけで終わってる。
 まあ、これはSTシリーズの第3作らしいから、1と2を読まずにこれをいきなり読んだ私に問題があるのかもしれない。
 おなじ今野敏作品と比較すると、「ギガース」よりは上、「熱波」「アキハバラ」「慎治」なんかよりは下。

 三木原慧一「クリムゾンバーニング3 日米開戦」(中央公論新社)。
 真打登場! まってました!
 これだ。これを私は読みたかったのだ。
 遊び心全開。でもそれはただの遊びではなくて。
 わくわくするのだ。先が読めないし、すでに魅力的な謎が提示されているし。
 キャラもそうだ。たった一行、一言でもキャラを印象づけることはできる、その実例がここにある。
 1巻は数値がうざったかったが、きっとあれも、いずれ必要だったとわかる日がくるんだろう。
   とにかく、「いろんな意味で」架空戦記の常識を塗り替えるシリーズになりそうだ。
   
 6月24日
 ゆえあって48時間絶食していた。
 食い意地が張って張って張りまくっている私にとっては苦行である。
 なかなか貴重な体験だった。
 腹が減ったと感じるのはせいぜい24時間くらいまでで、それを過ぎると空腹など感じなくなる。
 そのかわり、腹のなかに冷たい塊があるかのような、奇妙な錯覚をおぼえる。
 そして、だるい。体を動かすのが億劫になり、寝たくなる。
 温血動物だから寝てもカロリー消費はさほど減らせない。だからますますだるくなる。
 それ自体は苦痛というほどのものじゃなかった。胃が食べ物を要求して暴れるんだろうと想像していたが、ものの見事に外れた。
 だが、外に出たとき、食べ物を見たとき、欲求に抗うのはつらかった。
 なんと日本は食べ物にあふれているのだろう。
 禁酒・禁煙してる人間もこんな感じか? いやもっと辛いらしいな。

 で、目標の48時間はクリアしたのでひとまず終わり。
 何か食ったとたん、目が覚めたように意識がはっきりした。それまでは頭が半分も働いておらず、しかもそれを自覚していなかったのだ。
 もっと伸ばせるな。
 ダイエットの上では絶食はマイナスだってことはわかってるが。

 椎間板ヘルニアがよくならない。腰から背中にかけてが慢性的に痛い。医者にかかり始めたころ、去年の10月よりひどい。
 もっと真剣に体重を減らさないと。

 今日は部屋の片付けをしていた。
 27年間、整理整頓というものを一切やらずに生きてきたが、いまや私の部屋は本だらけで布団を敷く場所に苦労するほどである。床が抜けるかもしれん。
 というわけで不要な本は売るか捨てよう。
 今日一日で、大体400冊ほど処分したようだ。
 まだまだ残っている。
 雑誌だな、あとは。SFマガジンのバックナンバー、RPGマガジンのバックナンバー、ウォーロックのバックナンバーなんかが残ってる。
 結構いたんでるから売るのは難しいかな。
 あと同人誌も問題だ。買ってきた同人誌がざっとダンボール5つ、自分で作った同人誌の版下がやはり5つ。
 あと2週間で部屋を片付けると目標を立てた。
 いそがなければ。
    
 6月21日
 坂本康弘さんの「歩兵型戦闘車両00」読み終えた。
 直球! 直球である!
 文章や台詞回しに違和感があったけど、やがて気にならなくなった。
 面白かった。
 
 負けるもんか。
 6月20日
 やっと日記が書ける。

 パソコンを新調しました。
 ソーテックのG4170Rを選びました。
 CPUは1.7ギガ、ハードディスクは40ギガ、CD−RWドライブ搭載。
 今の基準では別に高スペックマシンじゃないんだよな。
 当たり前のことだがパソコンってすごいなあ。
 
 今日、会社の人とADSLの話をしていると、こんな風に訊かれた。
 「ADSLって何で早いの?」
 「え? それはその、ふつうの音じゃなくて超音波みたいなものを流してるからですよ」
 「じゃあ、使い放題なのはどうして? どうして三分いくらとかじゃないの?」
 「え? え? その……NTTの交換機を通してないからですよー!」
 「なるほど」
 納得してもらえたが、私は「嘘を教えてしまったような気がする。どうしよう」と思っていた。
 逆に、「普通の電話はなぜ時間従量制なのか? その料金の根拠はなに?」と調べるべきなのかもしれない。
 アメリカでは違うわけだし。日本だって昔は違ったわけだし。
 どうなんですかNTTの方。
 何げなく使っているものでも、説明しろといわれるとうまくできないことが多い。
 コンピュータはなぜ計算できるの? といわれたときは困った。
 SF作家になりたいとか言ってる人間なら答えられないとまずいよな。
 今のうちに調べておこう。

 坂本康弘「歩兵型戦闘車両00(ダブルオー)」(徳間書店)ついに買ってきた。
 本屋を5軒めぐったぞ。
 これから読む!
   ロボットものは好きなので楽しみである。
 
 私もがんばろう。
 6月11日
 8日と9日は友人の家に遊びに行った。
 いろいろあったのだが、まあひとつ思ったことは。
 「月姫」のプロローグに出てきた
 「自分自身すら騙せない嘘は、聞いている人間を不快にさせるわ」
 というのは深い言葉だったんだなあ、ということ。
 
 ワールドカップが盛り上がってるので何か書こう。
 といってもサッカーではなく、韓国のことを。
 最近「ガディウス」というネットゲームをやっている。
 MMORPGというのかな。韓国のゲームだ。
 まだ初めて一ヶ月も経ってないが、面白い。
 根気ゼロで、RPGは投げ出してしまうことが多い私だが、ネットを使った奴となると少し話が違ってくる。
 いろいろな人に助けてもらえるから、というのもある。
 会話が楽しい、というのもある。
 キャラの能力的にもプレイヤーの知識的にも先の話だが、私も他の人を助けられるくらいになりたい。
 で、気になったこと。
 このゲームは親しみの持てる絵柄だ。
 特に美麗というわけじゃない。10年前のRPGみたいだ。
 が、デフォルメの仕方がかわいらしい。
 アメリカのゲームなんかとはぜんぜん違う。
 他にも韓国のゲームをいくつか見てみたが「かわいくデフォルメ」されているのはこれだけではない。
 「ラグナロックオンライン」なんかとくに萌え度が高い。
 で、疑問だ。
 私は今までずっと不思議に思っていた。  アニメの作画を韓国にやらせるとレベルが下がるのはなぜだろうと。
 経験は十分つんでいるはずなのに。
 もしかして「美的感覚が日本人とぜんぜん違う」のではないか?
 と仮説を立てていた。
 たとえばディズニーの絵柄って、私にはひどく不気味に思える。
 漫画・アニメは独特のルールと美意識に基づいて人間を抽象化・記号化・誇張するものだ。
 そのやり方が違いすぎるのだ。
 同様の差が韓国との間にもある。韓国的にはあれで美しい絵なのだ。
 あるいは、異なる美意識にむりやり合わせようとするあまりうまく描けないのだ。
 と思っていたんだがなあ。
 実際には、韓国のゲームとか漫画を見る限り、かなり日本に近いんだよな。
 近すぎて逆に心配に感じるほどだ。
 じゃあなんでかな。不思議。
 コミックバンチでやってる韓国漫画「プルンギル 蒼の道」も気になるし、もう少し調べてみよう。
        
 6月5日
 今日、「CHAIN」を出版社に送った。
 びびりながら返事を待つ。
 というわけで近々CHAINは削除されます。

 封筒に「書籍」と書こうとして、どんな字だか思い出せないことに気づいた。
 書いてみたが、何かちがう気がする。
 PHSのメール機能で漢字を出してみたが、小さくてよく見えない。
 どうしたものか。
 はっ。
 私は持っていた「北方謙三 三国志7」を開いた。
 ああ、やっぱりだ「伊籍」という人がいる。これで字がわかった。
 ありがとう三国志、ありがとう伊籍。
  
 6月2日
 パソコンは、いろいろいじったら動くようにはなった。
 少なくとも「例外0Eを出して止まる」「勝手に再起動」はなくなった。
 今日の夕方から数時間は安定して動いている。
 スイッチを入れたら動く。勝手に止まらない。
 そんな当たり前のことが奇跡のように嬉しい。
 大きなファイルをダウンロードするときによく止まっていたが、それも止まった。
 プリンタが正体不明のエラーを出しているが、これもめどが立ちそうだ。
 と、それだけ聞いてると自力で問題を解決したように見えるが、そんなことは決してない。
パソコンが自力で復活した。
 そんなことあるわけないって?
 私もそう思う。
 だが、なんか「突然動くようになった」という印象を受けるのだ。
 ハードディスクを空にして何もかも再インストール、それでも直らないのでまた繰り返し。
 BIOSもアップデートして。
 それからボードを抜いたりさしたり。
 例外0Eで出てくるメッセージに「VMM」という単語があり、VMMはメモリー関連だと聞きかじったので、メモリーも換えた。
 すると動くように……
 うーむ。よくわからん。
 例外0Eが出なくなったのは、どの時点だ?
 サウンドボードとかLANボード、モデムカードとかのボードを全部抜いた時。
 そのあと挿しなおしたら正常に。
 ハードディスクを変えても止まるんだから原因はマザーボードに決まっている、とか思ってたのが浅はかだったか。
 結局、決定的な原因はわからないので、また明日にでも同じことが起こりそうで怖い。
 いまのうちにバックアップをとっておこう。
 PC自作派と呼ばれる人たちはこんなトラブルを日常的に乗り越えてるのか。
 すごいなあ。

 さて、本の感想でも。
 
 西尾維新「クビシメロマンチスト」(講談社ノベルズ)。
 うわああああ。
 前作「クビキリサイクル」は文体が上遠野浩平だった。
 今回は月姫だ!
 ……というのは冗談なんだが、嘘ではない。
 別にナイフ使いの殺人鬼が出てくるとかそういうところを指して似てるといってるわけじゃなくて。
 
 とにかく文体がとんがってる。すごく執拗で、挑発的で、時に小説の枠組みを超えてしまって、しかもその「逸脱」が効果を発揮している。
 人物も。
 こんなやつ絶対いるわけない、という意味ではリアリティゼロなんだけど、でも心に直接訴えてくる真実味がある。
 ここまで極端に造形しなければ書けないものはあるのかもしれない。
 決して奇をてらっているわけではなく、はったりをかまして高尚そうに見せかけているわけでもなく、本来人間には描写することも理解することもできないものをどうにかして表現しようとした……
 その結果が「限りなく醒めた、それでいてねちっこい文体」であり、ぶっ飛んだ人物であると感じた。
 
    
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