「ポスペパークはお祭り日和」季節のカレンダーが、春のピンク色から、若葉の新緑色に変わります
陽の光も、柔らかい風を受けて、新緑の間を、きらきらと飛び跳ねています。
その元気な光や風を、体いっぱいに受けて、メールを手にしたペットたちも、
みんな元気に走り回っていました。
今日も、メール配達のペットたちは大忙しです。
だけど、今日のみんなは、何だかとても、うきうき、そわそわとしています。
なぜって・・・明日はポスペパークで、年に一度の若葉祭りがあるんですもの。
「あ、こんにちは! いよいよ明日だね。」
「うん。そっちに気をとられて、配達先、間違えるなよな〜。」
行き交う挨拶も、今日はちょっぴり浮かれ気味です。
それほど、みんな明日のお祭りを楽しみにしてるんです。
新しい季節最初のその日、ジフ山にあるポスペ神社には、色とりどりの幟が立ち、
わたあめやお面の屋台が並びます。
中でも一番盛り上がるのは、毎年それぞれの種類のペットごとに作る、
山車やおみこしの、パーク練り歩きです。
どのペットたちも、他の仲間に負けまいと、仕事の合間に一生懸命作るので、
毎年、とても立派なものがそろうんです。
今年、金岡くんたちミニウサギは、大きな大きな山車を作りました。
そしてその山車の設計図面を書いたのは、金岡くん自身でした。
(きっと、他のヤツら、びっくりするだろうなあ。)
今日のお仕事は、もうおしまいです。
金岡くんは、くふふと笑うと、ベッドにもぐりこみました。
と、その時、
とんとん とんとん とんとん とんとん
「金岡兄ちゃん。 お兄ちゃんんん。」
激しく扉を叩く音と共に、泣き出しそうな子どもウサギたちの声がしました。
金岡くんは、ベッドから飛び起きると、急いで扉を開けました。
途端に、わっと子ウサギたちが金岡くんにしがみついてきました。
お月見の時に知り合って以来、金岡くんにすっかり懐いている子ウサギたちです。
「お兄ちゃん。お兄ちゃん。」
「ボクたちの山車が・・・。山車があああ。」
わあああん わあああん
「・・・山車が?」
その言葉を聞くや、金岡くんはあっという間に部屋を飛び出しました。
月明かりの中を走る金岡くんの胸に、不安がどんどん広がってきます。
だって、遠くからでも見えていたはずの、ミニウサギたちの山車の屋根が、
どれだけ走っても、見えてこないんですもの。
そうして、ようやく辿り着いた先で、金岡くんが見たのは――――、
横倒しになって、胴体が半分に折れた無残な山車の姿でした。
「いったい誰が・・・」
そう言いかけて、山車の足場あたりで、にょっきりと生えた、
大きなタケノコに気がつきました。
どうやら、この春最後のタケノコが、成長に邪魔な山車を倒してしまったようです。
(こんなことって・・・)
その成長の力に、しばらくぼうぜんとしていた金岡くんでしたが、
「・・・もうお祭りなんて、出来ないよぉ。」
「くすん。今年はミニウサギの出し物はナシになっちゃったよぉ。」
まわりでしくしく泣いている、仲間のミニウサギたちに気がつくと、
一度、ぷるぷるっと頭を振って、ぐっとお腹に力を入れなおしました。
「みんな、泣くんじゃない。あきらめるのは早すぎるよ。」
「え。でも・・・。」
「お祭りまでには、まだ時間があるじゃないか。何とかしようよ。」
そう言うと、二つに折れた山車をていねいに調べ始めました。
屋根の方の飾りは、それほどひどい壊れ方はしていないようです。けれど、
山車の足になる、大きな車輪にはヒビが入っていて、修理しても、
とても本体を支えきれそうもありません。
(だからって、こんな重いものを、みんなで持ち上げるわけにも・・・そうだっ。)
金岡くんは、ぽんと手をたたきました。そして、山車をざっと見渡して、
軽くうなずくと、仲間に向かって言いました。
「みんな、今からこれを、おみこしに改造しよう。」
「ええ〜? だけど、そんなこと・・・。」
「出来るさっ。山車はムリでも小さめのおみこしなら・・・。屋根をすこし小さくして、
思い切って形もシンプルにすれば・・・、うん。材料もこれだけあるし、何とかなりそうだ。」
「金岡・・・本気か?」
金岡くんは、足元に落ちていた小枝を拾うと、地面に大まかな設計図面を
さらさらと書き始めました。
「去年、テディベア・チームがおみこし作っただろ? あの行程、結構
眺めてたんだ。このまま泣いて終わりじゃ悔しすぎるよ。それに・・・。」
にょっきりと伸びたタケノコに、ちらっと視線を向けて、金岡くんは、
ニッと笑いました。
「山車をひっくり返したのって、デカくてもたった一本のタケノコなんだよ。
あんなのなんかには、ミニウサギ・チームは絶対負けられないや。」
金岡くんの負けず嫌いな、いたずら笑顔に、ようやくみんなの顔にも明るさが
戻ってきました。
そうだ。みんなでがんばれば、何とかなるかもしれない・・・。
あんなに楽しみにしていた、お祭りなんだもの。
「金岡兄ちゃん、ボクたち何すればいい?」
まっさきに子ウサギたちが、金岡くんの横に来て言いました。
「そうだなぁ・・・まずボクの部屋の宝箱から、マッハダッシュを取って来て
くれるかな? チームのみんなに、大至急このことを知らせなきゃ。」
「オッケ。」
「よーし。屋根の取り外しは任せてっ。」
「ねえここ、担ぎ棒に使えそうじゃないか?」
元々は元気で素早いミニ・ウサギたちです。ショックから立ち直ると、
一気に‘おみこし作り’の作業が動き始めました。
月明かりの中、次々に集まってきたミニウサギたちが忙しそうに、飛び回ります。
金岡くんも、図面とにらめっこしながら、あちこち走り回っていました。
もちろん、だれも文句なんて言いません。
「金岡、お腹すいたでしょ。差し入れ持ってきたよ。」
「はい、汗拭いて。そのままじゃ、風邪ひくよ。」
振り向くと、いつの間に来たのか、まるる家のかがみちゃんとぴか家のすふれが、
左右から、タオルとおにぎりを差し出していました。
「あとね、スタープラチナも持ってきたよ。屋根の飾りに使えないかな?」
かがみちゃんとすふれが、にこにこ言いました。
「金岡、図面のここ、おみこしサイズじゃないぞ〜。」
声と共に、にゅっと伸びた手は、もこもこのピンク色です。
「よしひこ?? どうして?」
「ふふふ・・・。ポスペ・ネットワークを甘く見るもんじゃないよ。」
ちびまま家のテディ・ベアのよしひこくんが、腰に手を置いて、軽く笑いました。
気がつけば、飛び回っているのは、ミニウサギばかりではありませんでした。
忙しいのが苦手のハズの雑種ネコや、ちっちゃなハムスター、
ペンギンも、ひょこひょこと板を運んでいます。
(みんな・・・)
金岡くんは、急いで目をこすって、ぼやけかけた視界を元に戻しました。
「さあ、一気に仕上げだっ。」
子ウサギたちは、木の根元で眠ってしまったようです。
寝顔が笑い顔なのは、明日のお祭りの夢でも見ているからなのでしょうか。そうして、星の明かりが、薄い朝もやに掠れ始めるころ、
急ごしらえながら、とても立派なおみこしが出来上がりました。
屋根にとまっている鳳凰は、みんなが持ち寄った宝物に彩られて、虹色に光っています。
「お疲れさま〜。」
「すごいね、やったね。」
満足いっぱいの笑顔が、あちこちで交わされます。
金岡くんも、両手をうーんと天に伸ばして、大きな息を吐きました。
「さてと、部屋に戻って一眠りしようかな。」
そうつぶやいて、歩き始めようとした時、体がふわりと浮きました。
わっしょい わっしょい
わっしょい わっしょい
「今夜の功労者、金岡をおみこしだ。」
「金岡、お疲れさま。」
わっしょい わっしょい
わっしょい わっしょい
ミニウサギたちの掛け声と共に、金岡くんは何度も何度も宙を舞いました。
「みんな〜、もういいよ、降ろしてよぉ〜。」
照れくさくて、そう叫ぶ金岡くんの声も、みんなの楽しそうな掛け声に
すっかりかき消されていました。
もうすぐ、パークのあちこちでお囃子の音が、にぎやかに聞こえ始めます。
今日は年に一度の若葉祭り。
配達にいったペットの帰りが遅くなっても、
今日は大目に見てやってくださいね。おしまい