ガンパレード・マーチ



 
おまけラフ


2nd PLAY 芝村舞 編 「速水おっかけ日記抜粋」(注;基本的に実際プレイ中に起きた事を元に構成してありますが、ゲーム中のセリフや動作とは一部異なります)

戦車学校に編入した。三番機士魂号複座型のパートナー速水厚志は、人の良さそうなぼややんとした奴だ。
ぼややん速水と一緒に訓練と仕事に励む。私は芝村だ。努力は怠らない。現実に背を向ける事、それは即ち死に直結する。
士魂号の反応速度のマッチングに時間がかかり、深夜になってしまった。速水の手作りだというサンドイッチを分け合って食べる。
こやつ、家事の才能があるようだ。私より上手いではないか。

出会って何日だとか、一緒にいた時間がどれだけであるとか、そういう事に大した意味はない。
明日からは少し早起きして、速水の分の弁当も作る事にした。

厚志とのコンビネーションも板についてきた。機体の調子も良い。このまま累積撃墜数を伸ばしていこうと思った矢先であったが、
共にプレハブ校舎屋上で弁当を食べた後、自分は今よりこの国の守護者となる、と厚志が言った。笑わないのか、と問われた。
案ずるな。私は世界の全てを敵に回しても戦える女だ。そなたが望むなら世界で一番の同盟者となろう。そう言うと厚志は
空を映した目の色で―――笑った。

翌日、どういう手段を用いたのか、厚志はいきなり上級万翼長に昇進し、司令に就任していた。
複座の相棒が不在では仕方ないので茜大介を指名する。三人で深夜まで機体の調整に励む。
今まで意識していなかったが、厚志は茜に限らず周囲の者からの受けが非常に良い。女生徒の中には奴をすっすすす好‥‥ええい!
けしからん。とにかく、そういう輩がゴロゴロしている。だから何だというのだ!私は芝村だ!

厚志が我が従兄妹殿に陳情した装備品が山のように届いた。部隊の人間から不満が出る事もないし、よくやっていると思う。
ハンガーから仕事を終えて戻る途中に小隊隊長室を覗くと、必ずまだ働いている。私に気が付くとすぐに手を休めにこやかに
近付いて来るのは、少し嬉しい‥‥‥。しかし、すぐ側に事務官加藤がいるのでプライベートな会話は控えねばならぬ。

シャワーをあびていたら、中村と滝川に覗かれた。その時は叩き斬ってくれようと思ったが、その後の部隊内での彼等の評価が
見事に地に堕ちたのを見ると次第に憐憫の情も湧いてきた。中村はあれで結構人気者なので自力で名誉挽回しているようなのだが、
気の毒なのは滝川だ。今や誰も奴の言う事に耳を貸そうとしない。職も無いので独りでブラブラしているだけだ。
見兼ねて電子妖精を数匹くれてやる。マイナスの発言力を、これで何とかするが良い。
しかし、何日たってもただ持って歩いているだけだ。おぬしはばかか。使えというに。更に追い討ちをかけるように滝川への制裁が
審議される事になった。被害者の私がもう良いと言っているのに、どうやら厚志の怒りが収まらないらしい。哀れだな、滝川。
まあ、自分で捲いた種だ。仕方なかろう。

教官や数人の生徒達から、部隊内でいぢめが横行しているので何とかしてくれと言われた。私にどうしろと?少し悩んだが
いぢめはけしからん。とりあえず原と森に、石津と仲良くせよ、と進言してみたが、力強く拒否されてしまった‥‥‥。
あの者達の親分子分関係をどうにかすれば、森はいぢめを止めるかもしれぬと思い、あれこれ画策してみるが、効果に乏しい。
数日後、教室で石津が明るい顔をして厚志に話しかけていた。どうも私の知らない所で、原と森に厚志が注意したらしい。
それでこの問題は解決したようだ。部隊内の人間関係にも気を配るとは、厚志、そなたなかなか優秀な司令であるな。
さすが我がカダヤだ。‥‥‥‥しかし、この件で原と森が厚志を恨んでいる様子なのが気になる。
厚志と仲良くするよう、私から提案しておこう。――――「わかったわ。本気を出させてもらうわよ」いや、そんな満面の笑顔で‥‥
そなたにあまり本気を出されては私が困るのだ。前言撤回、というわけには‥‥ゆかぬか、やっぱり。うぅ‥‥

よくよく考えてみたら、厚志がパイロットでない今、何も無理に複座に乗る必要はないのだった。
一番機に士翼号を配備させ、壬生屋に茜と組んでもらう事にして、今後は単座で戦闘に臨む事にした。

これで何度目の週末であろうか。日曜は必ず厚志を誘ってデェトをしているが、私とてヲトメのはしくれであるので、
たまにはあちらから誘ってくれても良いのではないか?と今日まで黙っていたのだが、どうにもそういう話が出てこないので
やはりこちらから誘うしかないのだな、と諦めにも似た気持ちで持ちかけた所、「あ、ごめん、先約があるんだ」
なんだと〜〜〜!!!!女か?女だな!もー怒った!!絶対相手をつきとめてやる。
まず一番怪しいのは田代だ。あいつは厚志を好いているし、厚志もよくあいつの居所を探している。
もし私に隠れて厚志に手を出そうなどという魂胆ならば、女の友情もこれまでだ!
おい田代!日曜ヒマか?‥‥そ、そうか。うむ。ならば良い。私の見当違いであった。いや、気にするな。
――――かくて、教室中の人間に日曜の予定を聞き回った所、なんとヨーコ小杉が犯人(!)である事を確信した。
そなたという女は、脳みそ天晴な顔をして、来須とラブラブだとばかり思っていたら、なんという事だ。そりゃまあ、
私とて厚志以外の男どもからあれこれ想いを寄せられてはいるが、カダヤは1人きりと堅く心に誓っている!
来須はそなたに、それはそれは一途な恋心を寄せているのだぞ、間違いがあってはならぬ。うむ。まかせるが良い。
みなの者、聞け!作戦会議だ。委員長、校舎の修理を提案する!満場一致で議題は可決。一同楽しく作業して日曜は過ぎた。めでたい。

厚志に、だいじなものを持ってきて、と頼んでおいたら、モジモジしながらとんでもなく勘違いした納品をしようとするので
私はそんなもの要求してないぞ。と受け取り拒否を表明した所、顔を真っ赤にして涙さえ浮かべながら私の頬を打って
「ひどいや!」と言ったきり走り去ってしまった。女に手を上げて言うか?ちょっとムカついた。‥‥私が悪いのか?

裏マーケットでアレを売っているのを見た事がある。
安っぽいそれは、資産価値があるわけでもなければ、とりたてて洒落ているわけでもない。しかし、そこに込められた意味は
想いを交わしあった男女の間において、それなりに重みがあるのだと‥‥思う。私は芝村らしからぬ考えに捕われているやもしれぬ。
そうは分かっていても、言わずにはおれなかった。「その‥‥すまぬがアクセサリィを持ってきてはくれまいか」
厚志はいつものぼややんな笑みをたたえて「うん、いいよ〜」と返した。私の意図は通じているのだろうか、いささかの不安は拭えない。
幾日かが過ぎた。教室に入ってきた厚志は拳大のゴツゴツとした紫水晶の原石を携えていた。まじないでも始める気だろうか?あるいは
司令としての心労を癒すつもりなのか、などと訝しく眺める私の元に笑顔で歩み寄り「はいこれ、頼まれてたもの持ってきたよ」
ああああああ〜〜〜〜、そうではないのだ!!そりゃ、あの店の装飾品の中では最高級品で、それに文句などあろうはずもないのだが!
だがしかし!!「‥‥よく、似合っている」背後を通る来須には、私の心に流れる涙の滝は見えまいな‥‥‥(泣)
いや、ここで諦めるわけにはゆかぬ。心を落ち着けて再び問う。「すまぬがアクセサリィを持ってきてはくれまいか」
「うん、いいよ〜」数日後、厚志が寄越したのはイヤリングであった。貴様、もしやわざとか!いや、人の好意を邪推してはならぬ。
しかし、どうしても、どうしても厚志の手からアレを貰いたいのだ、私は!
そこで私は考えた。大体、夜中に二人きりになったとて校内では照れてこちらを見ないようにしてさっさと去ろうとするような男だ、
私がリードしてやらねば駄目かもしれぬ。唐変木め。唐変木め。今に見ておれ――――――
まずは仕込みだ。私は自ら件の「安っぽい指輪」を調達し、それを厚志にプレゼントした。そしてその場で言った。「私に!何か!
アクセサリィを!持って来てはくれまいか」ここまですれば、如何に鈍い奴でも何を言いたいか分かろうと言うものだ。
一瞬たじろいで、にこやかに承諾した。そして左手を突き出して受け取り準備オッケーな体勢の私を置き去りに、厚志は仕事に戻った。
ふ‥‥まあいい、今日の所はこのくらいで勘弁してやる。
四日が過ぎた。結局、私一人が空回りしているのだろうか。ちょっと切ない気持ちになった。夜風が冷たいなあ‥‥鼻がツンとした。
ハンガーに向かう途中、小隊隊長室から出て来た厚志に呼び止められた。慌てて目尻を拭う。
「手、出して」幸せそうな顔しおって。おぬしのせいでここ数日の私の精神状態は‥‥「どうしたの?また何か怒ってるの?
ね、ほら、左の手かしてよ。君にこれをプレゼントするんだから」
その安っぽい金属の輪は、さっきまで握り締めていた厚志の掌の温度を私の指へと伝えてきた。そしてはにかんで笑う厚志の指には
私が渡した同じ指輪が輝いていた。

大きな声では言えないが、私と厚志は「靴下を交換した仲」である。
それがどういう意味かは知らないが、交換を持ちかけられて断る理由も特になかったので応じたまでた。
聞いた所によると、闇のルートで靴下を高値で取り引きする組織があるという。あんなものにそのような価値があるとは信じ難いが。
―――今日も教室で厚志の様子をそっと見つめていた。春の日射しは麗らかで、私はこの時間に少しの幸せを感じる。
そしてふと気付いた。昨日までと何かが違う。そう、厚志は「舞の靴下」を持っていなかった!何故だ
まさかとは思うが、そなた改良アビオニクスのカタに私の靴下を「ぶるせらしょっぷ」とやらに売ったのではあるまいな!!
―――そして私のソックス・ウォッチャーな一日が始まった―――
裏マーケットに行くと、親父が声をかけてきた。速水の靴下を買い取ると言う。相場を聞くと「靴下は¥100だ」そんな金額の為に
厚志が私の靴下を売ったとも思えない。問えば親父も買い取ってはいないと言う。もちろん私も売るつもりはない。店を出た。
柱の影から、階段の死角から、あらゆる人間の動向に目を光らせる。誰か厚志から我が靴下を譲り受けた者がいるのではないか。
しかし、授業もそっちのけで調査しているというのに、誰の持ち物にも「舞の靴下」は見当たらない。
日の落ちた二組教室、話し掛けてくる森の声を上の空で聞きながら、岩田の持ち物をチェックしていた。こやつも持っておらぬな‥‥
森の話はまだ続いている。あー、そーねー。生返事を返しつつ遠坂の持ち物に目を光らせていた。と、その時
「うっ!」一言うめいたかと思うと、教室の奥で田代がバッタリと倒れ伏した。な、な、何事だ?!!死んだのか?!
森の話はまだ続いている。悪いがそれどころじゃない。慌てて田代に駆け寄‥‥ろうとしたが、退室した後でテレパスにも反応しない。
一体田代はどうなったのだろう、明朝のHRで本田から田代が死んだ、などと聞かされたらどうしよう。そんな事を考えながら
一日を終了する。結局靴下も見当たらなかったので、記録も付けずに眠れない夜を過ごした。
翌朝。HRで死亡報告されたのは森だった。失態だ!!二組に駆け込むと田代が「仲間が死んだんだぜ、泣けよ!」と拳と暴言を吐く。
おぬしのせいじゃ!とは言わぬまでも、少し恨みがましい目になってしまう。あの時もっと森の話を真摯に聞くべきであった。
肩を落としてプレハブ校舎二階を歩く私に厚志が明るく声をかけてきた。「はい、これ。頼まれてたよね‥‥くすっ。好きだね、君も。」
たわけ!私が頼んでおいたのはかわいいものだ。厚志の差し出した「舞の靴下」を廊下に打ち捨て私はOVERSのリセットボタンを押した。

近頃、戦況は人類側の圧倒的勝利で、平和な日が続いている。しかし何故か学園内は不穏な空気に包まれつつある。
血気盛んなのは結構だが、こう喧嘩続きでは荒んだ雰囲気にもなろうというものだ。
程々に戦闘があった方が戦時下の学兵の精神衛生上好ましいという事か?
口火を切ったのは原と遠坂の喧嘩だった。以後石津と善行、来須と若宮、茜と滝川と連鎖。どこに行っても嫌な空気が流れている。
こめかみを押えながら教室に入ると、瀬戸口がいきなり抱きついて接吻してきて、「じつはこういう関係なんだ」とブータに争奪戦を
仕掛けているではないか。こういう関係って何だ!きさまどさくさに紛れて!!!だいたいこやつ、ののみに告白してつきあうように
なった、と部隊中の噂になっておきながら「好きな人?君だよ」と、いけしゃあしゃあと抜かすような不実な男だ。田代や加藤にも
何かひどい事をしたようで、相当嫌われている。誤解だ、と仲裁に入る間もなく派手な喧嘩が始まってしまった。
はなはだ不本意ではあったが、周囲の人間が不機嫌なのも過ごしずらいので、瀬戸口とブータにはあやまっておいた。
来須と若宮も私生活ウンヌンあまりにしつこく注進してくるので、とりあえずあやまっておく。ゴメンね?(にこ)
全く‥‥こんな学園崩壊ドラマのような生活、何とかならぬものか。
二組教室からヨーコ小杉が泣きながら出てきた。ひどく落ち込んでいる。‥‥‥‥どうやら来須に別れ話を持ち出されたらしい。
人の心というのはかくも不確かなものなのか。あの二人は運命の絆で結ばれているものとばかり思っていたが。
一説によるとヨーコを特攻で戦死させても来須は他の女になびかない鉄の貞操の持ち主だと聞いていたのに。
もしかしたらこの件は探究すべきなのかもしれないが、私自身、厚志以外の男に鞍替えする気が到底起きないので見ないフリを決めこむ。
(資:この時点の来須からヨーコへの友:106*愛:98/ヨーコから来須への友:85*愛:15)
 

絢爛舞踏章を取った。厚志が司令として、私がパイロットとして同じ目的の為に進んだ結果である。
もう、この先何をすべきか、私には分かっている。決戦の日は近い。やはり金曜日が狙い目であろうか、などと考えていた木曜日。
「ねえ‥‥ねえ、舞ったら。今度の日曜、2人でどこかに行かない?」なんと。先手必勝とこれまで私から誘うばかりであったが、
厚志からデェトの誘いとは。これはどうあっても来週まで引き延ばさねばなるまい。わかった。まかせるがよい!
おそらく最後の、平和な休日は、快晴だった。
週が明けた。厚志が司令を降りていた。意味を計りかねて、仕事について聞かせてもらおう、などと見当外れな質問をぶつけてしまう。
「んー、でも今、無職だから」居心地悪そうに笑う厚志を見て、その真意が悟られた。
分かった。最後の戦いは、いっしょに‥‥‥だな。
絢爛舞踏までの道程を共に戦ってきた士翼号を壬生屋に譲り、厚志と私は再び三番機複座型のパイロットに就任した。
出会った頃のように。
2人きりでハンガーに残り、機体の調整をし、最終決戦に備えて、機体にカラーリングを施した。私達の色、「青」に。
いよいよ明日。
世界を、かえるのだ。我ら2人の手によって。
 

=了=
 



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