― 頭蓋咽頭腫とは ― | |
お腹の中にいるとき(胎生期)に、頭蓋咽頭管(下垂体になる細胞)の細胞が一部残ってしまった為に発生する、良性の脳腫瘍です。 位置的には頭部の丁度真ん中あたり(第3脳室・トルコ鞍という頭蓋骨のポケットのような所にある、脳下垂体がある場所)にできます。 成人と小児では、腫瘍の出来方や症状に違いがあります。 小児に出来る腫瘍は、石灰沈着が見られ、黄褐色〜濃緑色のモーターオイル状の液体を溜めた腫瘍の袋(シスト)ができやすく、その中に、ギラギラしたコレステリンの結晶が浮いているという特徴があります。 |
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― 主な症状(小児の場合)― | |
1 | 水頭症(頭蓋内圧亢進症状) 脳は水(髄液)に浮かんだようにして保護されているが、この髄液は毎日約500cc作られては吸収して循環している。 腫瘍の増大により脳室で作られた髄液が出口を失い、たまった髄液が脳を強く圧迫する為に、頭痛や嘔吐の症状が出る。 |
2 | 視障害 視神経や視交叉(目の神経が交わるところ)を圧迫する為に起こる障害で、視力の低下や視野障害が出る。 視野障害とは、中心から耳側の視野が半分欠けますが、両目が同じように欠けると言う事ではなく、不規則な欠損が多い。 |
3 | 下垂体機能障害(下垂体ホルモン欠乏症) 脳下垂体はホルモンを分泌するところだが、腫瘍による圧迫や破壊によりホルモンが分泌されなくなったり、分泌されにくくなったりする。 詳細は以下の通り。 @ 成長ホルモンの低下 身長がのびにくくなる A 副腎皮質ホルモンの低下 副腎機能不全をもたらし、全身の脱力や低血圧・ショック・低体温などの生命にかかわる症状が出る B 甲状腺ホルモンの低下 寒冷過敏症(寒がり)・便秘・集中力がない・カサカサの皮膚・毛が抜ける・むくみ・物忘れ・やる気が起こらないなどの、症状が出る C 性腺ホルモンの低下 男性では勃起不能・睾丸萎縮、女性では無月経や不妊の原因となる D 乳汁分泌ホルモンの低下 特に重大な問題はなし E 抗利尿ホルモンの低下 短時間に大量の尿が出てしまい、多量の水分を摂らないと脱水状態になり生命にかかわる F 電解質異常 体の塩分の濃度が高くなったり低くなったりする その場合、意識がはっきりしなくなったりする |
4 | その他 腫瘍が脳を圧迫する為に、その進展方向によっては意識障害や精神障害などの症状が出る |
― 治療 ― | |
1 | 腫瘍 腫瘍に対しては薬による治療法はなく、手術をする。 腫瘍を全部摘出できれば完治するが、癒着などで全部摘出できない場合も多くある。 全部摘出できない場合は、以下のような治療をする。 @ 放射線療法 手術的では取り除く事が難しい場所に対して、補助的に行う事がある。 小児の場合、腫瘍の再発を遅らせる事にも有効。 腫瘍以外の脳の組織にも放射線が照射される為、希に合併症や下垂体機能障害などが生じる事もある。 A ガンマナイフ(特殊な放射線治療装置) およそ3cm以下の腫瘍が対象で、効果が出るまでに半年から5年ほどの時間の経過を必要とする。 1回の治療では効果が出ないときがあり、1〜2年後に視障害や下垂体機能障害が出る事もある。 B オンマヤ 腫瘍の袋にたまったモーターオイル状の水を、チューブを通して頭の皮膚から抜く方法 シストの腫瘍に対処する。 Cシャント手術 水頭症に対して行う。 頭の脳室からお腹にチューブを入れて、髄液の流れが悪くなった場合自動的に設定した圧になるように、お腹に余分な髄液を流し吸収させ、一定の脳圧を保たせる。 |
2 | ホルモン欠乏症 @ 成長ホルモン 身長が伸びなかった場合(小人症)、時期を見ながら薬を投与する A 副腎皮質ホルモン 定期的に血液検査をして、必要な量のホルモン剤を服用する B 甲状腺ホルモン 定期的に血液検査をして、必要な量のホルモン剤を服用する C 性腺ホルモン 時期を見てホルモン剤を服用する D乳汁分泌ホルモン E抗利尿ホルモン 手術後の一過性の場合は水溶性ピレシンの静注(点滴)をするが、永続性の場合はデスモプレシン点鼻薬を使用する。 (携帯にも便利な鼻の粘膜から薬を吸収させるもの) F電解質異常 必要に応じて水制限や電解質の点滴などをする。 |