BearCat 的ブックレビュー

コンバットフライトシミュレータ表紙 タイトル Microsoft Combat Flight Simulator : Inside Moves
− WWII ヨーロッパ戦線シリーズ −
著者 Ben Chiu 著
橋本 潤 監訳
(株)日本ドキュメンテックス 訳
出版社 アスキー出版局
価格 2,800円
マイクロソフトの Combat Flight Simulator 公式ガイドブックです。
内容はマニュアル的な要素が多いのですが、CFS に付属のマニュアルやヘルプより多くの情報を得ることができます。
戦術についても多くのページが割かれているので、初心者にとって非常に役に立つ本です。
ただ、記述については「詳しく」とは言い難いところもあり、中級者以上の方にとっては物足りないところがあるかも知れません。
 
バーチャル・パイロット・バイブル表紙 タイトル バーチャル・パイロット・バイブル
著者 戸塚 有介
小泉 司
出版社 株式会社 ビー・エヌ・エヌ
価格 3,883円
BearCat 一押しの戦闘フライトシミュレータ本です
ジェット戦闘機系のフライトシミュレータ向けに書かれているのですが、機動に関する記述はレシプロ戦闘機であっても役に立つことは請け合い。
この本のすごいところは、どのような機動があるかではなく、どのようにしたらその機動ができるかをわかりやすく丁寧に説明してあるところです。スティックやラダーペダルの動かし方、機動中の視野正面がどうなっているかの図説があるため、とても分かりやすい点も高く評価できます。
また、状況に応じてどのような機動をとるべきかについても詳しく書かれており、『バイブル』の名に恥じない内容に仕上がっています。
初心者から上級者まで、誰にでも推薦できる本です。
 
操縦のはなし表紙 タイトル 操縦のはなし トップガンの実像
著者 服部 省吾 著
出版社 技報堂出版
価格 1,800円
この本は、4,200時間の飛行経験を持つ元自衛隊のベテラン戦闘機パイロット(なんと!!)によって書かれたものです。
もちろん、元パイロットが書いた本(個人的にはマーク・ベントンが好みです)はたくさんありますが、操縦法について書いた本は珍しいでしょう。

ジェット戦闘機が中心なのですが、プロペラ機の空戦術についても多くのページを割いており、読み応え充分。
純正インメルマン・ターンと現代的インメルマン・ターンの違い、失敗したバレルロールとちゃんとしたバレルロールの違いなど、きっちり説明しています。
BearCatが特に気に入ったのがスロー・ロール。ちゃんとマスターしないうちに使ってみましたが、ちゃんと決まると攻守が一気に逆転するというとんでもない大技(ホントは小技なんだけど)。

さすが本職のパイロットと思ったのは、ルフトバッフェのエースパイロット、ハンス・マルセイユの操縦方法についての考察です。
マルセイユは自分の操縦方法を他人に教えないことで有名でしたが、彼は他のパイロットの証言から、ハンス・マルセイユがどのような空戦術を用いていたかを推理しています。

この本の出版元は名前が通っていないので、この本を見つけるのはなかなか難しいのですが、書店で注文してでも買う価値はある本です。

 

タイトル 改訂版 図解 飛行機操縦技術
著者 宮本 晃男・昰男 著
出版社 鳳山社
価格 1,800円
フライトシミュレータ本ではなく、一般の航空機、特にセスナ機を想定した操縦教本です。
ですから、格闘戦での機動に関する記述は一切なく、フライトシミュレータのベテランパイロットにお勧めする本ではありません。

しかし、初心者フライトシミュレータ・パイロットで一般的な操縦技術を身につけていない方には一読をお薦めします。
旋回、横転関係の操縦方法が、操縦桿とラダーの使い方、機体の姿勢などの図によってわかりやすく説明されています。
また、操縦時のポイントもうまくまとめられており、これを読みながらフリーフライトをしていると、案外自分の操縦にムダがあるなぁと反省することしきりです。

 

戦闘機表紙 タイトル 戦闘機
− 英独航空決戦 − (上)・(下)
著者 レン・デイトン 著
内藤 一郎 訳
出版社 早川書房
価格 上巻 700円
下巻 700円
有名なバトル・オブ・ブリテンについて書かれた歴史本です。
もちろん、CFSとは直接関係ありませんが、劣勢のRAFがいかにしてルフトバッフェに勝利したか克明に記述されています。上巻では両軍の戦略、兵器の説明を中心に記述しており、下巻では実際の戦闘の記録を克明に記しています。
フライトシミュレータでも役立つ記述が結構ありますので、是非ご一読を。
実は、このHPのネタ本にもなっています。
 
双生の荒鷲表紙 タイトル 双生の荒鷲
著者 ジャック・ヒギンズ 著
黒原 敏行 訳
出版社 角川書店
価格 1,000円
BearCat の大好きな作家、ジャック・ヒギンズの航空冒険小説(そんなジャンルあるのかな?)です。
話は、ジャック・ヒギンズの載った飛行機が海上で遭難するところから始まり、そこで出会った救助艇の船長との会話からストーリーは一気に展開します(なんか『鷲は舞い降りた』に似てるような気もしますが)。

話は第一次世界大戦までさかのぼり、イギリス空軍のエースパイロット、ジャック・ケルソーが敵機に撃墜されるところから始まります。
傷ついた彼は収容された病院でドイツ人看護婦エルザ・フォン・ハルダー男爵令嬢と恋に落ち、やがて彼女と結婚し、ジャックの祖国であるアメリカに渡ります。
二人の間に生まれた双子、マックスとハリーがこの話の主人公。
彼らは父の影響で飛行機の操縦を覚えますが、父の死によって兄弟は運命の選択を迫られます。兄であるマックスはハルダー家の跡取りとしてドイツへ渡り、ハリーは祖父とともにアメリカの地にとどまることに。
やがて、ナチス・ドイツの暗雲が世界を覆う頃、マックスはドイツ空軍のパイロットとして、ハリーは父のいたイギリス空軍のパイロットとして、敵国同士のエースパイロットとして活躍をはじめるのです。

なんか、前半はジェフリー・アーチャーの『ケインとアベル』みたいな展開ですが、後半からジャック・ヒギンズお得意の劇的な展開を見せます。
どんな展開かは内緒ですが、ジャック・ヒギンズのファンではなくてもきっと楽しめることは間違いなし。
そうそう、ハリー・ケルソーの愛機はハリケーン、マックス・フォン・ハルダー(黒い男爵)の愛機はダークな塗装を施したBf109。なかなかしゃれた組み合わせです。
 
ドイツ空軍、全機発進せよ! タイトル ドイツ空軍、全機発進せよ!
著者 ジョン・キレン 著
内藤 一郎 訳
出版社 早川書房
価格 699円
何とも勇ましいタイトルですが、この本の原題は「THE RUFTWAFFE」、すなわち「ドイツ空軍」です。
なんといっても、この本を特徴づけるのは著者がイギリス人という点でしょう。
著者がドイツ人でないがために、ドイツ空軍の興亡を客観的に捉え、その戦術、戦略の特徴や誤りを明確に描き出しています。
序文を寄せた空軍大将は、その最後にこう結んでいます。「右に述べたことのすべては、キレン氏のこの著書に、あますところなく描きつくされている。あえてNATO空軍所属の士官各位に、必読の書としておすすめするゆえんである。」

タイトル通り、第一次世界大戦から第二次世界大戦敗戦までのドイツ空軍の歴史について書かれているのですが、特に第二次世界大戦中のドイツ空軍の悲惨さは目を覆いたくなってしまいます。
有能な将軍や優秀なパイロットがそろっていたにも関わらず、基本的な戦術・用兵の誤り、大局的な戦略が全くないという愚かさ、航空機開発の無計画から、ドイツ空軍は悲惨な結末を迎えます。

Me262 の逸話は端的にこれらを象徴しています。
世界初の実用ジェット戦闘機として開発された Me262 ですが、その開発の途中からヒトラーの気まぐれによって高速爆撃機として開発し直すよう指示が下ります。
Me262 の戦闘機としての抜群の性能に惚れ込み、その導入を押し進めていたアドルフ・ガーラントは、その手から Me262 に関する仕事の一切を取り上げられてしまいます。 ところが、空軍士官の起こしたゲーリングに対する決議書提出事件(ゲーリングを正面から非難した決議書であったらしい)のとばっちりを食って、Me262 戦闘機の実戦部隊に左遷されることになりました。
当時のドイツ空軍では実戦部隊への配属は死と隣り合わせでしたから、ゲーリングは体よく責任を転嫁したつもりだったのでしょうが、当のガーラントは百戦錬磨のパイロットを率いて連合軍爆撃隊の迎撃に向かうのです。
そして、ガーラントは Me262 に搭乗して連合軍爆撃隊の迎撃中に負傷し、その怪我により彼は終戦まで飛行することはできませんでした。

CFS とは対象としている時代が同じだというだけであまり関係ありませんが、こうした本を読むのもたまには良いのではないでしょうか。

 

タイトル 零戦の秘術
著者 加藤 寛一郎 著
出版社 講談社
価格 854円
零戦の秘術とは何か。
それは「左捻り込み」という縦方向の旋回機動です。

この本は航空工学の権威である著者が、伝説の零戦パイロット坂井三郎へのインタビューの中で、この「左捻り込み」という技を明らかにしていくというスタイルをとっています。
航空工学の専門家でありながら実際に航空機を操縦したことのない著者が、坂井氏の詳細にわたる操縦方法の説明から、この技の全貌を明らかにしていくところは、とても読み応えがあります。

もちろん、インタビューの相手があの坂井三郎氏ですから、彼の太平洋戦争中のエピソードが数多くちりばめられ、とても面白く読める本です。
BearCatが気に入ったのは、坂井氏が唯一被弾した時のエピソード。重傷を負いながらもなんとか零戦を飛ばし続け基地まで帰り着くところなどは、痛ましいながらもとても感激しました。
また、グラマン15機にただ一人囲まれたくだりもとても参考になりました。
いったいどうやって切り抜けたのか?
答えを知りたい方は、ぜひこの本を読んで下さい。

 

タイトル 英国の戦い 空軍大戦略
著者 リチャード・コリヤー 著
内藤 一郎 訳
出版社 早川書房
価格 680円
史上初の航空決戦であるバトル・オブ・ブリテンに関する書籍です。
綿密な取材によって成り立っていますが、このコーナーで紹介している「戦闘機」とは異なり、この戦いを、多くの英国空軍パイロット達の苦闘の物語として生き生きと描いています。

故国の降伏によってイギリス空軍に参加しながらも、なかなか実戦に参加できないポーランド航空兵。戦闘経験がほとんどないにも関わらず、大口をたたきながら戦闘に参加するアメリカ義勇兵。
そして、疲弊しながらも戦いを余儀なくされるイギリス空軍パイロット。彼らの視点から描かれるバトル・オブ・ブリテンは、歴史家とは明らかに違う視点からこの航空戦を捉えています。

チャーチルの有名な「かくも少数の...」という演説を鼻で嗤って、「そしてかくも安月給のね」と皮肉った話には思わず笑ってしまいました。

この本は、イギリス人、とりわけイギリス空軍パイロットにとって、この航空戦がなんだったのかを教えてくれます。

 

タイトル グッバイ、ミッキー・マウス (上)・(下)
著者 レン・デイトン 著
後藤 安彦 訳
出版社 早川書房
価格 上巻 680円
下巻 680円
「戦闘機」の著者であり、スパイ小説の名手であるレン・デイトンが描いた航空小説です。
戦闘機の操縦教官からイギリスに派兵されたアメリカ陸軍航空隊に転属したジェーミー・フェアブラザー大尉を軸に、物語は展開していきます。
P51Dが配備されたばかりの航空隊での日常と戦闘。イギリス人のヴィクトリアと恋。仕事が原因で母と離婚た父アレグザンダー・ボーネン大佐との確執と、父の子に対する愛情。そして、ミッキー・マウスの愛称を持つ同僚のエースパイロットのミッキー・モース中尉との友情。
これらの話が複雑に交錯しながら、パイロットの喜びや苦悩、イギリス人との対立が、それぞれの視点から語られていきます。
この本のタイトルとなった「グッパイ、ミッキー・マウス」の意味がわかるくだりは、涙なしには読めません。

物語の中で描かれる戦闘は、レン・デイトンらしく緻密で、きっとこんな風だったんだろうと思わせられずにはいられません。
B17爆撃機の護衛でFw190が横一列で20mm機関砲を掃射しながら突入してくる恐怖感というのは、フライトシミュレータ(特にCFS)のパイロットなら思わずうなってしまうでしょう。

航空小説の中でも出色の作品であることは間違いありません。

 

タイトル 大空のサムライ
著者 坂井 三郎 著
出版社 光人社
価格 952円

いまさら紹介するのがおこがましいくらい有名な零戦パイロットの坂井三郎氏が著した、自伝的な空戦記録です。
彼の幼少の頃の話に始まり、パイロットになって中国、フィリピン、ラバウル、硫黄島を転戦しながらなにを考えいかに戦ったかが、生き生きと描かれています。
開戦当初は非常に優秀であった零式艦上戦闘機も戦争が進むに従ってその性能面での優位性を失い、なおかつ劣性を強いられ、戦局は日を追うごとに悪くなっていきます。そんな中でも最後まであきらめず戦い続けた彼の姿は、確かにサムライ、しかも野武士を彷彿させるところがあります。

BearCat が戦闘機関係の本でどれか一冊選ぶとしたら、間違いなくこの本を選びます。