宮本 輝氏の著作

国内外を舞台にした小説で常にベストセラーとなっています。「泥の河」「優駿」などが映画化されてます。
個人的には下記の「ドナウの旅人」と、日本の家庭にハンガリー人の留学生を迎えたホームドラマ「彗星物語」がお気に入りです。

ドナウの旅人
ドイツ→オーストリア→ハンガリー→チェコスロバキア→ユーゴスラビア→ルーマニア
夫を捨てて出奔し「ドナウ河に沿って旅をしたい」と書かれた母からの手紙を受け取った麻沙子は西ドイツへ飛ぶ。そこで彼女は母が若い男と一緒であることを知り、恋人のドイツ青年と二人を追う。

愉楽の園
タイ(バンコック)
バンコックに旅行に来た恵子は現地の年配の内務次官と恋に落ちる。水の都バンコックで暮らし3年たったが・・。


海辺の扉
ギリシャ(アテネ→クサダシ→ミコノス島)
10年前の事故で最愛の息子を失い、妻とも別れた宇野は5年前からギリシャで日本人観光客相手の通訳の仕事をしている。そして現地の妻エフィーとともに再び日本で暮らそうと、最後の思い出にエーゲ海のクルージングに出る。 


オレンジの壺
フランス(パリ)、エジプト
祖父にはパリで生ませた娘がいた。日記帳を読んだ佐和子はパリに旅立つ。戦争中に地下組織に関係した祖父の謎を追う。「オレンジの壺」とはいったいなんなのか?




 
船戸 与一氏の著作


発表しているすべての作品が海外もの(だと思う)。根無し草の日本人がおおむね主人公で、非合法活動、破壊工作員などの物語が多い。また、各地にすむ先住民達の叛史をストーリーの背景にしていて、通常の旅行や海外を舞台にした小説などでは知り得ない大地の息吹、その国の歴史などにも触れることが出来るバイオレンス・ハードボイルド系です。日常を脱皮したい人にお勧め。個人的には「猛き箱舟」の後半、「黄色い蜃気楼」が好きです。

非合法員
メキシコ→アメリカ(ツーソン→パーカーズヴィル→ユマ→ロサンジェルス)
非合法員である神代はメキシコ反体制派の四人を抹殺する。任務を果たすが、その成功報酬をベトナム人に持ち逃げされる。追跡をする彼を待つものは組織の非情な掟であった。
ベトナム難民の武装蜂起、AIMの反アメリカ国家活動、アメリカの持つ歴史の歪みも取り上げていく。


群狼の島
マダガスカル
マグロ運搬船の二等航海士のオレは日本人を首領に持つ海賊とマダガスカル北部にあるソ連基地の爆破を華僑に依頼される。
社会主義国家マダガスカルを舞台に展開するソ連と中国の世界戦略がストーリーに絡む。


夜のオデッセイア
アメリカ(ニューヨーク→アリゾナ→フェニックス)
八百長ボクサーとそのトレーナーは大型ワゴン「オデッセイア」でアメリカ大陸を放浪する。乗り込む5人を加えてモサド、CIA、マフィアたちによるパーレビ国王の隠し財産をめぐる戦いに巻き込まれる。
作者の開放感が爽快な話題作。


蛮族ども
ジンバブエ
黒人の革命によりローデシアから国名を変えたジンバブエ。資産を列車で不法に国外に持ちだそうと白人に雇われた傭兵と、公安調査部、汎アフリカ・ジンバブエ武装戦線(PAZAF)の三つどもえの戦いが展開される。


血と夢
パキスタン→アフガニスタン
ソ連が薬きょう不要の自動小銃の開発に成功し、アフガニスタンでイスラムゲリラを相手に実戦試用中という。
米国防情報局は発明者を銃ごと拉致すべく非合法工作員をアフガンに送り込む。ソビエトや世界の銃器事情も盛り込まれている。


山猫の夏
ブラジル(ペルナンブコ州)
ブラジルのエクルウ(架空の町)は二家に支配され、両家はことごとく対立反目しあい殺し合いが耐えない。そこへ山猫という日本人が両家の争いに乗じて財産を狙ってかきまわす。
「ロミオとジュリエット」「用心棒」がストーリーの骨子で、語り手の日本人青年が巻き込まれていく成長ストーリー。


神話の果て
ペルー(リマ→チャカラコ渓谷)
ウラン鉱床の確保のためにペルーの山岳ゲリラの首領抹殺を依頼された破壊工作員志戸は、四千メートルを越すアンデスの奥地へ向かう。抑圧されたインディオたちは山岳ゲリラとして白人社会への反抗で革命を狙う。
「センドロ・ルミノソ」「ツパク・アマル」といった実在のゲリラ組織と架空の「カル・リアクタ」でペルーの政治・社会事情を浮き彫りにしている。


猛き箱船
日本→モロッコ→アルジェリア
日本企業の海外進出の非合法面での守護神グリズリー、彼のようになりたいと願う香坂は仲間に加わり、西サハラの砂漠にある鉱山をゲリラから守る戦闘に加わる。
西サハラにおけるポリサリオ解放戦線の反植民地闘争の状況がよくわかる。主人公の成長と復讐を描いて読み手は思わず力が入る。

伝説なき地
コロンビア、ベネズエラ
ベネズエラの名門家が所有する涸れた油田地帯にレアアースと呼ばれる貴重な未来資源が眠っている。そこでマグダレナのマリアを中心とするコロンビア難民の新興宗教と、それに歓迎される南米左翼革命闘士の日本人たちと、当主の連れてきた傭兵達との凄絶な闘争が繰り広げられる。


緑の底の底
ベネズエラ
三百年以上前にベネズエラに漂着したドイツ人が、白いインディオとなって人狩り族として南米密林の奥地に住むという。その説を説いた博士たち文化人類学者の一行と「ぼく」はオリノコ河源流域へと遡る。


メビウスの刻の時
アメリカ(ニューヨーク)、ジブラルタル
叙述トリックの異色作。マフィア、黒人解放組織ブラックパンサー、IRAと様々な血生臭い世界状況の中で、5人の「一人称」で物語は進んでいく。


砂のクロニクル
イラン、イラク
クルド民族の悲願マハマードへの独立国家樹立のためにホメイニ体 制下のイランにカラシニコフAKMを二万
挺密輸しようとする日本人がいた。
クルドの民族的悲劇とイラン革命防衛隊、反体制組織フェダイン・ハルク,グルジア・マフィアらの曲折に満ち
たドラマが展開する山本周五郎賞受賞作品、俗称「スナクロ」

黄色い蜃気楼
南アフリカ共和国→ナミビア
重要機密書類を持ったまま航空機墜落事故から奇跡的に助かった日本人クレイン。数名の生き残りとともに大砂漠からの死の脱出行が始まる。
ストーリー的には分かり易く「船戸与一入門書」と言えるかもしれない。過酷な砂漠の自然と、自衛隊時代に恨みを持つ日本人や、ゲリラ組織のSWAPO、UNITA、ブッシュマン等が主人公の命を狙う。

蟹喰い猿フーガ
アメリカ(フェニックス→フラッグス・スタッフ→デンバー→カンサスシティー→ニューヨーク)
アメリカ大陸をおんぼろリンカーンで疾走する伝説の詐欺師「エル・ドゥロ」と日本人の俺を含むだましのチーム。船戸作品には珍しいキャピキャピな女性「バーバラ」が可愛い。「夜のオデッセイア」再びといった印象のスラプスティック・コンゲーム小説。

炎流れる彼方
アメリカ シアトル→ラスベガス→アイダホ州→カナダ(アルバータ州)
ラッキーと呼ばれる運を使い果たした日本人は、友人ムーニーが強敵キラージョーとボクシングで対戦するのをセコンドとして見届ける。しかしこの格の違いすぎるミスマッチ試合は、ムーニーを合法的に抹殺しようとする罠だった。彼の握る秘密をめぐって暗躍する組織との、アメリカ西北部からカナダまで追いつ追われつの活劇が繰り広げられる。

蝦夷地別件
国後島・択捉島・ロシア
18世紀後半に国後・目梨(北海道東部)で起きたアイヌ人の蜂起を描く作品。ポーランド人のマホウスキはロシアの目を東方に向けさせようと鉄砲300挺をアイヌの蜂起の為に届けようとするが。。。
日本の北海道がロシアに攻め込まれなかったのは、フランス革命のおかげでロシアが南進策をとったから?

かくも短き眠り NEW
ルーマニア
ドイツの法律事務所の調査員として仕事を請け負う日本人は、遺産相続人を捜すためにルーマニアへ向かう。調査を続けるうちに5年前のチャウシェスク体制を倒すきっかけをつくったミッション、その参加した時のボスの影がちらつき始める。

午後の行商人 NEW
メキシコ
メキシコに留学している日本人の青年は、強盗によって盗まれた金品をある初老の男に奪還してもらう。その男に惹かれた青年はその男の行商に付き合う羽目になる。しかし、その男はある復讐を遂げるために、行商をしていた。

流沙の塔 NEW
中国(北京、上海、梅州、成都、康定、ウルムチ、トルファン、コルラ、イーニン、カシュガル)
横浜と中国梅県で美しいロシア女性が殺害される事件が起きた。中国の裏社会で対立する秘密結社同士の抗争、ウイグル民族独立をめぐる内紛、公安当局の暗躍を複雑に絡めていく。

その他(短編集)
銃撃の宴」アメリカ「祖国よ友よ」ヨーロッパ「カルナヴァル戦記」ブラジル
短編集では「カルナヴァル戦記」がお勧め。それぞれ船戸小説の面白さが凝縮されている。その内の一作「ガリンペイロ」は流れついた日本人がブラジル東北部(ノルデステ)で一攫千金を夢見て、宝石堀りに身をやつすストーリー。日本人新婚夫妻誘拐を描いた「アマゾン仙次」も面白い。




 
佐々木 譲氏の著作


デビュー当時は国内冒険小説・青春小説風の作品が多かったが、現在は太平洋戦争の前後を舞台にした作品や歴史を扱ったものも増えている。最初の三作は登場人物等でもつながりがある。新潮ミステリー倶楽部のシリーズで、それぞれ主人公は実在と思わせるふしもあるロマンチックな書き方も・・・。
下記作品の内二つはNHKでドラマ化されている。

ベルリン飛行指令
日本→インド→イラク→ドイツ
昭和15年、ドイツからの要請により新戦闘機ゼロ戦の極秘移送を、日本海軍の二人の札付きパイロットが任務を負う。日本からドイツまでの六千キロの冒険たん。


エトロフ発緊急電
日本→択捉島
日本海軍機動部隊が真珠湾奇襲のために極秘裏に集結した択捉島に、潜入した日系スパイ。はたしてこの情報はルーズベルトの元まで発信されるのか?
真珠湾は日本との開戦のためにスケープゴートにされたという説も有力になっているが、これを読むとさらにその確信が深まる。


ストックホルムの密使
スウェーデン→デンマーク→ドイツ→フランス→スイス→ロシア→中国(満州)→日本
北欧の都で駐在武官が入手した極秘情報−ベルリン崩壊後も滅びへの道をひた走る日本が、世界地図から抹消されてしまう!?駐在武官に依頼された密使がストックホルムから、情報を携えて日本まで地球を半周する苦難の冒険行。

昭南島に蘭ありや
シンガポール
日本軍が英領シンガポールに侵攻・占領し昭南島と改名した日、台湾出身の彼は二つに引き裂かれた。帝国の臣民か、中華の民か。誇るべき祖国を持たぬ青年は銃を手にする。




 
森 詠氏の著作

まだ以下の一冊しか読んでませんが、船戸与一氏に比べれば柔らかい文体です。主人公も「死なない」という感じ。

帝王の遺言状 パサルガタ・メッセージ
フランス→イラン
プロの運び屋の佐伯は古代ペルシャ帝国の遺跡から出土した粘土板を国外に持ち出し、その研究者を亡命させる依頼を受ける。
イスラム革命下のイラン、かつての王制下の秘密警察SAVAKと革命委員会の裏事情を知ることもできる。また、中東の考古学にも興味を抱かせる作品。




 
逢坂 剛氏の著作

こちらもまだ一冊です。この方は警察ものや精神医学者の心理分析サスペンス、そして海外物としてはスペインを舞台にした冒険活劇を作品にしています。

コルドバの女豹(短編集)
スペイン(グラナダ、コルドバ)



高村 薫さんの著作

こちらもまだ一冊です。映画化された「マークスの山」が有名です。きめ細かな状況描写と何事にも豊富な知識で現実味を感じるフィクションを描きます。

リヴィエラを撃て
アイルランド→イギリス→日本→イギリス→日本
元IRAのジャックは父の敵「リヴィエラ」を追う。テロ組織IRA、MI 5、MI 6、CIA等の諜報合戦と2重スパイ。アイルランドへの亡命中国人はどんな重要書類を持ち出したのか?ジャックの友人ピアニスト(スパイ)は最後にピアノ演奏会を開く。うーん説明がしっちゃかめっちゃか。主人公は3人なのかなぁ?
最後に大どんでん返しがあります。
IRAのテロ活動を描く場面で、爆弾の作り方や銃器の扱いが女性作家と思えない描写です。



鈴木光司さんの著作

映画にもなった「リング」「らせん」はホラーと言うよりも魂を揺さぶられる恐怖を感じさせてくれました。「リング」は呪われたビデオを見た者が、あるおまじないを実行しないと1週間後の同じ時間に命を奪われる、そしてその謎解きを中心に展開するあきらかなホラー小説です。単行本になった当初はそれほど売れませんでしたが、口コミで広がっていきました。
「らせん」は「リング」の続編ですが、普通の続編とは一線を画し、日本のバイオホラー小説の領域を開拓した作品です。
しかしながら、それ以外は不思議な因縁をテーマにしたロマンチックな作品も多い。

ループ
アメリカ モハーベ砂漠→ロスアラモス
「らせん」同様、これが続編・・・と思わせる展開が前半続きます。前2作とは違い若い力みなぎる主人公が登場します。彼は前2作同様悪魔に魂を売るでしょうか?そして意外な世界観・・・それは読んでのお楽しみ。

シーズ・ザ・デイ NEW
日本→パラオ→フィジー
17年前に太平洋横断の途中フィジー沖でヨットの沈没事故を起こした主人公。不思議な因縁で再び太平洋横断のクルージングに出る。