ACT11

メイキング秘話


このコーナーの参考資料はソニー・マガジンズ発行の「タイタニック ジェームズ・キャメロンの世界」ポーラ・バリージ著、鈴木玲子訳、2,000円+税です。さらに掘り下げて知識を得たい方は是非、同本のご一読をお勧めします。
ちなみに英題名は「TITANIC AND MAKING OF JAMES CAMERON」=「タイタニックとジェームズ・キャメロンの作り方」です(笑)

----キャスティング---

○ローズ・デヴィット・ブケータ as ケイト・ウィンスレット

監督はローズ役には「元気が良くて、賢くて、エレガントなタイプ」を求めていました。ケイト・ウィンスレットに決まるまでは、グウィネス・パルトロウ、クレア・デーンズ(ロミオ&ジュリエット)、フランス生まれのガブリエル・アンフォーなど人気と注目度の高い若手女優がオーディションを受けるが、評価はされつつも姿を消していきました。
この役を切望しているケイト・ウィンスレットは、セリフをに覚えオーディションを完璧に演じてみせ監督をうならせました。
こうしてヒロインはケイトに決定し、ギャラは100万ドルを切るくらい。彼女は1本のバラにカードを添えました。「ありがとう、あなたのローズより」と。。。

○ジャック・ドーソン as レオナルド・ディカプリオ
彼は作品そのものには魅力を感じていたが、ジャックというキャラクターに”軽さ”を覚えます。レオ自身は超大作よりも、人間にスポットを当てた作品を好んでいたため、気まぐれでのオーディションだったら断るつもりでいた。キャメロン監督自身はレオしかいないと踏んでいたものの、レオ自身は脚本の書き直し、キャラクターの設定変更を求めていた。そして、あきらめかけたときレオは態度を軟化させ、少しだけ別のカラーを付け加える事で引き受けることに決定した。この監督に条件をつけるなどは他の役者では到底度胸が無かっただろうが、これもレオの自信の現れでもあったのでしょう。
ギャラは250万ドルなり。

○トム・クルーズだったかも
ニューヨーク在住の若手俳優ビリー・クラダップ・・・映画俳優ではなく本物の役者になりたくて彼から断ってきた。
20世紀フォックスはブラッド・ピット、トム・クルーズ、クリス・オドネル(バットマンのロビン役)、マシュー・マコノヒー(評決のとき)を希望していた。確かに人気と才能を考えればキャメロン監督は関心も持ったが、ジャックのイメージの若さにはほど遠かったようです。
マシュー・マコノヒーはキャル役をどうかと持ちかけられましたが、それを断り「アミスタッド」での弁護士役を選びます。

○ブロック・ラベット as ビル・パクストン
キャスティング・ディレクターのマリ・フィンがショーン・コネリー、ジーン・ハックマンといった大御所の役者をあたっていたが、最終的に監督が直接ビル・パクストンに声をかける結果となる。監督はどんな小さな役でもほとんど全作品に彼を登場させています。

○ルイス・ボーディン as ルイス・アバーナシー
キャメロン自身のダイビングを通じた友人で、監督が彼のために特別に作った役だと言います。

○老ローズ as グロリア・スチュアート
顔を知られていない方がミステリアスさを醸し出すとして、1939年に女優を引退した彼女を選ぶ。この時86歳になっていたが、さらに3時間のメーキャップをして100歳に見せるようにした。

○モーリー・ブラウン as キャシー・ベイツ
タイタニックの脇役には無名並のギャラ(俳優をバカにしないギリギリのライン)を基準に考えていました。その中でもモーリー・ブラウン役のキャシー・ベイツだけは贅沢に行くことに決めました。彼女はアカデミー賞女優であり、実物にそっくりだからと言う理由でした。高額を要求するベイツ側でしたが50万ドルに下げて貰い、フォックスの払えない15万ドル分を監督が肩代わりする事になりました。
キャシー・ベイツに決まる前はリンダ・ハミルトン、カントリーシンガーのレバ・マッケンタイアも候補にのぼりました。

---カナダ ハリファックス---

○深海ダイブ
1995年9月に実際に深海に眠るタイタニックに向けてダイブしたのは、クランクインの1年前でした。
3700mまで潜れる潜水艇は世界に5隻しか無く、そのうちの2隻、ミール号の母船であるケルディッシュ号をチャーターするためにロシアのシルショフ海洋学研究所を訪ねます。
しかしロシアの国有研究所であるので、商業目的での使用は簡単にはいきませんでした。研究所の最高責任者アナトリー・サガレビッチ博士は現実主義者で、少しでも調査・研究目的が含まれるなら、自分たちの持つ最先端の技術をハリウッド映画で広めることが出来ると許可します。
そして、キャメロン監督他は倒れるほどのウオッカ責めにあいます。

○秘密厳守
カナダのハリファックスから出港するケルディッシュ号の目的は外部に伏せられていました。アメリカ人とロシア人が共謀して何か企んでいると考えられて、町に出ても質問責めです。クルーは「タイタニック」という言葉を出さずにいかにかわすかがゲームとなり、「温泉探し」「ウニの生態研究」というユニークな答えもありました。

○危機また危機
深海に眠るタイタニックに向けて12回のダイブが行われました。危機また危機の連続だったそうですが、特に10回目のダイブで、バッテリーが上がりかけて、バラストからの水の排出がままならず、弱々しいバッテリーで排出して数m浮上するとまた沈むと言うことが繰り返され、1時間近く海底に釘付けになり、この時ばかりはみな大変なことになったと思ったそうです。
このとき浮上できなかったら、映画「タイタニック」はもちろん、偉大な監督を世界は失うところだったんですね。

○食中毒?事件
カナダのハリファックスで撮影中にケータリング・サービス(仕出し)を頼んでいましたが、とにかく毎日ひどいものばかり出していたそうです。そしてハリファックスでの最終日に、監督を含む85人がカフェテリアの中で苦痛にうめいていました。中には幻覚を見たと訴えるものも出るくらいで、都合56人が町の救急病院に運ばれ隔離されました。結局、この事件は食中毒ではなくクラムチャウダーの中にPCP(幻覚剤)が混入されていたんです。警察も調べましたが結論は解らず。どうやらハリファックスでの撮影最後にひと騒動を起こしたい愉快犯の仕業だったようです。

---メキシコ・ロサリトビーチ バハ---

○製作予算
1994年当時キャメロン監督は「タイタニック」の予算を8000万ドルぐらいで見込んでいました。
1996年4月、脚本を2回書き直した時点での予算分析では1億2500万ドルに膨れ上がり、ニューズ・コーポレーション社長のピーター・チャーニンから、1億1000万ドル以下に抑えるように申し渡されます。結果的には2億ドルがかかったわけですが、この数字もロサリトの新スタジオ建築費用は含まれていないんです。

○撮影スタジオの建設
巨大なオープンセットを作ったのはメキシコ西海岸のバハ ロサリト・ビーチ。その理由はロサンゼルスに近いためフリーウエイで行けるという手軽さと、世界一の人材と機材が手に入る。逆に不動産も労働力も比較的安価で得られる点でした。
ここに決定するまでは、建設工事を抑えるためにロス以外に世界中を探し求めました。飛行船の格納庫、サウスカロライナの潜水艦工場、地域ではオーストラリア、チェコスロバキア、スウェーデン、ポーランド、カリブ諸島などが候補に挙がってたんです。

○全長は85%のタイタニック
映画撮影用のタイタニック号は実は実物大に造られたわけではない。数字上では実物のタイタニックは268mで、映画のために作られたタイタニックは226mと42m小さく、実際の85%の大きさになるが、船尾デッキを6m削ったり部分部分を切り取っている。実際は100%のスケールだが、全長が短くなった分バランスも考慮され、煙突の高さを5.5m短くし、ダビット、救命ボートなどを10%縮小して作ってある。ドアの位置とボートの位置とかは実物通りであるので、まるでキャメロン監督のマジックのように、遺伝子組み替えのように施してある。

○絨毯・ダビットは今も残る当時のメーカーに発注
絨毯は以前タイタニック号に納めたメーカーからパターンが発見されて、復元させた。
ダビット(救命ボートの釣り器具)も当時から残るメーカーに発注。

○溶け出すシャンデリア
シャンデリアにかかる予算を抑えようと、受けの部分にはプラスチックが使われたが、撮影に使うワット数の高い電球が発する熱で溶け出す有様。結局ガラスで作り直すことになった。

○ケイトの病気、レオの遅刻癖
俳優の病気が理由で撮影が出来なかったということの経験がないキャメロン監督だったが、ケイトの場合は大目に見ていた。週に1回は彼女の調子が悪く予定の撮影が出来なかった。
レオもTVゲームに夢中になるため、いつもセットには10分は遅れてやってきていた。

○出港シーン
船は北を向けさせて右舷にドックを着けさせるようにしたが、実際のサウザンプトンからの出港にシーンを合わせるため、クルマ・帽子・ターミナルビルなど文字入りの物全てを逆に書き、服などもボタンの都合で左右逆に作られた。
このシーンには1000人のエキストラ、19頭の馬、10台の馬車、クレーンに吊る下げられたルノーなどが緻密な計算に従って「アクション」の合図で動き始める。

○撮影コスト
「ダイハード」のようなスケールの大きなアクション大作でさえ、1日あたり10万〜15万ドルであるが、タイタニックの場合は1日あたり平均25万ドルかかっている。なかでももっとも大がかりな、天井ドームが破れるシーンとサウザンプトン港での1000人のエキストラシーンでは1日50万ドルがかかっている。

○夕日は絵だった
ジャックとローズの I’m flyingシーン。実はあの時の夕日は絵だったそうです。撮影監督のラッセル・カーペンターは安っぽくなると反対しましたが、キャメロン監督はお構いなしに出たとこ勝負に出ます。「駄目なら使わなければいい」。。。と。翌日VTRを確認したカーペンターは意外なほど良く撮れていることに驚きを覚えました。それにしてもあのシーンが無いなんて考えられないじゃないですか? 結果オーライですが、監督も思い切りがいいですね。
それと、「曇り空だったのが撮影時だけ綺麗な夕日になった」というコメントを監督は残していますが、どちらが本当なのでしょうか?

○3度と6度
226mのタイタニックを3度と6度に傾けて撮影しようという予定だった。しかし、3度から6度に傾けるために1ヶ月以上の時間が必要だという結論に達すると、3度での撮影をあきらめ、6度で撮影して視覚効果で3度の状態を作り出すことを決意した。

○壁のような水
ロシア人移民と彼の子供がドアを破って襲い来る水に押し流されるシーンがあります。20世紀FOXは脚本段階からしつこく削ることを要求してきます。
まずは撮影で15万リットルの水がこのシーンに使われました。しかし、来た水は90cm位。キャメロン監督は壁のような水を要求しました。結局放水タンクを高い位置に置き、45万リットルの水で勢いを付けるよう対応しました。

○A号ボートのシーン
タイタニックを沈ませるために、ライザーという大がかりな油圧システムの昇降機を持ちていた。A号ボートでのシーンを撮影するテイクでは、2回もボートを沈めさせてしまい。3回目もひっくり返ったのを立て直すことができたものの、誰も乗り込むことが出来なかった。もちろん、この件で監督は怒りスタント・コーディネーターのサイモン・クレーンはクビを言い渡され、60人のスタントマンがあとに従おうとした。(両者は妥協して平和的に解決する)

○数百分の1のミス
タイタニックの上部甲板が沈み始め、数百人が後尾甲板に向かって逃げ出すシーンで、数百人のうちたった一人が逆方向へ走ってしまった。もちろんこのテイクはやりなおしとなり、数万ドルがかかるはめになり監督のカミナリが落ちたことは言うまでもない。

○プープ90
タイタニック号沈没のクライマックスシーン、”直立する船尾”は「プープ90」と呼ばれた。100人のスタントマンと150人のエキストラで撮影が行われたが、さらにVFXでその数は増やされ、ぶつかり、転げ落ちまくるシーンが作られた。
撮影の前に、模型を使い兵隊の人形をバラバラ落としては撮影のための研究をした。黒いキャプスタン(絞盤:錨を巻き上げる装置)や手すり、ベンチなどウレタンフォームで作られクッションになっているので、落下する際にぶつかっても怪我をしないようにしてある。
「プープ90」とはいえ90度の角度では役者がストンと落ちてしまうため、たいがいのスタントは30度で撮影されている。
また、いかに安全策を講じても、250名からのキャストが10回もこのシーンの撮影に加わると、怪我人が出ないほうがむしろ不思議。結局、大怪我ではないが3人が骨折をしてしまう。このため命綱を付けての撮影に切り替えた。

○ローズとジャックがつかまる板きれ
最初に用意された板きれは到底二人がしがみついて浮いていられるようなものではなかった。監督はハリファックスのタイタニック博物館の中にあった本物の板きれを元に、オーク材の板を作り直した。

○白い息はデジタル映像
当然、氷点下の気温ならば息は白くなければならない。しかし水温・気温を下げると俳優達が長い撮影にもたなくなってしまう。そこで考えられたのが、白い息の映像をプラクティカル・イメージとしてデジタル合成する方法がとられた。

○最後の撮影シーン
スミス船長がブリッジで死ぬシーンが163日目・・・撮影の撮影シーンとなる。しかし、バーナード・ヒルではなくこれはスタントマンが演じる。対するカメラマンはキャメロンが、ウエットスーツとスキューバ、ヘルメットを装備して一人カメラを回す。
キャメロンはいやというほど強烈に壁に叩きつけられた。

○黙祷
ようやく全ての撮影が完了すると、ジェームズ・キャメロンの発案で、事故で亡くなった人や人生を狂わされた人のために全員で黙とうを捧げた。
しかし! 黙祷を終えたキャメロンをケイトはしっかりと抱きしめた。彼女が身体を離すとプロデューサーのジョン・ランドーが「今だ!」とかけ声をかけ、レオは氷水の入ったバケツをキャメロンの頭から浴びせた。

---音楽---

○ジョン・ウイリアムズだったかも知れない
96年9月にキャメロン監督はジョン・ウイリアムズに音楽の依頼をしていた。実際には彼はスピルバーグの仕事しかしておらず、その秋も「ロストワールド」で手一杯だったため諦めている。

○エンヤだったかも知れない
キャメロンは音楽を聴きながら脚本を書くのが好きで、よくケルト民族風のニューミュージックを歌うエンヤが好みだった。彼女の透明感ある歌声が好きで、スコアを依頼しましたが、エンヤ自体映画音楽を手がけた経験がなかったことと、30分のアルバムに2年をかけるペースなので、彼女自身が断ってきました。

○ジェームズ・ホーナー
ジェームズ・ホーナーはすでに「エイリアン2」で組んでいたことがあるのだが、その時はわずか2週間でスコアを仕上げねばならなかったので、仲良く仕事が出来たわけではなかった。
それ以降、進んでキャメロンと仕事をしたいと考えていたわけではなかったが、「タイタニック」の脚本を読んで、彼は心を動かされてしまった。
「タイタニック」の音楽を書き上げるのに、エンヤに似た音楽がホーナーの頭の中を駆けめぐった。そして、ケルト音楽の楽器を使うこと自体も、アイルランドに関わりがあるタイタニックにとってふさわしいアイデアでした。

○テーマ曲(ここでは曲のみ)
キャメロンが虜になった「ドクトル・ジバゴ」に「ララのテーマ」があったように、ラブストーリーにふさわしいテーマ曲を求めていた。キャメロンから依頼されて3週間後、彼は監督を自宅に招き「タイタニックのテーマ」をピアノで弾いて聞かせた。キャメロンの目に光る涙でテーマ曲は決まりました。
また同時にバグパイプの音楽も聴かせたが、民族色が強いとのことで、これは”本当のパーティー”で使われることになった。そう、この曲はゲーリック・ストームの作曲ではなく、ホーナーの作曲だったんですね。

○主題歌
キャメロンは主題歌を入れるかどうか悩んでいました。一方のホーナーは8分ものエンディングロールでは絶対に必要なこと、結末の感動のキープに必要だと確信していました。
圧倒的なボーカルを求めて、ホーナーはセリーヌ・デュオンにキャメロンに隠れて歌って貰うことにしました。ホーナーは密かにデモテープをつくり監督に聞かせました。「ボディーガード」に匹敵するくらいの素晴らしさを認めます。しかし作品のラストに歌を流すことにはまだ慎重でした。結果的にはこの曲がラストに流れることによって、歌で映画の感動思い出し、再び観客が劇場に足を運ぶことにもなったのです。

---公開に向けて---

○20世紀FOX側のカット要求シーン
・移民の親子が鉄砲水に流されるシーン
・ボイラーやエンジンルームシーンが長すぎる
・特に20世紀フォックスからジャック&ローズの唾はきシーンはしつこくカットを要求された。プロデューサーたちも不快感を覚え、監督に削ることを進言した。演じたふたりも正直いっていい気持ちはしないともらした。しかし、試写会で観客の受けが大変良かった。映画会社の重役が何と言おうと、観客の反応が第一なのである。

○マスコミの攻撃
予算オーバー、公開日未定、セットの安全問題、ケイトの怪我、スタッフの過酷な労働条件などなど、誇張や歪曲されて取り上げられた。彼の作った映画の出来など興味はなかったようだ。

○極秘試写会
'97年7月14日極秘試写会はミネアポリスで決行された。見ず知らずの観客を500人招き、あらかじめ「大いなる遺産」を上映すると告げ、関係者以外の反応を見ることが目的だった。この仮編集版は3時間22分だったが、大いに賞賛を得ることが出来た。
観客にはアンケートを依頼したが、ディナーシーンの会話だけでも2億ドルの価値を付けた女性客がいた。

○インターネットのスパイ
ミネアポリスの試写会を嗅ぎつけた、映画を評価するホームページの主催者テキサス州在住のハリー・ノウルズは、ミネアポリスと隣接するセントポールの全ての映画館に、インターネットから協力を得た250人をスパイとして送り込む。結果的に「タイタニック秘密試写会」には25人が潜り込むことが出来た。そしてもちろん、そのほとんどが熱烈な賛辞を贈り、ネットには草の根的な評判が広まって行くことになる。

○キャメロンの結婚式
タイタニックの公開には暗雲(赤字の見込みetc.)がたれ込めていたわけだが、この秘密試写会での結果が予想以上の物で、キャメロン監督を希望で満たした。
リンダ・ハミルトンとは7年の交際を経てようやく結婚式をおこなう事を決意した。(ハミルトンは2度目、キャメロンは4度目の結婚。二人の間に当時4歳の女児ジョセフィーンと、ハミルトンの連れ子当時7歳のダルトンがいる)ハミルトンのマリブにある自宅の庭で、家族や友人40人を呼び式を行った。(残念ながら'98年末に離婚した)

○上映時間
監督は特に映画の長さを気にしていたようで、アンケートにも盛り込んでいる。
'97年7月14日のミネアポリスでの試写では、最初の仮編集3時間22分には20人中18人が長いと感じた。その後、ミール号がタイタニック号を探索するシーンを中心に6分を削った。
8月12日、オレゴン州のポートランドでのテスト試写会では、キャルの執事ラブジョイがジャックとローズ及びダイアモンドを追いかけるシーンが、観客の受けが悪く、削ることを決意した。ただし、このシーンの撮影にはのべ1週間、金額では100万ドルがかけられたシーンだった。さらに沈没シーンなどからもいくつか削り、さらに1分半短くした。
次の8月17日、カリフォルニア州のアナハイムでの試写でのアンケート結果では20人中2人だけが長いと感じるところまで漕ぎ着けた。
確かに「タイタニック」を見終わったあと、私たちは「もっと長く見ていたい」と思うでしょう。しかし、切れ目のない画像の連続を、不快感を覚えない、疑問を感じない映画として、このカットがなにより高レベルの作品にするための産みの苦しみだったんですね。

○ポスター制作
米国内向けのポスターはパラマウントが作成。縦長にリベットも鮮やかな船体を切り取り、「運命と衝突する」というドラマチックなキャッチコピーが入れられた。これではアクション映画用のポスターである。結果的にはラブストーリーを強調し、上を向いた船の舳先と恋人達を組み合わせ「何もふたりを引き裂くことはできない」に決まった。

○予告編
予告編はハードアクションタイプとソフトタイプを用意したが、ソフトタイプで行くことに決めた。
全米映画協会の取り決めた予告編は2.5分。しかし、パラマウントは全劇場主から承諾を得て、5分の予告編を上映した。そして、上映された予告編は大きな話題となった。

○11月1日東京国際映画祭
2大スタジオ共同製作のこの作品は全米をパラマウントが興行し、米国以外を20世紀フォックスが受け持つ。そして、フォックスは、12月19日の全米公開を前に東京国際映画祭でプレミア上映することが決めた。上映会場は渋谷のBun-kamuraオーチャード・ホール、座席数2000。ジョン・ランドーが連れてきたドルビーの音響技師と映写技師を連れてきて、スピーカーのバッフル(振動板)を取り替え、プロジェクターの電球の明度を上げさせた。(インディペンデンス・デイもここでデビューした)

○女性ファンの暴動?
ディカプリオの入場を見ようと、オーチャードホールの入り口を取り囲んだ。裏口にクルマで乗りつけるディカプリオに対して、餌食になったのはキャメロンとリンダ・ハミルトン。二人は大群衆に押しつぶされそうになりながら劇場に入っていった。

○キャメロンの短いスピーチ
ディカプリオ目当ての客が多い中、自分の挨拶を聞きたい人はいないだろうとふんだが、端的に自分の思いを語った。会場の人数とタイタニック号に乗船していた人の数がほぼ同じであり、もしタイタニックに乗っていたなら、映画が終わるときには3分の2の方が亡くなることになると。。。そして犠牲者にこの映画を捧げると言葉を結びました。

○評論家の批評
東京国際映画祭の直後の評論家の意見を紹介します。むっとくる内容も多々ありますが、ここは素直に耳を傾けてみましょう。
11月2日、AP共同
「史上最高の製作費がかけられた大作映画タイタニックの処女航海が行われたが、悲惨な運命を辿った本物とは違い、前途洋々の船出となった」
11月2日、AP共同による、あるマスコミ関係の批評家
「監督は後半の船の沈んでいく部分で、作品の評価と人気を高める役割を果たすだろうが、前半の陳腐なラブストーリーの展開が悪いためヒットしても限界はすぐ来てしまうだろう。監督はロマンスというジャンルが苦手なようだ」
ロイター
「歴史に詳しい観客なら、あの事故がラブストーリーの単なる背景として使われたことに、不快を感じるかも知れない。」
「ウィンスレットは1912年という時代の女性としては珍しい、中指を立てた卑わいなジェスチャーをした。」
11月3日、業界紙の映画批評
「パラマウントはこれから数ヶ月間は、白い山のロゴを氷山に変えるべきだ」
11月3日、ハリウッド・レポーター デュアン・パージ
「タイタニックはいわゆる大作映画では珍しく、そのストーリーにおいて個人的かつ哲学的な深い思索を喚起する映画」
11月3日、「バラエティー誌」
「現代のテクノロジーがドラマチックなストーリーにどのように貢献できるかを、目を見張るスケールで観客を圧倒させることが出来るだろう。」「ラブストーリーは陳腐だが感動的」「あの時代の設定には不適当な、下品で通俗的な表現が随所にみられるが、アメリカの若い世代には感性に訴えることが出来るだろう」

○レオナルド・ディカプリオ
趣味としては「スカイダイビング」とか「バンジージャンプ」とかがある。環境問題・人口問題にも個人的に積極的に取り組みたいと言った側面も(ここに来てる人はもっと詳しいよね)
ケイト曰く「私の目からはいつもおならばかりしている下品のレオ」と人間的な一面を披露。
クレア・ディーンズ曰く「本当にあのまま(下品)の人なのか、もっと複雑な人なのか解らなかった」
わ〜っ、レオファンの方ご免なさい m(_ _)m ペコペコ