ACT10

幻のシーン
ボツ台本・カットシーンより

注意!! 1996年5月にジェームズ・キャメロン監督が書いたシナリオです。映画のイメージを塗り替えたくないと思う方は、このact5は読まない方がいいと思います。いつもながらに封切り用以上に長いシナリオ。撮影したシーンをつなげれば5時間にもなるという。
これらのカットは決して20世紀フォックスやパラマウント、ユニバーサルから難癖つけられておこなった物ではありません。監督は秘密試写会をおこない、アンケートで映画の長さを意識して、バッサリとシーンを切り捨てました。
「エイリアン2」や「アビス」の様に1999年中に封切られるという未収録部分の追加された編集版の公開を期待したいですね。
最初の仮編集版:3時間22分→封切り版:3時間7分

●潜水艇ミール号のダイブシーン
試写会での観客へのアンケートから、タイタニック号の中をミールが探索するシーンが長すぎると、その辺りを中心に6分削った。

●手鏡に映る顔の変化
老ローズがケルディッシュ号に乗り込んだ後、海底から引き上げられた自分の荷物を見せられます。自分で手に取った手鏡の中に写る老ローズが17歳のローズに替わります。

●荒れるローズ
上映されたものはいきなり甲板を走って船尾に向かうローズでした。実際は自室で手鏡を投げて罅を入れたりと荒れるローズが描かれています。そのシーンをカットしたのは、ベンチで横たわるジャックと同様、”おや?どうしたんだろう”という視点に立ってのものです。

●ジャックの出自に関して
出身はウイスコンシン州Chippewa Falls(チッペワ・フォールズ)と言う町。アイスフィッシングをしたのはLake Wissota(ウィソータ湖)。彼が15歳の時に両親を火事でなくし、それ以来「根無し草」な生き方をしている。父は遂に海を見ないまま死んでいった。そんな経験が彼に自由な生き方をさせている。その後は漁師の手伝い、サンタモニカで1枚10セントの絵を売って暮らしていた。

●カットされた3等客集会所シーン
3等客の集会場で少女コーラ・カートメルに甲板で描いた絵を見せる心温まるシーンや、ファブリッツオと彼女との馴れ初めシーンもあったようです。

●フォアグラ
キャルは夕食の席でジャックに向かって、フォアグラの説明をした。嫌みったらしくね。

●流れ星きらり
”本当のパーティー”のあとで二人はデッキに出る。見上げる星空にローズが長い流れ星を見つける。ジャックは「親父に流れ星は天国に行く誰かの魂だと聞かされた」と答える。そしてプロミスの場面で、ジャックが天に召されるときに流れ星が天を横切る。あの星空は本当にきれいでした。
この場面が有れば、より感動したことでしょうか?それともありきたりな表現だったでしょうか?
物語の流れを途切れさせないようにと最後の最後でカットされました。

●ジャックとローズのボイラー室での2度目のキスシーン
ルノーでの濃密シーンに置き換わりました。

●タイタニックを見捨てたカリフォルニアン号のエバンスの通信シーン

●モーリー・ブラウンと氷
衝突後にラウンジにいたモーリー・ブラウンことマーガレット・ブラウン。ブランデーの氷を所望するモーリーの後方の窓に衝突した氷山が通過していくが、洒落にすべきシーンではないとカット。

●がら空きの救命ボートに戻れとホイッスルを吹く船長
操舵手ロバート・ヒチンズが指揮を執る6号ボートははるかに定員割れをしている。本船に戻るようにヒチンズを説得しようとするモーリー、そしてタイタニック号の甲板上で大きなメガホンで戻るように呼びかける船長とワイルド航海士長。しかし自分の命惜しさにヒチンズは船から離れるように命令する。船長は「愚か者めらが」と吐き捨てる。

●救難ロケットを打ち上げるボックスホールの顔が判別できる

●ファブリッツオとヘルガの抱擁シーン
ヘルガも一緒に避難していた。だが、ローズとジャックのラブストーリーに焦点を絞ろうと、もうひとつのラブストーリーはカットされる。

●ローズがラブジョイに殺されかかる!?
沈没していく室内で逃げ回るローズとジャック。ローズが一人の場面で、見つけたラブジョイは「こんな所にいたのか」とローズに銃を向ける。そこへピアノの陰から間一髪ジャックが救う。
完成した映画ではピストルの弾を撃ち尽くしたキャルが、ラブジョイに向かって「ダイアモンドを入れたコートを彼女に羽織らせた」と説明する。きっと、このあとキャルがラブジョイに対してローズ自身を探すというよりもダイアモンドを奪還するために追跡を命じたのでは無いでしょうか?
このシーンには100万ドルがかけられましたが、アメリカでのテスト試写会で、観客の受けが良くなかったから削られました。

●友人ファブリツィオの死に方の相違
映画では倒れてきた煙突の下敷きになるのが最期。以前の台本では沈没直後まで生きていて、キャル・ホックリーの乗る救命ボートに乗ろうとするが、彼の抵抗にあいオールで叩かれて額を割る。「お前には...わからないんだ。僕は...アメリカに行かなきゃならないんだ」こう言い残して無念にも絶命する。ここまでのシーンでキャルの残酷さを説明済みなのでカットされ、ファブリツィオは替わりに煙突の下敷きになって死ぬシーンが追加で撮影される。

●ジャックとローズとのプロミスの前のシーンでの相違
冷たい海に投げ出され、ようやく一人しか乗れない彫刻の施された壁にローズが横たわり、ジャックが半分水面から身を乗り出す。二人の重量には耐えられない。そこへ泳ぎ着くもう一人の漂流者。「自分が乗っても大丈夫かどうか試させてくれ」と懇願するが、ジャックは「これ以上近寄ったら、もっと早く死ぬぞ」と警告する。この場面、カットされて良かったかも。あまりにも冷たいセリフですからね。でも、タイタニックが沈んだ直後に、ローズの頭を押さえてもがいていた男にパンチを入れるシーンは残っている。これじゃあ、この人明らかにもう保たないよね。いくらローズを助けるためとはいえエゴを感じました。

●カルパチア号上でローズとキャルは会っている。
映画では三等船客として顔をかくし、気づかれないようにキャルをやりすごしています。この時点の脚本では二人は再会しています。「君の母も心配している」とキャル。そんな彼を制して、ローズは取引をする。「母には私は死んだことにして、そして貴方は私を二度と捜さないで。そのかわり、あなたの昨夜の行為を公にしないようにしましょう。そうすれば築いてきた信用も失わないでしょう。」そう言われたキャルはきびすを返して去っていきます。
カルパチア号がニューヨーク港54埠頭に到着し、ローズが人混みに紛れて姿を消すところまで描かれています。それからのローズは少なくとも、カルバートさんに合うまで生活に苦しむこともありましたが、ダイアモンドを売ることはキャルに助けを得ることになるので我慢しました。

●碧洋のハート
映画ではローズが夜こっそり海に沈めるのに対して、台本ではトレジャーハンターのブロック・ラベット、ボーディンそして孫娘リジーの目の前で海に投げ込まれます。ラベットには一旦は掌に置かせてもらえますが、ボーディンの「That really sucks!」(なんてことしやがる)という汚い言葉と共にあえなく海の底へ沈んでいきます。
なぜ、老ローズ単独のシーンになったかというと、キャメロン監督はジャックとローズの展開に夢中になりすぎて、ラベットのことを忘れていたため、展開的に変更せざるを得なくなったとか?
ローズはラベットに向かって「人生こそ一番大切な宝物」と説得します。ラベットはあきらめリージーに「踊りませんか?」と聞き、リジーが微笑み返します。

●現代のおごりを警鐘
おなじく、ローズがロベットに向かって諭すセリフ。
「あそこにもまた別の氷山があるわ、ロベットさん。それがなんなのかは私にはわからない。でも、私たちを氷山に向かわせるような力についてなら、確かに私は知っているわ」
これは現代の我々に対する警告です。明らかに破滅へと向かっているにも関わらず、人類全体がおごり高ぶり軌道を変えようともしません。現代こそが「タイタニック」だと訴えたいのです。

フラッシュ99/2/2号掲載のカットシーン
ストーリーの展開上、上映時間の関係でカットされたシーンが公開されていました。
○本当のパーティーのあと、ジャック&ローズの甲板での流れ星を見上げるシーン
物語の流れを途切れさせないようにと最後の最後でカット。
○ジャックとローズのボイラー室での2度目のキスシーン
ルノーでの濃密シーンに置き換わりました。
○ファブリッツオとヘルガの抱擁シーン
ヘルガも一緒に避難していた。だが、ローズとジャックに焦点を絞ろうとカットされる。
○ラブジョイ、ダイヤ奪還の追跡
沈みゆくタイタニックの船内を逃げるジャックとローズを、ラブジョイが銃を持ちながら追跡をする。ピアノの陰に隠れるローズを見つけたラブジョイは「こんな所にいたのか」とローズに銃を向ける。そこへ背後からジャックが飛びかかりローズを守る。このシーンは100万ドルがかけられたが、アメリカでの試写会でアンケートをとった結果、不評なシーンとしてあっさりとカットされる。
○ファブリッツオを殺したキャル
沈みかけたボートに乗るキャルは、これ以上人を乗せまいとして、ボートの縁にしがみつくファブリッツオをオールで叩き落とす。ここまでのシーンでキャルの残酷さを説明済みなのでカットする。
○大勢の前でダイヤモンドを海に返す老ローズ
ラベットの制止を振り切り、ダイヤを海に投げ入れる老ローズ。キャメロン監督はジャックとローズの展開に夢中になりすぎて、ラベットのことを忘れていたため、展開的に変更せざるを得なくなったとか?


●映画「タイタニック」オリジナル登場人物のモデル

出典 シナリオ写真集より
○ブロック・ラベット = メル・フィッシャー&ジェームズ・キャメロン
15年以上の歳月をかけて、数トンもの金塊を積んだまま沈んだスペインのガレオン船「アトーチャ号」を探しているトレジャー・ハンター。スポンサーを捕まえては資金を捻出させ使い果たしを繰り返す。彼の息子は海底の泥を吸引する機械に巻き込まれて命を落としてしまう。
ただし、話し方や人の扱い方などの個性的な面はラベット役のビル・パクストンがジェームズ・キャメロン監督をモデルして役作りをしたといいます。

○ローズ・カルバート = ベアトリス・ウッド
カリフォルニアのオハイに住む今も芸術家活動を行っている102歳の女流芸術家。パリとニューヨークで教育を受け、17歳の時に横暴な母親から逃げ出して、本当に水しか出ないような屋根裏部屋に住み込んで芸術家を目指した。その後キュービズムの画家マルセル・デュシャンと愛人関係になったり、インドに渡ったりした。1940年代後半に陶芸家になりオハイに窯を開いた。実際にキャメロン監督も彼女と出会い、若い頃のこともはっきりと覚えていて、愛くるしく痛快な人物だったそうです。

○ジャック・ドーソン = ジャック・ロンドン
ファーストネームとともに、ボヘミアンな行動も参考になっている。作家として代表作「荒野の呼び声」を始めとして、「白い牙」「海の狼」などの野生作を残している。彼は15歳で家を飛び出し、自分のボートで漕ぎ出して牡蛎の密漁をして、のちに商船隊に参加して世界中を駆けめぐった。しかも高校を卒業するために故郷にも戻ってきたといいます。


● 映画「タイタニック」の隠された設定

ラベットとともに潜水艇ミール号に乗り込んだロシア人は実在のアナトリー・M・サガレヴィッチ博士で、劇中ではアナトリー・ミカエラヴィッチとして登場。

出資者と通信衛星回線で電話している鼻を白くした人はボビー・ブエル

結婚したローズ・カルバートの住んでいた街はアイオワ州の州都デモインから東に約130kmにあるシダー・ラピッズ

老ローズの抱くポメラニアンの名前はフレディー

ホックリーとブケータ家の侍女(キャルが切れて散らかした食器を片づけるメイド)はトゥルーディー・ボルト

キャルの付き人ラブジョイだが、字幕では元刑事とローズが言っているが、ピンカートン探偵社と言うところにいた。