ぶみの観劇劇場  ぶみの観劇劇場  ぶみの観劇劇場  ぶみの観劇劇場  ぶみの観劇劇場

雪組大劇場
宝塚幕末ロマン 猛き黄金の国−士魂商才!岩崎彌太郎の青春−
脚本・演出 石田昌也
レビュー・ロマネスク
 パッサージュ−硝子の空の記憶−
作・演出 荻田浩一

2001年2〜4月

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東京公演ちっちゃな観劇劇場 その1 その2

 猛き黄金の国 
第一場 ぶみの期待‐観劇前のお話‐  石田先生だ。幕末だ。う〜ん。また、男の世界だ。そして、イヤでも思い出す(イヤじゃないけど)。ぐんちゃん(月影)トップお披露目にして星組最後の作品『誠の群像』。そして、専科からは、ぶんちゃん(絵麻緒)&ワタルさん(湖月)!・・・よし、気合充分(過ぎる・・・)

第二場 ぶみの感想‐観劇直後のお話‐  「・・・(また泣いている)恥ずかしい!なんであたし泣いてるのぉ。もう、石田先生のいじわるぅ!こんなにベタなのに、泣いてる自分がアホみたいだぁぁぁ」
 なぜだか、また泣いておりました。(初見の時のみ)ラストのああいうラインナップって、なぜか弱いんですよ。ドラマの最終回は、どんな終わり方でも泣いてしまうのと同じで、あのさわやかさに泣かされました。
 そしてところどころ、『誠〜』の幻影に襲われ、また、腹筋が痛くなるほど笑わされ。いろんな意味で盛りだくさんの、私には、気持ち的にも充実した作品でした。

第三場 作品について語ったりする  本宮ひろしさんの原作は読んでいませんが、登場人物が多くて、豪華雪組メンバーフル回転登場で、幕末〜明治の有名人大集合!な、楽しい作品でした。本当に、底辺の高い雪組向きですね。
 土佐弁など、台詞も方言が多くて、最初は聞き取りにくかったのですが、語りの力強さに、次第にあの時代へと引きずり込まれていきました。副題のとおり、イシちゃん(轟)演じる岩崎彌太郎の生涯を、時代に乗っけて描いてあり、観ていて客席で、彼の人生の証人のような気持ちになりました。
 考えれば考えるほど、石田先生らしい作品で、いろんな意味で細部にこだわった、というか、上手く表現できないのですが、本当に石田先生らしい。「こうやってみよう、そしたら客席はこうなるだろう」という先生の考えがわかっていながらも、客席で“こう”なってしまう。だから、みていて“ベタだなぁ”と思うのですが、そこがまた、石田先生らしくていいし。ある本に「この作家(石田先生)は右脳で作っているようで、実は左脳で作っている」というようなことが載ってましたが、まさにそのとおり。そして観ている私も左脳で観ているので「うわぁベタだぁ」と思いながらも、笑って泣いているのです。一番思うのがラストの登場人物ライナップ。「この作品は、岩崎彌太郎の生涯を、現代の3人の話の中でお客様にみせているんだよ。そしてすべてが板の上のお芝居なのよ。めでたしめでたし。」という風に、左脳派の私は受け取るのです。それから、幕開きの芸者の総揚げ。舞台狭しと、綺麗どころをならべ、前シーンの年寄り芸者二人の暗い宴会とのギャップを見せる。そりゃ、客席はびっくりしますよ。そしてそれが石田先生のねらい。それが細部にまで行き渡っていて“涙と笑いの娯楽作品”になっているのです。なにより、石田先生の作品は、演じている生徒さんが本当に生き生きと見えるのがいいですよね。

第四場 ザ・キャスト@−登場順、駆け抜けます−  なんたって、この作品。幕末明治有名人大集合、なので、登場人物も多すぎ!でも、たくさんの人に役がついていて、台詞があるのはいいことですね。なるべく隅々まで見渡してみます。
岩崎彌太郎‐轟悠‐意気のいい若者も、油の乗った中年も、なんと自然なんでしょう。動乱の時代に、日本の経済を支え続けたおっきい人物を、いしちゃん(轟)の役者としての器の大きさそのもので演じきっていました。  喜勢‐月影瞳‐「私達は夫婦なのですから」という台詞が、こんなにまでしっくりとするトップコンビが今までにあったでしょうか。彌太郎のイシちゃん同様、おきゃんな娘から、しっとりしっかりの奥様まで、本当に綺麗に年を重ねているなぁと、今回のぐんちゃんにも驚かされました。  川田小一郎−貴城けい−彌太郎の人生と共に歩み、支えてきた人物。社長が無謀なことを言い、まわりがそれを批判しても、小一郎は社長を信じてそれに従う。15場の幕前、台詞はそんなにないのですが、その目をみれば、二人の信頼関係がわかります。  坂本竜馬−絵麻緒ゆう−正直、始めは竜馬に見えなかったのですが、回を重ねるごとに“ぶんちゃん(絵麻緒)の竜馬”がはっきり見えてきて、お茶目さと共に、懐の大きい人物像に心惹かれました。のびのびとしたぶんちゃんの姿に、なんだか安心したりして。  後藤象二郎−湖月わたる−みごとな“穴の開いた大風呂敷”ぶりで、ぼけもしゃべりも笑いも、なにもかもが豪快。最初の台詞「よくないっ!」から始まり、コメディー担当かと思いきや、吉田東洋暗殺前後はきっちり芝居を決めてくれました。  吉田東洋−萬あきら−自分を信じて、まっすぐ歩いてきた人、という感じで、絶命のシーンまでもがまっすぐで、鮮やか。ケイさん、かっこいいです。  美和−灯奈美−銀橋で彌太郎を諭す姿とその人柄に、この母あって、この子だなと、感じられました。  沖田総司−蘭香レア−今回さよならのレアちゃん。大役でした。たった2場面だけど、沖田の心の動きがはっきり感じられました。余命幾許もない沖田と、ラストステージのレアちゃんが重なって泣ける!  三野村利左衛門−成瀬こうき−穏やかな商人振りが、本当によく似合ってます。武士と商人の違いが、成瀬さんを見ているとはっきり感じられます。今回私の一番のお気に入りが、成瀬利左衛門です。  丸奴−紺野まひる−こういう、おきゃんな、突撃型の役が、まひるんには似合いますね。長崎弁もいたについてます。  グラヴァー−天希かおり−コメディー担当で、その存在自体が笑いを生むグラヴァーさん。大柄なのでそれでなくても目立つのに、リアクションも声も大きい。舞台のどこにいても、変な外人で最高でした。  アーネスト・サトウ−天勢いづる−グラヴァーさんとのでこぼこコンビが、作品のいいスパイスになってます。半分日本人なので、グラヴァーさんより落ち着いていて、暴走を制御する(?)大切な役をうまく演じてました。  渋沢栄一−飛鳥裕−彌太郎の人生の後半での登場なので、断髪にフロックコートとお髭のナガさん。彌太郎を批判するような台詞がほとんど。でもその言葉の奥は、よきライバルとしての思いがこもってます。  井上馨−夕輝真緒−渋沢さんと二人、そんなに登場が多いわけではないのに、とても印象に残ります。いろんな登場人物がいる中で、政治家としての威厳もきらりとしてます。
 そして、物語の進行役、現代チーム。明治の人たちから浮いてしまわないで、なおかつ現代人らしい流れで、お客様を引っ張ってました。 神宮寺−美郷真也−いいおじさんぶりで、二人の若者と共に旅をしてますが、ラストは明治と平成の二人の彌太郎を見事に結びつけて、納得の芝居が見事でした。  矢島彌太郎−朝海ひかる−現代の若者も、何も考えてなさそうで、でも考えるところがあるのだよ、と、コムちゃんを見ていて考えました。芝居がからず、でもナチュラルすぎずで、現代人て難しいですね。  ヒトミ−愛耀子−コギャルも演技力で見せてしまう、アミちゃんの力量は、計り知れません。すごいびっくり。

第五場 ザ・キャストA−一場面だけですが− 続いて、一場面だけ登場の有名人。個性的なキャラクターばかりです。  ジョン万次郎−風早優−歌も聞かせてくれました。取り囲む村の衆とは大きく違った雰囲気を、いい感じでかもし出してました。ひっこみの時、舞台前方で彌太郎と竜馬が話しているのを、腕組みして楽しそうに見ているみやこちゃん、大好きです。  武市半平太−立樹遥−自分の考えをご家老にポンとぶつけ、押さえつけられ、復習を誓う。半平太のまっすぐすぎる性格が、しいちゃんの大きさと押しの強さで倍増してました。幕切れは目の中に、復讐の炎が見えます。  お竜−愛田芽久−かわいい!けど、お竜の気の強さも出ていて、緩急ついた台詞にも色気がありました。  お悠−山科愛−こちらもかわいい!沖田とのカップリングも、お人形さんみたいでかわいいし。  番頭−すがた香−商人の笑顔がいいです。お客様に向かっての顔と、女中や小僧への顔が全然違うし。  小栗上野介−未来優希−コメディーかと思われるこの作品の中で、小栗さんの場面は完全に大河ドラマ化しています。迫力あるし、説得力あるし、はまこちゃんて、本当に何でもできますね。  浪人1・2−未来優希・立樹遥−本役では大マジの二人が、長崎で浪人として登場。絶対に同じ人には見えません。さすが役者!  メイド−森央かずみ−お得意の、と言っては失礼かもですが、象さん(後藤象二郎)が鼻の下を伸ばしまくる、金髪グラマーなメイドさんは、かずみさんにしかできません。  女将−飛鳥井まり−幕開き、わたるさんがぶちかます大台詞を受けるはなこさん。日本物の好きなはなこさんの、たおやかな舞台姿もこれで見納め…  ツルオカ−風早優−この役も、みやこちゃんにしか出来ません!石田作品独特のブラックキャラだ!  川上音二郎−音月桂−若い希望に燃えた役者さんというと『月夜〜』のフォンライが思い出されますが、もっと自分に自信あり、という感じで、元気さが違いました。  桐野利秋−すがた香−薩摩の人斬り半次郎こと中村半次郎。猛々しさが、にじみ出ていました。  大久保利通−悠なお輝−見た目から大久保せんせーになりきっていて、もみ上げから髭、も素敵でした。  勲章の男−すがた香−大活躍みつこちゃんの3役目は、恐れ多くも****。いと高い身分のお方ですが、お茶目なんです。  いね−五峰亜希−金髪の三つ編みが印象的。しんみりしたシーンですが、一言一言かみ締めるような、落ち着いた芝居はさすがです。

第六場 この場面が好きなのよ  私自身が勝手に“二人の沖田”と名づけた、第11場。上手花道から腕を怪我した竜馬(絵麻緒)。下手花道から咳をしながらの総司(蘭香)。本舞台での二人のやりとりは、私の中で色々な思いが爆発する、ある意味、胸が苦しいシーン。 観始めたばかりの頃は、ぶんちゃんが竜馬に観えず、絶対沖田のほうが似合うのに〜ぶんちゃんの総司に会いたいよ〜『誠〜』の時代に帰りたいよ〜と、泣き、入ってました。その一方、レアちゃんがさよならということもあり、それはそれは苦しくて。 その後、何度も観るうちに、ちゃんとぶんちゃんが竜馬に観えてきて。そうするとそれまでの邪念が消え、お芝居に没頭し、また泣ける。 二人の最初の出会いの時に、総司が竜馬からいろいろな影響を受け、考え、でも、あの様にしか生きられなかった時代の哀しさを感じました。総司には「多摩武州に生まれず、土佐に生まれていたら」=竜馬に先に出会っていたら、としか言えなかったんですね・・・
 ラスト、去っていったレアちゃんに「沖田・・・」と呟くぶんちゃん。最初の頃は、「お前じゃ〜」と突っ込みを入れていた私を許してください・・・

第七場 ぶみの選ぶベストカップル  間違ってもカップル、ではありません。今回のベストコンビは、変な外人・グラヴァーさんとアーネスト・サトウに贈ります。上でも少し述べてますが、大柄な、リアクションも派手なグラヴァーさんと、小柄で落ち着いたサトウさん。このアンバランスな組み合わせがなんとも絶妙。 暴走するグラヴァーさんを受けとめ、制御するサトウさん。どこまでも対照的な二人。この二人を見ているだけで、お芝居は充分楽しめます。 舞台のどこにいても、常に変な外人で、グラヴァーさんが言葉や状況が飲み込めてないんだろうな、というのをサトウさんが一生懸命説明していたりして。 そんな二人は、幕末〜明治の日本人ばかりの中で、非常に浮いている。けれどもその浮き具合が、なんともいえず微妙でおもしろい。 そして、私を笑いのツボに叩き落したのが、ラストのラインナップの二人のポーズ。階段の1段上に足をかけ、手を腰にまわしたあのポーズ。指差して笑ってしまいました。 もう、そんなわけで、この二人が今回のベストカップルじゃなくってベストコンビ!!

第八場 ぶみの心残り  自分でも、いいかげんにしなさい、と思うのですが、言わせてください。ぷんちゃんとぐんちゃんを絡ませてほしかった・・・ 以上です。

第九場 そしてリピート  終わってしまいました。大劇場も、そして東京も(爆)。今ごろ、アップしてなにやってるかなぁ、私。
 本当に涙あり、笑いありの、素敵なそして豪快な作品でした。駆け足過ぎて物語が薄っぺらい、とか、夫婦愛がメインと言っておきながら、焦点が定まっていない、などなど、いろいろな批評が出てましたが、 なんのなんの。ワタクシ、大満足させていただきましたわ。ありがとう、石田先生。今の雪組にしかできませんもの、この作品。添い遂げた夫婦の愛も、時代を切り開く男の友情も、登場人物の多彩さも。そして、三菱の岩崎彌太郎の人生も。 これからは、鉛筆見ながら、♪猛きぃ黄金のぉ国のぉ〜夢ぇ と歌わせていただきます(笑)。

2001.3.末から書き始め
気がつけば
2001.7.2.

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