東宝ミュージカル 帝国劇場公演
2000年8月
エリザベート
脚色・演出 小池修一郎
第一場 ぶみの期待‐観劇前のお話‐
自他共に認める“エリザベート気ちがい”のぶみ。宝塚での公演は、観て観て観尽くしました。そして失礼ながら「飽きた、かな?」の発言まで。『エリザベート』は観たい。でも、もっと、なにかこう、新しい、、、、。そんなところに、やってきました、東宝ミュージカルで。振って沸いた(私にとっては)吉報に、心も躍り、期待は高まる。
噂はいろいろ出ましたが、一番振り回されたのが、キャスト。エリザベート役はカナメさん(涼風真世)とイチロさん(一路真輝)のダブルキャスト、ルキーニは市村正親さん、などなど。そして蓋をあけたら、あらトートがダブルキャストだったのね。という感じで。
それから日程にも振り回されました。結局、帝劇では2000年6.7.8月。なんとまあ、雪組大劇場と重なってるじゃありませんか。そんなわけで、日にちを決めかねる日々で、最終チケットを手に入れたのは、7月の頭でした。観劇日までのわくわく期間が短くて、ちょっと残念。
第二場 ぶみの感想‐観劇直後のお話‐
「ええもん、観せてもろた。」
まさに芸術品ですね。表現は適切ではないけど、なんかこう、真実みがあった。様な気がします。それは単に男性が男性を、女性が女性を演じているからでしょうか?
第三場 作品について語ったりする
今更、私が語るのも厚かましいですが、簡単に宝塚版との違いについて。プログラムで“この『エリザベート』(東宝版ということ)はいわば世界初演です”というようなことが書いてありました。確かに。ウイーン・宝塚・ハンガリー・オランダと経て、たどり着いた東宝版なのでしょう。私はもちろん宝塚版しか観劇してませんが、いろんなバージョンのシーンをふんだんに使って構成してるんだなと、妙に納得しました。そこに新曲『夢とうつつの狭間に』が入り、そのシーンに続くためにエリザベートの心理・台詞を少々いじり、そして出来上がった東宝版なのです。
さて、宝塚版との違いですが、当たり前のことながら、エリザベートが主役になりました。彼女のことがたくさん書かれている、そして、トートのことが少なくなってる、わけです。簡単に言うと。そして、ルキーニの登場もオリジナル(ウイーン版)に近づいていて、つまり増えている。フランツは同じくらいの描かれ方かな。なので、トート・フランツ・ルキーニの三人の扱われ方は、ほぼ同等。オリジナルもそうだと思うので、よーく考えると、宝塚版て、本当によくできた作品だなぁと思えます。トップ・二番手・三番手にちゃんと差がついてますから。
舞台の見た目ですが、宝塚大劇場に比べて、帝国劇場の舞台がやや幅が狭く、そのかわり奥行きがあるのでしょうか。だからの雰囲気も、幅が縮まり、奥行きが広がり、高さが出た(宝塚版を劇場で観ていないとわかりにくい表現ですが)。高さがすごくあった気がするのは、トートの登場が上からゴンドラみたいに降りてきたから、とも言えるし、大きい扉が登場したから、とも言えます。なんというか、マッチ箱で作ったドールハウスの中で、いろいろなことが起こっていった様な・・・なんだかますます分からなくなってきたよ。
第四場 ぶみVS役者‐といっても戦うんじゃなくて‐
宝塚のさよなら公演でトートを演じた一路真輝。その後、ぶみが生イチロさんを観たのが『エリザベート・ガラコンサート』。そのときもイチロさんはトートでした。それ以来の観劇なので、今度はエリザベートになってる、というのが何となく不思議でした。
Wキャストのトート。ぶみは山口祐一郎バージョンを観劇しました。自分でも意外なのですが、生祐一郎さんは初めて。私が四季を観だした頃に、彼は退団したのです。あぁ、愛の行き違い。そして今やミュージカル界のキング(プリンスではなくキングだと今公演で確信しました)といわれるほど、休む間もなくいろんな舞台に出演してますが、ナゼか観てないんですよ。だから今まではずっとCDの中の私のファントムでした。ラウルを歌ってるのもテープで持ってますが、(CD自体は絶版)やっぱりあの重厚感のある声は、ファントムのものです。そして今度も同じストーカー(笑)
同じく四季出身のフランツを演じた鈴木綜馬。やっぱり四季時代の舞台は観てませんので、初めましての方でした。
今回の出演者の中で、一番最近お会いしたのが、ルキーニの高嶋政宏。『双頭の鷲』のスタニスラス。同じ皇后の暗殺者の役所。TVでの印象と全く違って、すごく一直線な情熱を持った芝居をする方だなぁというのが、第一印象。
ひときわ私の思い入れの強いルドルフは現役音大生・井上芳雄。新人さんでよかった、と思うのです。他の役の印象がある人だと「そんなんじゃだめーっ」と“ぶみのルドルフ審査”(とても厳しい)にひっかかるから。小池先生のお眼鏡にかなってのデビューだから、期待はもちろん大。
ゾフィーとして舞台に帰ってきた初風諄。宝塚のOGですが、TVでやった『ベルサイユのばら』初演のアントワネットしか観たことがありません。あ、あとアデュー宝塚大劇場で歌っていたお姿とか。
第五場 再上演します‐ぶみの頭の中で‐
だらりと垂れ下がってる雰囲気の緞帳をトートダンサー達が引きちぎる−開演。ロープで首をつっているルキーニが、裁判官の声に反応して語り出す。ルキーニのぎょろりとした白目が、薄暗い舞台に浮かんでいるよう。そう、ルキーニは監獄で首吊り自殺をしたんだった。彼の声で死者がよみがえる。棺桶から這いずり出る者、あ、あれはきっとヴィンデッシュ嬢。それにみんな、なんてグロテスク!人数があまり多くないので、あそこにパパが、あれはきっとグリュンネ伯爵。と、一人ひとりがよく見える。それぞれの歌い出し。ゾフィ・ママ・フランツ・・・みんなこういう声で歌うのね。子ルドルフのボーイソプラノが響く。鳥肌。注目のルドルフ。哀しげな儚げな、なんてピッタリなの。合唱が熱を帯びて膨らんでいくのにつれて、知らず知らずに涙が!これが『エリザベート』の魔力!でも泣いてる場合ではない。観なければならない。
・・・ずっとこれを続けてると、非常に長くなるので、ここでおしまい。
第六場 再上演します‐抜粋してね‐ ・・・私の観た中で、一番おてんばなエリザベート。♪パパみたいに♪の時も、バートイシュリュの時も、跳ねる・走る・笑顔が弾ける。とても楽しそう ・・・♪愛と死のロンド♪を歌うトート。なんて甘美な歌声!男性声で初めて聞いたこのナンバー。ミュージカルのキング扮する黄泉の帝王の魅力に、客席で思わず「つーれていってやみのかーなたとおく」と歌い出したくなり ・・・ゾフィ皇太后。すごい存在感。ちょっとした仕草も気高く、歌声は他のものを寄せ付けない。フランツの綺麗なテノールも、よく通り劇場に響きわたる。そこに重臣の皆さん・女官の皆さんのアンサンブルが入ると、音域の広がりにまたも圧倒 ・・・バートイシュリュ、とても楽しい!ルキーニの、さり気なくも自己アピールを忘れない姿も面白い。薄ピンクのドレスのエリザベートと、白っぽい軍服のフランツがとても初々しい。フランツの語るような歌声は、感情の襞が揺れるよう ・・・そして結婚式。♪最後のダンス♪へ。踊るトートダンサー。トートの感情の波が空気のような彼らを踊らせているよう。その空間総てがトート閣下に支配されている。客席の私も ・・・大好きなナンバー♪私だけに♪。その素晴らしさは今更語るものではないけど。カーテンを開ける演出(宝塚版)も好きだったけど、今回の大きな、とても大きな扉を開け放つ演出も効果絶大。ラスト、その扉の向こうに駆け出していくエリザベートは、白い鳥のよう! ・・・ウイーンのカフェで、革命家と握手を交わすトート。妙に人間的 ・・・鏡の間。一幕の終わり。長い、けれどあっという間の一幕を締めくくるエリザベートの美しい姿。音楽の盛り上がりと共に、また涙が!
第七場 そして二幕‐駆け足しましょ‐ ・・・ルキーニは上手い。もう一度言います。ルキーニは上手い。皮肉っぽく、オーバーに、客席の心を掴む。そして放さない ・・・今回の大ヒーロー賞、子ルドルフ。子供は、子供ってだけで役作りが出来ちゃうわけだけど、文句なし、かわいい。大きな地球儀の上で歌う姿もいいし、トートの肩に乗ってしまうのもよい ・・・大きな山場の一つ、精神病院。エリザベートVSヴィンディッシュ嬢の闘いはいかに。檻のようなパテーションが自由に動き、閉じこめられているはずの患者が外へ、普通の人が中へと空間が移動する。自由とは何か。また考えさせられる ・・・マダムヴォルフの館は、宝塚ではスミレコードにひっかかります、という仕上がり。きれいなお姉さん達が、惜しげもなく足をさらして。迫力あるね ・・・新曲♪夢とうつつの狭間に♪、コルフ島での♪パパみたいに・リプライズ♪が増え、本当にエリザベートの心情が細かく書かれてるなぁと、納得。それが宝塚版と全く歌詞のかわった♪夜のボート♪に続いていくのね ・・・♪闇が広がる♪のデュエットも圧巻。♪僕はママの鏡だから♪と並んで、個人的に思い入れが強いナンバーだけど、真っ新なルドルフがよかった。長身で、細身で。ふとタカちゃん(和央ようか)のルドルフがよみがえった ・・・死の舞踏ラスト、拳銃自殺したルドルフにトートがキスをする。どきっ!その後、ぼてっ!トートがルドルフの死体を床に落とす!やっぱりトート=死! ・・・そのルドルフの遺体は、そのまま棺桶に。霊廊にある棺に彼が入ってると思うと、感情も一段とリアルに ・・・フランツがお客になって、トートがタクトを振るう、新しいシーン。そう、フランツの周りでは、次々に不幸が起こる。そして最愛のエリザベートも! ・・・ジュネーブ・レマン湖。ルキーニに体当たりされ、刺されるエリザベート。黒いドレスから、白いドレスへ。でも♪愛のテーマ♪の歌詞は、トートに身を委ねるものではない。自分の足で立ち、自分の方からトートに手を差し出す。それが、エリザベート!
第八場 夢とうつつの狭間に‐新曲だよ‐ 他のナンバーを歌うイチロさんに比べてこの曲は、無理をしていない、イチロさんらしいナンバーでした。〜大空をゆく鴎ならば〜の辺りからが、最もイチロさんらしくて、〜今の私は立ちすくんでる〜からラストまでの、力強さがとてもよかったです。出だし、♪私だけに♪とテンポや雰囲気が似ていたので、一瞬期待が冷めたのですが、途中ですみません、と謝ってしましました。さすがイチロさんの為の新曲。
第九場 素晴らしいカーテンコール 題名の通り“素晴らしかった!”会場の雰囲気からして客席はリピーターが多かったんだと思う。おそらく、いつものカーテンコールというものがおわり、まだオケは演奏している。客席は、オケに見送られ帰る人、まだ席に着いてる人と様々でした。オケが終わった後客席は大きな拍手。そうしたら、またまた緞帳が開いたのです!そこには一路エリザベートと山口トートの二人が!歓喜の声と拍手で客席は大パニック。二人はそれぞれお辞儀をして、その後二人でお辞儀をして、舞台後方へ下がり、緞帳・・・が降りてこない。二人は顔を見合わせてしまい、うけてるし。そしてお互いに拍手を贈りあい、山口トートが一歩離れて、一路エリザベートに投げキッス!!!(客席悲鳴)それを一路エリザベートは飛び上がって両手でキャッチ!!!(客席再悲鳴)お茶目な二人の姿に、この上ない拍手を贈り、緞帳、となったのです。
第十場 東宝作品は豪華
宝塚の舞台に慣れてしまっているので、たまに他の舞台を観ると思うのです。セットが豪華だ。宝塚でも、バウ公演や、盆をふんだんに使った作品なんかは、セットを抽象的に使っているので、そうは思わないけれど、時々ある板張りの背景。ふとそれと比べてしまったりして。それに、イチロさんのお衣裳もとっても豪華!オペラグラスで、ねめまわしてしまった。衣裳を。戴冠式の衣裳も素敵。一幕ラストの肖像画の衣裳も、あやちゃん(白城あやか)もフサちゃん(花總まり)もびっくりの、超ゴージャス。バートイシュリュのお見合いの衣裳は、宝塚では紺色のドレスでしたが、今回は薄ピンク。史実では、この日のシシィのドレスは薄ピンクになってるので、その通りにしたんだなぁと妙に納得しました。
第十一場 ぶみの心残り
今回東宝で上演することになり、オーディションがあったらしい。ルドルフの井上君も、もちろんそれで選ばれてるし。オーディション、知らなかった。受けたかった。どの面さげて、と突っ込まれそうですが、出たかった。『エリザベート』に。やりたかった。ヴィンディッシュ嬢。だれかやらせて・・・
第十二場 ぶみ・赤っ恥‐未遂‐ オープニング、裁判官とルキーニのやりとり。ウイーン版CDを何度も聞き、ここの部分少しだけはドイツ語(めちゃくちゃだけど)で分かるもんね。と思っていた、私。ルキーニ「あらまろーら!(←私にはそう聞こえる)」それに対して、裁判官「イタリア語はやめろ!」 がーん!・・・ドイツ語じゃなくて、ルキーニはこの部分、イタリア語なのね・・・
第十三場 ぶみの耳からうろこ 今頃になって謎が解けるとは。全曲ほぼマスターしたと思っていたこのミュージカル作品。でもちょこちょこ聞き取れないところがありました。そのことさえ忘れてるほど少しだけ。それが今回、分かったわけで。こんなに嬉しいことはないわ!(?)“まあるい王冠”です。結婚式の後の貴族たちの会話で、おじさま達が歌ってます。♪まぁるいおうかぁん♪あーっ、すっきりした。
第十四場 そしてリピート 充分堪能しました。心残りはないけれど、きっともう一度観たら、新しい発見があることでしょう。そして観れば観るほどハマル作品。それはよく分かってます。感動に包まれて日々を過ごしていたら、梅田コマと博多座で公演が決定したとか。行っちゃうかな?やっぱり。我慢できるかなぁ?
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