ぶみの観劇劇場  ぶみの観劇劇場  ぶみの観劇劇場  ぶみの観劇劇場  ぶみの観劇劇場

星組バウホール
バウ・ミュージカル 聖者の横顔
作・演出 荻田浩一

2000年3月

第一場 ぶみの期待‐観劇前のお話‐  何を隠そう、私が「これ観に行こう!」と思ったのは、荻田先生の作品だから。それから、専科の方が豪華だったから。ただ、それだけでした(失礼ね)。
 あらすじは把握して、主演はさえちゃん(彩輝直)で相手がミコちゃん(妃里梨江)、というもの把握した。でも他に誰が出ているか、何も分かってなかったの。専科の方を除いては(ほんと、失礼ね)。

第二場 ぶみの感想‐観劇直後のお話‐  「私、好きだわ。こういう作品」
 結局、ヒューマン物が好きなのよ。人の心の動きで涙がこぼれてしまうのが。今回も泣いたらコンタクトがずれた。

第三場 作品について語ったりする  やっぱり荻田作品はよい。荻田作品は多分全部見ている気がするが、標準ランクのいい作品だった、と思う。無理のない、難しくない、観ている人をドラマの中へ自然に引き込んで行く。自分もその場にいて、役の人物達を見守っている気持ちにさせてくれた。
 ドラマの舞台はイタリア。海の都。海を渡ってアメリカへ行きたかった主人公たちの、アメリカにというより、海の彼方へ対してのあこがれや、さまざまな思い。舞台装置や場面転換などに、海をよく使うことによって現れていた。だからこそ、観ている側は、話のテーマ制をいつも心に留めていられるんだろう。
 音楽もさりげなく流れていて、耳に心地よかった。

第四場 主演‐彩輝直‐  一幕のジゴロ姿より、二幕の方が、静かに心の葛藤を繰り広げている青年像でよかった。誰かが優しくしてあげたくなる、さえちゃん独特のキャラクターだった。
 一幕は、背伸びをしている気がしたので。今までの役では『WWS』のベルナルドが近いかな。気を張ってる男。そういう背伸びの役より、二幕の迷える子羊的な方が、さえちゃんには似合ってると、つくづく感じた。その方が観る側も気を張らずに観れるから。『夜明けの天使たち』のジョシュアなど(これも荻田作品だ)。キャラじゃない役も演じなくては進歩はないし、引き出しが増えていくのはいいことだから、必要だとは思うんだけど…。さえちゃんは立ち姿も綺麗だし、笑顔なんてとびっきりなんだから。何が足りないのかしら?
 登場シーンが多いから、いろんな人と舞台上で接しているけれど、その人を見つめる眼は、ルーカの性格か、さえちゃんの持ち味か、とても柔らかく真っ直ぐ。見つめられたらきっと照れてしまう、でも見てもらえなければ、嫉妬してしまうそんな気がする。でも、ずっと心がつながっていたのは、ずっと探していたのは、ジェンナーロ(朝澄)ではないですか?

第五場 二番手‐朝澄けい‐  色の白さ、線の細さが、早逝したジェンナーロにピッタリはまっていた。もともとよく通る、いい声だなぁと思っていたけど、ルーカに絶えず語りかけるその声は、ルーカを導く道しるべのようで心地よかった。ルーカの守護天使のようで、二人の絆がとても深かった事がはっきりと感じ取れた。幕開きの、海を眺め歌う姿は、客席を物語へすっと引き込んでくれたし。なんだかベタ誉めになってるが、かよこちゃん、素晴らしかったよ。

第六場 ヒロイン‐妃里梨江‐  お嬢様・叫ぶ女。どちらもはまってました。美しかった。立ってる姿は。やっぱり喋ると、うーん…と思ってしまうのですが。
 今回のフランチェスカ。気位の高い、気の強い(実は強がってるだけ)役だから、吐き捨てるような台詞回しが多くて、ミコちゃんお得意の、という印象しか残らなかった。叫んでないミコちゃんにはいつ会えるのかしら。いやいや、叫ばない役も演ってるんだけど、印象に残らないのよね。
 ダンスも綺麗で、表情も引きつけるものがあるし、なんと言っても美しい人なんだから、娘役びいきのぶみとしては、ミコちゃんの成長を心待ちにしているのです。
 つけたし。。。お衣裳がどれも似合っていてよかった!! ぶみ的には一幕 幕切れの白いコートがお気に入りだ。

第七場 主な方々‐語り尽くせぬ…‐ 専科の方々に動かされて観に行ったわけで、いつもながら完敗でした。
 アウラ‐矢代鴻‐ 荻田作品にはなくてはならはい存在のシビさん。その芝居も歌声も。いつも主人公たちを見守る冷静な眼差しの役が多い。ただ今回、一度だけ自分の思いを吐き出すように歌った。いつもは他の人の心の葛藤や苦しみを歌っていたのに。その姿がとても印象的だった。
 ジュリオ‐萬あきら‐ 最初のうちは時々現れる不審な男。あの人は誰?と眼をそらせなくなる。そして自分のただ一つの目的のために現れ、周りの人たちを巻き込む。かつて愛した、そして今も愛しているイレーネ(朋)と、もう一度“死”をやり直すために。手段を選ばないその人間像は見る人に恐ろしさを与えた。ラスト、毒に悶えるイレーネと踊る姿はドラマティックでさえあり、この作品の中で一番濃いシーンになってました。ケイさん(萬)もチヨさん(朋)も芝居もダンスも素晴らしいから、圧倒! 側で見守るルーカ(彩輝)も、怖かったでしょうねー。
 アンニーナ‐京三紗‐ ジェンナーロの母親。生まれたばかりの息子を捨て、成長した息子が探し当て、そして息子を看取った母。切なく、哀しくて、でもそれも総てどうしようもない。いっちゃんさん(京)のそんな母親像は、誰にも真似の出来ない雰囲気があり、思い出すだけで涙が出る。息子の事を何とかして理解したいと、ルーカに息子の日記を届け、息子の見ていた海を見つめる。でも、もうそれだけで、この母子は理解しあえていると、泣きながらぶみは思ったのです。
 ジョアンナ‐邦なつき‐ ルーカがジゴロとして生きていったのは、ジョアンナの導きによって。この物語中、他登場人物とはどこか少し違った人。暗い過去を心に持っていない、からかしら。にじみ出る品の良さと、よく通る歯切れのいい声で、母親像ではなく、人生の導き手という役所にまりさんは(邦)ピッタリ。
 ロレンツォ‐一樹千尋‐ 妻(朋)も、娘(妃里)もとても愛していた。でも愛し方が分からなかった。そんな不器用な、夫であり父。会社の隠し帳簿を作っているような悪い人でも、ヒロさん(一樹)の作り出す人間は、どうしても憎めない。一番最後の、娘(フランチェスカ)との別れのシーンが好きです。ぶみの席からはヒロさんの背中しか見えなかったけれど、またそれがよかった!
 アントニオ‐夏美よう‐ アウラ(矢代)と並ぶ、懐の大きな男性で、ルーカに対してもアウラに対しても、常に向けている眼差しがとても暖かくて印象的。バーテンのマリオ(水瀬あお)に、ジゴロの手ほどき(?)をしているシーンは、さすがはっちさん(夏美)!!かっこいい!!
 イレーネ‐朋舞花‐ あんな、生きる事に何の希望も意味もなく、焦点の定まってないチヨさんは初めて。とにかく驚いた。絶命直前のルーカにすがる姿、そして「まだ死にたくない」と心の底から絞り出したような台詞は、唯一の“生きているイレーネ”。情熱的な女性の役が多いチヨさんの、とっても新しい発見が出来て嬉しかった!
 ロッコ‐大洋あゆ夢‐ 今更いうのもなんだけど、踊るとかっこいい。大きいからダイナミックだし。芝居もうまいし。ロッコは、ルーカ達孤児4人の中で、一番真っ直ぐ生きている人。それは、自分を本当に愛してくれる人・フィオナ(陽色萌)がいたからだと思う。ロッコたちのカップルが現れるだけで、グレーがかった舞台が明るくなるような気がした。
 ファブリッツォ‐朝宮真由‐ かわいそうなファブリッツォ。一番彼が“かわいそうな人”だった。でも、朝宮くんならでわの明るさで、“哀れな人”にはならなかったけど。
 ニコラ‐美耶エリカ‐ とにかくかわいかった!!それにすごく上手くなった!! もう、手放しべた誉めしたいくらい。もともとダンスの綺麗な人だったけど、このごろはお芝居・歌の上達がめざましくて、ダンスが上手い事はすっかり忘れてた。けど、二幕幕開きダンスは、とても眼をひいた。ルーカに別れを告げるシーンは、振り返ったとき、すごい顔をしていてびっくりしたが、そのとたんに大粒の涙がポロポロでた時は、思わず観ている自分もニコラの気持ちになってしまい、負けない涙を流してしまった。「なんでこんなかわいいこを行かせてしまうの?」と心から思ってしまった。ルーカと幸せになって欲しかったなぁ。

第八場 娘役えりすぐり‐だらだらゆきます‐(ぶみはめちゃめちゃ娘役好きです。) ヒロイン妃里梨江は上記で辛口ですが述べております。 朋舞花の役は茫洋とした奥様だったけど、二幕最初の爽やかなダンスは、踊るとちよさんが一番かわいい、と実感した。 美耶エリカは本当はもっと語りたい。ヒロインではないけれど、今回のかわいさNo1だわ。 プリマヴェーラお出入りのお客様。マダム系の朝峰ひかり・亜づさ真鈴、二人とも、芝居が上手いからちょい役でも眼をひきます。 同じくお出入りのお嬢様系彩愛ひかる・涼乃かつき、文句なしかわいい。ルーカが羨ましいわぁ。 影ソロ花城アリア、透明感のある綺麗な歌声で、休憩時間に早速チェックしてしまった。バウ作品はこういう収穫(?)があるからうれしい。 プログラムを見ると、出演者全員に名前がついている。これもバウならでわ。みんなかわいかったよー。

第九場 このシーンが好きなのよ  ジュリオ(萬)イレーネ(朋)の心中シーン。と言いたいところだが、一番泣けたのは二幕SCENE6・アンニーナ(京)がブリマヴェーラから去って行くところ。たんたんと語るいっちゃんさんの姿と、彼女に何を言ったらいいのか戸惑うさえちゃんの姿。去り際のいっちゃんさんの表情、あれは笑顔ではない。失望でもない。もう、ぶみは泣くしかないでしょう!

第十場 助演賞に輝くのは  本気でものすごい困った。誰もかれも良くって。助演者、みんなにあげたいなぁ。

第十一場 ぶみの選ぶベストカップル  文句なしお芝居ではジュリオ(萬)&イレーネ(朋)なんだけど。でもやっぱりぶみの独断と偏見で、一幕SCENE1Bの踊る男踊る女、大洋あゆ夢&朝峰ひかりの同期カップルにベストカップル賞を贈りたいです。濃厚すぎて、目が離せなかった…。

第十二場 ぶみ・辛口‐聞き流してやって‐ 辛口、うーん、辛口ねぇ。とてもいい作品だったから、作品や、カンパニー全体には辛口にもなれないんだけど。強いて言うなら、主演の2人、がんばってくれ。

第十三場 ぶみの心残り 一度しか観ない公演だったので、舞台全体を見渡したかったのに、席が・・・いいのか悪いのか、友人M子の取ってくれた席は、前の隅だった。2幕では、さえちゃんを刺した朝宮くんが目の前に<倒れてきた・・・。本来、席が前の方というのは、とても喜ばしい事なのだが、わがままぶみは後ろの方で観たかった。特に荻田作品は、舞台全体が芸術作品なんだから。

第十四場 そしてリピート 一度だけ、心を込めて観るのがいいな、と思った。二度観れば、ある程度台詞も覚えられるかもしれないけど。三度目になると、途中少し飽きが来るかも(←わがまま)。
 私の性格、価値観からは、一度だけ、集中して、が適当ね。でも、作品としてはヒューマンドラマだから、も観れば観るほど味が出てくるかも。とも思った。一度しか観れない人の、ひがみかしら。

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