Hitomi Tsukikage STAGE HISTORY |
ミュージカル・プレイ 再会
作・演出/石田昌也 |
1999年4月2日〜5月10日/宝塚大劇場 7月2日〜8月15日/TAKARAZUKA1000days劇場 |
ぐんちゃんの役/サンドリーヌ |
雪組にとっては2作品ぶりの、ぐんちゃんにとっては3作品ぶりの洋物のお芝居でした。だからもちろん 外人の役も3作品ぶり。サンドリーヌ。マヤさん(未沙のえる)扮するクードレー社長の台詞をかりれば 「清く・正しく・正しーい」女性。前半は。久々の外人役(?)で、ぐんちゃんは弾け飛んでくれました。オープニングはウエディングドレス姿で 新郎のイシちゃん(轟悠)と登場。ラブラブで銀橋を渡っていきました。が、その後、イシちゃんに「裏切り者〜」 の叫びと共に平手を食らわせ、黒縁のメガネをかけ、「男のために女が美しくするのは無駄なことだー」と へんちくりんな熱唱をしつつ、銀橋を帰っていったのです。トップ娘役になり、何回か銀橋を一人で渡って いるぐんちゃんですが、この銀橋ソロは今までに例のないかっ飛ばし方でした。あー、ぐんちゃんの例だけで なくても過去にトップ娘役がここまでやった例というのはない、と、思います。
次の図書館のシーンもその勢いで、いや、それ以上にかっ飛ばし、"お堅い図書館の職員"を演じて くれました。"お堅い"というか、はっきり言って"変な人"でした。くしゃくしゃの三つ編みを二つわけで垂らし、 牛乳瓶底のメガネをかけて、肩の落ちたカーデガンにアームカバー、三つ折りハイソックス、の出で立ち。 立ってしゃべるときは声の抑揚に合わせて体がふにゃふにゃ動き、歩いていても直角にしか曲がらないし、 指さし確認しながら歩くし、ノートに何かを書くときも小指をたてて、腕を振り回しながらひどい オーバーアクション。でもそのオーバーアクションのおかげで、大きな劇場の隅のお客様まで"サンドリーヌは 変な人"というイメージをしっかり植え付け、そして爆笑をかっさらったのです。 立派なトップ娘役になりました…(なんだか素直に喜んでいいのか…いいんだろう、きっと…)
このサンドリーヌ、イシちゃんのジェラールが、誘惑して、偽りの恋をして、そして捨てられるターゲットに されたわけですが、図書館のシーンのラストに「最初の行き先は美容院・それからブティック!」と ジェラールに言われ、連れて行かれたんでしょうね。次のオープンカフェのシーンでは、(図書館のシーンから 数日目かな)美しいお嬢さんになっていたのです。でもレーサー達に取り巻かれてもどうしたらいいか分からず 逃げてしまったり、なれないヒールで足を引きずってみたりと、細かい演技も忘れていませんでした。でも前の シーンとのギャップが激しすぎて、もう少しその変化を表現できるシーンがあると良かったのになぁと思います。 ジェラールとの関係はずいぶん打ち解けて、洋物でもこの二人はとてもお似合いだわぁ、と思いました。 (ショーはもちろん洋物でしたが、お芝居とはまた違うでしょ)
公園のシーンでは老カップルや辻音楽師から人生や、愛について考えさせられ、そして、"偽りの恋"が二人とも 気が付かない間に本物の恋になってしまうのです。そのシーンのデュエットダンスは息もぴったりで、 ドライアイスの中で踊る姿が幻想的でした。
その後は、騙していたはずのジェラールがサンドリーヌに驚かされ、いつの間にか立場が逆転。ダンスホール でのサンドリーヌは、タバコは吸うし、大学生の時に教授と不倫していたことを話して聞かせたり、酔って、 乱入してきた酔っぱらいのかしげちゃん(貴城けい)に絡むし、とにかく最初のサンドリーヌからは想像も つかない人になってました。でもジェラールはそんなサンドリーヌもやっぱり好きになってしまって いるので、"騙して捨てる"ことができなくなっているのです。そして、気がついたら、ジェラールは サンドリーヌに"捨てられて"しまったのです。ぐんちゃんのそんな色っぽいサンドリーヌも素敵でした。 かなり、'作っている'感じはしましたが。(最初のサンドリーヌの方が自然?)ホテルの部屋で、置き手紙を していくところは、偽りではない本物のサンドリーヌの姿がかいま見られました。そして次の登場シーンの 銀橋でのタータン(香寿たつき)とのお芝居とソロの歌にきれいに続いていました。サンドリーヌはジェラールに 騙されていたのではなく、騙していたんです。だけどジェラールと同じように彼を本当に好きになってしまって いたのです。その切ない気持ちを前シーンのイシちゃんと同じ歌♪モンテカルロの恋を同じ思いで歌っていった のです。
ラスト、タイトルの『再会』。えー、そんなのあり?、といいたくなるほどのどんでん返しの再会に なりましたが。中でも一番のどんでん返しは、サンドリーヌは実はフランスのモナール銀行頭取令嬢だった、 ということでしょう。『ME&MYGIRL』よろしく、最後のシーンにドレス姿のご令嬢で登場する のです。(よく考えると頭取令嬢って二度目ですね)身分と容姿を偽って、「どれだけ愛されるかを試して みたかった」という気まぐれなご令嬢でしたが、最後には本当の愛を見つけて、めでたしめでたしですね。 令嬢姿の落ち着いてしまっているぐんちゃんもいいのですが、ラストの「どこまでも、どこまでも ついてってあげるわよ!」と叫ぶおきゃんさも、ぐんちゃんらしくて私は好きでした。
物語自体、最後のどんでん返しが大きさすぎて、上記の様に、えー、そんなのあり?と思う位 でした。でもとびきり楽しいコメディーで、久々の洋物で、お芝居で元気な雪組、そして元気な ぐんちゃんに会えたので、ま、そんなのもあり、ですね。
1999.6