【どこにいても、きっと、絶対。】


夏休み。

さくらと小狼は、とある場所を目指して、

緩やかだけれど長い坂を登っていた。

---3日前のこと。

(中学生のかと思われるような)「スケッチ」の宿題にピッタリの

場所がある、と知世に誘われたのだ。

ただ、肝心の知世は用事があって(実際は気遣ったから)行けないとのこと。

ただ、地図などの描かれた紙が渡されて

「どんな場所かは行ってからのお楽しみですわ」と、いつもの笑顔で言うだけだった。

さくらと小狼はひたすら「?」マークが飛び交っていたのだが。


「わぁぁー!」

「うわ…。」


辺り一面黄色、黄色、黄色。

知世が2人に教えた場所は、ひまわり畑だった。


「すっごーい!こんなにたくさんのひまわり、見たことないよ!」

「俺はずっと前に1度見たことがあったと思うが…。

 でも、誰かの私有地じゃないのか、ここ。」

「あ、そっか…勝手に入っちゃ、だめだよね。」

「何も聞いてないのか?」

「うん。あっ、この紙に書いてある。えーと…

 “その場所は今、何方の私有地でもありませんのでごゆっくりお楽しみ下さいませね”…。」

「って、俺達は宿題しに来たんだろう?」

「うーん…まぁ、とりあえず早く描いちゃおうよ。」

「そうだな。」


それから、小1時間後。

太陽はもうその日1番の高さまで昇って、西の方へと傾きかけていた。

2人は思い思いの場所で絵を描いていたのだが…


「はう〜、難しいよぅ…やっぱり絵は苦手かも…。

 小狼君、どこまで描いたんだろ?」

視線を小狼の方へ移す。

(…ちょっと、行ってみようかな…。)


(暑…。)

一方小狼は、ひまわりとスケッチブックの間で視線を忙しく動かしていた。

(そういやさくらは…)

と、最後にさくらを見た場所へと視線を移す…が。

「…あ。」

先程までの場所にいない…と思って辺りを見回せば、ひまわりの中にいる。

隠れているつもりなのだろうか。

どっちにしろ、背の高いひまわりの中とはいえ、いるのはすぐ分かる。

(あいつ…)

はー、とため息をついてひまわり畑へと足を踏み入れた。

(えっ、小狼君、気付いちゃった…?)

気付いていないと思いこんでいたさくらは慌てて逆方向へと進む。

ひまわり畑は中へ入るとますます広く、隠れるにはちょうど良い。

「おい…さくら?」

「えへへ、ここまで来てー!」

「来て、って…おまえが逃げてんだろ?」

「普通に走ったらもう追いつかれちゃうけど、この中なら見つからないよねー。」

(ったく、そっちがその気なら…)


「…?小狼君?」

数分後。こちらからの呼びかけに対する反応もなく、足音も聞こえなくなっていた。

「小狼君ー!?…。」

何度か呼びかけてみるも返事がない。流石に不安になってひまわり畑から出ようと歩き出した瞬間---

「きゃっ!?」

「…やっと捕まえた。」

「しゃ、小狼君!!」

「まったく、早く仕上げないと電車に間に合わないぞ?」

「な、なんで〜!?どこにいたの!?」

「こっちの気配を消して、おまえの気配を追ってたんだ。」

「もー!そんなのなしだよー!」

ぷうっ、と頬をふくらませて拗ねた仕草をみせる。

「そんなルール決めてないだろ。それより、絵は終わったのか?」

「まっ、まだ…。」

「じゃぁ尚更早くしないと…」

「で、でも!小狼君は?」

「俺はもう少しで終わる。ほら、戻るぞ。」

「…うん。」

小狼は一直線に突っ切っていく。少し早足で、さくらも後からついて行く。

ゆっくり歩いてはくれるけど、それでも少し遅れ気味になってしまうから。

いつの間にか差の付いた、その広い背中に向かって問いかけてみた。

「−ねぇ小狼君。いつ、私がどこにいても…みつけてくれる?」

「あ、当たり前だろ。」

肩越しに、少しぶっきらぼうな答えが返ってきた。

(即答…)

自分で言ったことに自分が照れているのか、耳が赤い。

でも、それはさくらにとって、小狼らしく1番嬉しい答え。

「小狼君、だーいすきっ!」

「うわっ」

今度は、その背中へ飛びついた。

もちろん、小狼が一瞬にして更に真っ赤になったのは、いうまでもない。


+管理人コメント+
稚捺さんから暑中お見舞い小説を頂きましたvv
暑い夏の様に、小狼君&さくらちゃんも熱々ですね〜vv
(まあこの二人はどんな四季でも暖かほんわりでしょうけどね。)
『即答』シーンには管理人も照れてしまったり(微笑)

向日葵畑。思わず”向日葵迷路”を思い出してみたり。
壮大な景色でしょうね、きっと。
でも…スケッチするのは大変そうだね…(苦笑)

素敵なお話、本当にありがとうございましたvv稚捺さんvv

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