我慢できない人
今の店は比較的新しい店なので、前の店とは違って、店のトイレは客にも利用できるように作られている。(前の店のトイレについては広島奮闘編「世の中には例外というものもあるのだ」参照)最近ではトイレの貸し出しも、コンビニのサービスの一環としてほとんど当たり前のようになってきているので、黙ってトイレを使う客について今更あれこれ言う気はない。相変わらず「トイレを貸してください。」と一言言ってくれる客には、すっごく嬉しい気持ちになるけれど。
ところが、「トイレ貸して。」と言ってくれる客にも困った人種がいることが最近発覚した。
私はいつも通りレジで客の相手をしていた。いくつかの商品をカゴに入れた客が、今まさに会計を終えようとしていた時のこと。
「541円になります。」「1000円お預かりします。」「459円のお返しに・・・」私がそこまで言いかけたとき、やつは言った。「あ、ごめん、ちょっとトイレ貸して。」お釣りの459円とレシートを差し出したままの私を残し、やつはトイレに向かって行ってしまった。「お釣りくらいもらってから行けよ!」もちろんそんなことは口に出さず、接客スマイルで私は次に待っていた客の会計を始めた。
並んでいる客の対応に追われている最中に、トイレから戻ってきたやつは、カウンターの隅に置いた自分の買い物を手にし、私に向かって「ごめんねー」と言いながら手を差し出した。私は、さっき渡しかけてそのままになってしまい、他の客が出したお金と一緒になってしまわないよう別にして、常に気にしていたその釣り銭とレシートをやつに渡した。注目すべきは、このとき私は接客中であり、やつにお釣りを渡すために、その仕事を中断しなければならなかったということである。そしてもちろん、「ごめんね」とは言いながらも、やつはそんなこと気にもしていないということである。
今思い出しても甚だ疑問なのだが、オマエはお釣りをもらう時間くらい我慢できなかったのか!?やつは明らかに私より年上だった。いい大人がトイレを我慢できないとは考えにくい。また、そこまで我慢して買い物をするというのも考えにくい。レジまで来て、これで買い物が終わると気が緩むのは分かるが、お釣りをもらって、完全に買い物が終わった時点でトイレに行った方が安心はより大きいのではないだろうか。それをわざわざ、客にとっても店員にとってもあともう少し、というところで中座するのは、もはや確信的な嫌がらせと考えてもおかしくない。
買ったものが食べ物で、そういうものをトイレに持って入りたくはないというのなら、それくらいはレジカウンターで預かっても何の問題もない。しかし、お釣りもとなると、これはちょっと問題である。お釣りはもちろん金銭であるので、預かるとはいってもほとんどほったらかし状態の商品と一緒にしておくわけにはいかない。他の客が出したお金と一緒になってしまわないように、また、取りに戻ったときに速やかに渡せるようにと常に気にかけておかねばならない。だいたい客の方だって、自分がもらうべきお金をほっといて安心できるわけがない。このように、この行為は店員にも客にも何のメリットもない。
お釣りは確かに客が受け取るべきお金である。しかし、だからと言って受け取るべき時に受け取らずに、他の客の会計の途中などに、平気な顔をして受け取りに来るのは、非常識な行為ではないだろうか。
客はオマエ一人ではない!確かに、店員から見れば、お客様は神様かもしれない。しかし、神様だとしてもやはり、一人ではないのだ。一人一人が自分のなすべきことを、なすべきときに行っていれば店員も、会計を中断された客も嫌な思いなどしなくて済むのだ。お釣りをもらって、店を出るまでがお買い物です。おなかの具合が怪しかったら、先にトイレに行っておいて下さい。トイレは自由に使えるようになってるのですから。
(2001.9.21)
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