その一 私がまだバイトを始めて間もない頃、金髪に青い目の青年がやってきた。明らかに外国人客である。当時の私は英文科といってもまだ名ばかりで、極度に緊張していた。彼がいくつかの商品を手にカウンターにやって来たときも、どうしていいか迷っていた。自信のなかった私はレジに数字で値段が示されるからということで、小声の日本語で接することにした。「618円になります・・・」 彼はやはり自分の財布とレジを交互に眺め、それを見ていた私は「あぁ、やっぱり日本語ではだめなんだ・・・」と思っていた。すると彼は「じゃ、1008円から。」とお金を渡したのである。かなりクリアーな日本語でした・・・しかも端数まで出して・・・日本人並みでした。私の緊張は何だったのだ?
その二 ある日店にインド系と見られる外国人客がやってきた。不安そうに店内をうろつく姿を見て、これは間違いなく日本語が分からないだろうと私は判断した。彼はカップラーメンと惣菜をいくつか持ってレジにやってきた。依然として不安そうである。私は商品を袋に入れる際、これはチャンスだと思い「どぅーゆーにーどちょっぷすてぃっくす?」と聞いてみた。すると彼は今までの表情から一変して明るい顔になり “Oh yes.”と答えてくれた。私は自分の英語が通じ、彼に安心を与えられたことに気をよくして、続けてこう聞いた「はうまっち?」・・・しまった!「いくついりますか」は「はうめにー」ではないか!なぜ店員が「いくらですか」と聞かなければならないのだ!?慌てる私を見て彼は分かってくれたのか “4”と指で示しながら答えてくれた・・・。 調子に乗っていると落とし穴があるという話。でも彼はその後家族を連れてまた来てくれたから、それなりに気に入ってくれたのだろう。
その三 近くのホテルに泊まっているのか、外国人家族が店にやってきた。お父さんと見られる男性は、日本でのお気に入りなのか、ドラえもんのテーマソングを口笛で吹きながら商品を物色している。そして、おでんを見つけて“OK?”と聞いてきた。当店はおでんはセルフサービスになっているので、私は「いえーす、ぷりーずへるぷゆあせるふ。」と答えてみた。彼は私の英語なぞ気にもしない様子ででおでんを取り始めた。おでん容器に家族分のおでんを取っていた彼は、おでんのところから私に“Soup OK?”と聞いてきた。私は「いえーす、おーけー」と答えた。しかし、彼がカウンターに持ってきたおでんの入った容器には、おでんだねだけが入っており、だしは入っていないのである。私は気が変わったのだろうかと思っていたら、彼はもう一つ容器を持ってきた。何とその容器にはだしのみがなみなみと入っていたのである。いや、そりゃスープはただだけど・・・と私が思っていることなど知りもせずに、彼は家族を連れてドラえもんを吹きながら帰っていった。文化の違いを教えられました。
おそらくこれが私が相手をした外国人客ベスト3であろう。他にもいないことはないのだが、今回はこの辺でやめておく。またの機会にご紹介します。
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