闇の棚割り人

  コンビニ店員の仕事といえば、レジ打ちである。これは客と直接接するので、客にとってもおなじみの仕事であろう。しかしこの仕事が客と身近すぎるため、コンビニの他の仕事は、あまりにも影が薄いように感じるのではないだろうか。

  レジ打ち以外の仕事には、前陳・品出しなどがある。前陳とは売れて後ろに下がった商品を、最前列まで戻すものである。また、品出しとは売れてしまった商品に在庫があればそこから補充することである。 地味な仕事だが、店の雰囲気、売り上げのことを考えると、コンビニにとって欠かせない仕事である。商品がピシッとそろっておいてある店に来た客は、やはり気分がいいだろう。時々綺麗すぎて客の方が恐縮してしまうのではないだろうか、という心配をしないでもないが、商品の並びがバラバラだと「職務怠慢でーす」と言っているようで、なんとなく落ち着かない。(あぁ、職業病・・・)

  そこで、客も少なく、レジに来る様子がないときなど暇さえあればコンビニ店員は前陳のため店内をうろつく。その際店内の様子や、商品のチェックなどもする。その時にとんでもないものを見つけることがある。なぜメロンパンがおにぎりの棚に置いてあるのだ!?

  犯人は紛れもなく、買い物客である。パンの棚でメロンパンを見て「あッメロンパン、いいね。メロンパン食べよう!!」と思ってメロンパンを手に取った客が、レジ向かう途中でおにぎりを見つけ「あぁ、そうかおにぎりもあるのよね、見たらなんだか食べたくなっちゃった。今日はおにぎりにしよう。」と、そこでメロンパンは置き去りにされ、客は何食わぬ顔でおにぎりをレジに持ってくる。店員はもちろん客の興味の変化など知る余地もないので、置き去りにされたメロンパンは、前陳のためおにぎりの棚に赴く時までそのままにされる。

  このような現象が同じ種類のものの棚で行われるのはまだ許せる。例えば、なぜ2列しかない紀州梅おにぎりが3列もあるのだ!?しかも手巻きおにぎりの棚にではなく、じか巻きおにぎりの棚に。というように、おにぎりの棚の中での移動なら直すのもすぐできるし、客の気分の変化も許すことができる。しかし、なぜチョコパイがアイスのケースの上に乗っているのだ!?チョコを冷やして食べるのはおいしいと教えているのか?しかしそれは個人の好みであって、コンビニの売り場にまで変化を及ぼすものではない。客の興味の変化によって、店のディスプレイを変えられたらたまったものではない。とある客が「おれは誰がなんと言おうとこの商品をここに置きたいのッ。」と言っても店には店の決まりがある。商品は勝手に動かせるものではないのだ。それでも勝手に動かしていく奴は、何様のつもりだ!もしかして「これでおれ好みの店に一歩近づいた、フッフッフッ・・・」とほくそえんでいる闇の棚割り人というのが存在しているのだろうか。

  当店で一番ひどい被害に遭った商品といえば、アイスの棚に入れられたフィルムであろう。いくら客の興味の変化、棚割りの好みといっても、アイスとフィルムはそう簡単に結びつくものではない。これをやらかした客は、フィルムは冷やすと綺麗に取れるとか、そういうことを言いたかったのだろうか。そんな話は聞いたことがないが、そういうことはやりたかったら買ってから自分の家でやってもらいたい。売るときまで客の好みに合わせてはいられない。大衆受けするために、あくまでも標準の状態で売るのがコンビニである。しかしやはり中には「大衆」に含まれない者もいるのである。そのような闇の棚割り人と日々戦いながら、コンビニ店員は働いているのである。

 

 

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