腹から声を出せ

  コンビニにはレジの横にも商品がある。そこにあるのは、おでんやアメリカンドックなどの温かい食品であることが多い。そして、そういう商品を購入する際には、タバコと同様自分で欲しい商品を店員に伝えなければならない。この温かい商品は、コンビニオリジナルのものが多いので、それだけを買いに来る客、他のものと一緒に買っていく客、様々だがその商品を目当てに買い物に来る客も少なくはない。

  ある日私ともう一人の店員がレジ業務をしているとき、一人の男性客、年の頃10代後半から20代前半、がカゴを持ってやってきた。カゴには半分くらい買い物が入っており、私がバーコードを読んだ商品から、もう一人が袋に入れていった。その作業の途中で、その男性が小さな声で何か言ったような気がした。しかし、もう一人の店員は、タバコに手を伸ばしたり、温かい商品が入っているケースの方に行ったりなど、動く様子はない。私は気のせいなのか、彼の独り言か何かなのだろうと、カゴの中の商品をすべて打ち終えて値段を告げた。すると、彼は不安そうにそれでもやっと聞こえるような声で「からあげ・・・」と言ってきた。

  やはりあの時私の耳がおかしかったのではなかったのだ。それにしても、欲しいものを伝えるのに、あまりにも声が小さい。欲しいものの名前が店員に届かなかったら、手に入れることはできないというのに。不思議なことに、この現象はタバコを買う者には現れない。男性でも女性でも、小さな声で注文するのは決まってレジの横で売っている、温かい商品である。その原因がなぜなのかは分からないが、やはり食べ物であるため、その後の結果としての体型の変化などが気になってしまうのだろうか。いや、それはあまりにも先を見過ごしすぎた予想だ。それに先の結果を気にするのなら、タバコの方が世間体は悪そうなものだ。

  それにしても、一人の客がカゴに買い物を持って来て、商品のバーコードを読んでいる間に、「Ж〇ФΨΛЗ∽∂」と小声で訳の分からないことを言われも、それが注文なのか、独り言なのか判断するのは、なかなか難しいことである。客から何かが聞こえてきたら店員は「はい?」と聞き返すしかない。すると客は「からあげ」もしくは「いいえ。」などとどちらにしても不満そうに返事をする。しかし、なぜこちらが悪いように言われなければならないのだ!?初めから店員に聞こえるような声で伝えなかったオマエに罪はないというのか?何で一度で分からないのよ!なんてお高くとまっているのもいいかげんにしろ!!店員も人間であるということを忘れないで頂きたい。

  しかし、温かい商品を買いに来る客の全てが小声で注文するわけではない。中にはずいぶんはっきりと伝えて下さる方もいる。コーヒー一つをレジに持って来て、バーコードを読んで「ひゃく・・・「あの、アメリカンドックとフランクフルトとからあげください。」・・・彼は店の前でそれらをぺろりと平らげ、帰っていった。それこそ、その後の結果を気にした方がいいような気がするのだが・・・。

 

 

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