熱いんだバカヤロウ

  うちの店は、レンジに引き続きおでんもセルフサービスである。レンジもおでんも客にやらせるなんて、なんて不親切なコンビニなんだ!と思われる方もいらっしゃるかもしれないが、一度昼ラッシュ時にうちの店で働いてみれば、その理由も理解していただけると思う。何しろレジカウンターの前に人垣ができてしまうくらいなのだ。心なしかレジ付近が暗くなる気がすることもなきにしもあらずである。

  さて、おでんを買う客は、おでん鍋から自分の好きなおでんをおでん容器に入れてレジまで持ってくる。レジで買ったおでんを確認し、容器にふたをする、というシステムである。おでんが欲しい客の中には、おでんがセルフであることを知らずに、レジに来て注文する者がいる。そういう客には丁寧におでんがセルフである由を伝える。また、自分でおでんを取ったはいいが、ふたがないのを不安に感じるのか、ふたのありかを聞いてくる者もいる。ある時など、ご丁寧にももう一つの容器をひっくり返してかぶせてレジまで持ってきた客もいる。おでんはセルフサービスです。ふたやからしなどはレジでお付けします。という張り紙があるにもかかわらず・・・。

  客が張り紙の注意をいちいち読んだりしない、ということは周知のことである。だからこれくらいのことにいちいち腹を立てることはない。しかし、おでんを買っていく客のとある行為には、一言言いたいことがある。

  おでん鍋の横には、トングやおたまなどおでんを取る用具が用意してある。おでんを買う客は、これらを使って自分の欲しいものを鍋から取り上げるわけだが、それらが店のもの、他の客も使う公共のものであるということを忘れている者がいる。忘れているならまだいい、まるで自分のもののように扱う、つまり公共のものだと意識していない者がいる。たいていの客は、おでんを取り終えたら、自分が使った道具は元の場所に戻す。鍋の横に小さな金属の箱が付いており、これがトングやおたまを入れておく所だというのは一目瞭然である。なによりおでんを取る時、自分でそこから道具を取り出したのだから、それを忘れるバカはそうそういないはずである。

  ところが、客足が途絶え、閑散とした店内をぐるぐると見回ってみると、おでん鍋の中に入れっぱなしにされたトングやおたまを発見することがある。そう言えばさっきおでんを買っていったやたら高圧的なオヤジがいたな・・・などと思い当たるふしがある時ならば、すぐにそれを取り出すことができるが、たくさんの客からようやく解放された、そんな時に見つけた場合は、おでんを買っていった客の特定もできず、店の醜態を長時間さらしていたことになる。しかも長時間おでんだしにつかっていたトングやおたまは、金属の熱伝導で温まっており、取り出そうと触った時にびっくりすることがある。オマエ等はトングやおたまなども、煮込めば食べられるとでも思っているのか!?

  使ったものは元の場所に!来た時よりも美しく!こんなことは小学校、下手をすれば幼稚園で学ぶことである。コンビニでおでんを買っていくいい大人には、こんな事すらできない者もいるのだ。それとも何か?おでんがセルフであるという店のシステムに対するささやかな抵抗のつもりなのか?そんな奴等は、うちの店に来る資格などない!店に入ったら店のルールに従え!!

(2000.3.31)

 

 

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