客の仕事

  コンビニは色々な物を売っているところである。だからもちろんそれを買いに来る人がいる。買いに来る人は、客と呼ばれ、彼らは目的の物をを買いに来るだけの用事でコンビニにやって来る。しかし、店員の仕事は、客に物を売ることだけではない。

  店に商品が搬入される。店員はもちろんこれらを陳列棚に並べなければならない。店員が商品を並べている間、カウンターは無人となることが多い。しかし、それでも客は物を買いに来る。客にとってコンビニは買い物をするところなので、これは当然のことである。だから店員は、客がレジカウンターに会計に行こうとしているのを見つけたら、すかさずカウンターに向かわなければならない。時には客の行こうとしている様子を見逃してしまうこともあるが、カウンターで会計を待つ客の姿を見つけたら、急いでレジに向かう。店員は、陳列している間も店内の客の動きや、カウンターの様子に気を配るのに余念がない。だからと言って、陳列をいい加減にやるわけにもいかない。

  店内に商品を物色する客が2、3人いる時、商品が搬入されて来た。私は店の様子を見回し、会計に急ぐ客がいそうもなかったので、さっそく陳列作業を行うことにした。陳列を始めてしばらくした頃、嫌な予感がしてカウンターの方に目をやると、いるのだ。私は慌ててレジカウンターに戻り、「すみません」と一声かけて客が持って来た商品のバーコードを読む。ありがとうございましたの後、陳列作業に戻ると、まだ棚に並べていない商品を見ている客がいる。「ここから取ってもいいですか?」の問いに、どうぞと答えて陳列作業を続ける。陳列前のおにぎりを手に、客は黙ってその場を去った。まだ買う物があるのだろうと、私は陳列作業を続ける。が、嫌な予感がしてカウンターの方に目をやると、いるのだ、さっきの客が。

  ここで言わせてもらうが、オマエ等はなぜ黙ってカウンターに立っているのだ!?特に後者!おにぎりを手にした時点で、会計を済ませようと思っていたのなら、なぜカウンターに行く前に、その時目の前にいた店員の私に、一声かけないのだ!?まさか全員で陳列作業をしているとは思わず、カウンターに行けば誰かいると思ったのか?だとしても、カウンターに誰もいなかったら「すみません」なり「お願いします」なり、一言言ったらどうだ?オマエ等には口がないのか!?それともそこにはただ、物を食べたり息をしたりするだけの穴が空いているだけなのか!?

  確かにコンビニは買い物をするところである。客が物を買ってくれなければ、成り立たない。しかし、だからといって客は黙って待っているだけでいいと思っているのか?店員の仕事はレジだけではないのだ。時にはカウンターを空けることもある。そんな時に会計を求める客は、自分のその意志を店員に伝えて然るべきである。他の仕事をしているからとは言え、店員にとって、レジだって立派な仕事であるのだから、客のその一言を無下にするはずがない。一言言ってくれれば、オマエの望みは難なく叶えられるのである。

  この様な現象は、なにも商品陳列時だけに起こることではない。普段は余り使っていない方のカウンターにある、中華まんのスチーマーの辺りで仕事をしていると、メインのカウンターの方から突然「マイルドセブン」という声が聞こえてくる。これにはびっくりする。慌ててそちらのカウンターに行ってみると、その客のほかの買い物までもが、しっかり置かれていたりする。「マイルドセブン」という言葉に、「すみません」なり「お願いします」なりの意味が含まれていたとは、初耳である。

  どうも分かっていない人間が多いようなので言わせてもらうが、店員だって人間だ!たとえ仕事といえど、気づかないことだってある。繰り返すが店員の仕事はレジだけではないのだ。会計をしようとするカウンターに店員がいなかったら、ふさわしい言葉を一言かけろ!オマエだって神様や王様であるはずがないのだから、そのくらいの仕事をしたって良かろう。

 

 

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