携帯電話のマナー

  午後7時から8時頃、店内には会社帰りのサラリーマンやOLの姿が目立つようになる。週刊誌の発売日ともなると、立ち読みをするのが彼らの心のやすらぎなのかと思えるほどである。 するとどこからともなく、ピリリ、ピリリ・・・ 携帯電話の呼び出し音が鳴り響く。立ち読みをしていた一人の女性が、鞄をごそごそして「もしもし・・・」 言いながら外へ出て行く。 「それなりのマナーは備わっているようだ。」と思う間もなくカウンターの前に中年男性が立つ。手には携帯電話。

「そうそう、うんだからさ・・・ エクストラライト。え?うん、うん・・・」     どうやらタバコが欲しいらしい。こちらはマイルドセブンのエクストラライトなのかパーラメントのエクストラライトなのか分からないふりをして、聞き返したいが聞けないという状況を演じてみる。しかし、効果無し。だからわざとマイナーなタバコを出してみる。 彼は何も言わず出ていった・・・。え?わざとやったつもりが、それでよかったの?マナーを教えるための策略は無意味に終わってしまった。

  このように携帯電話を持ちながらの客は、少々扱いづらい。会話の妨げになるのでは・・・とこちらの礼儀としてのあいさつも遠慮がちになってしまう。するといつもの流れでいかないわけだから、なんだか気分が落ち着かない。だいたいなんで話しながらレジにやって来るのだ?「そうそう、だからさ・・・え?うん」の中には急がなければならないという意識はかけらも見当たらない。なぜ話が終わるまで待てないのだ?それとも何か、俺は携帯電話を持ってるぜ、ってなことを自慢したいのか?ふざけるな、携帯電話なら私だって持ってるぞ。そう言って私が携帯で話しながらオマエの相手をしたら、オマエは間違いなく文句を言ってくるだろう。いや、まぁこっちは仕事をしてるから、それはないとして、普通に話してる相手が、電話がかかってきたからって、オマエの目の前で携帯で話しをしながら、オマエとの話しもしていたら「それはないだろう!?」と思わないか?

  しかし、みんながみんな話ながらレジに来るのではない。中にはレジに来たときに電話が鳴ってしまう、という客もいる。そういう客も、そのまま話しはじめてしまう者と、「今コンビニにいるから後でかけなおす。」と言って切る者もいる。そして、「後でかけ直す」という客は圧倒的に若者の方が多い。店内で大声で話すのも、話しながらタバコを注文するのも、中年男性が目立つ。常識やマナー云々といったことは年配の人の方が長けていると思っていたが、どうやら一概にそうとは言えないらしい。やはりオジサン世代が最新機器についていくのは大変なのだろう。しかし、そういう意識があるからこそ、携帯電話を持ったオジサン世代は「俺は携帯電話を持ってるし、ちゃんと使えるのだ。」という自慢をしたくなってしまうのだろう。

  携帯電話を持つオジサン世代の方々、あなたがそれを使えるのはよく分かりました。ですから今度は電話が鳴ったら外まで出なくても、立ち止まったり店の隅の方に行って話している人を見て、マナーを含めた携帯を使いこなすことを覚えてください。話しながら「エクストラライト」とさらっと言っている(つもり)のははっきり言ってカッコ悪いです。

 

 

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