鍵ーThe Keyー

予報以上に
ぽかぽかしている
こんな日が
私は好きだ

予想以上に
どきどきしている
こんな恋が
私は好きだ

 

 

「紅茶」

時にはストレートの喜びに
宝石のような色だと
温かく酔いしれる

時にはミルクの不安に
底が見えないけれど
甘く甘く混ざり合う

時にはレモンの純情に
透き通るけれど
ちょっぴりすっぱい痛みを知る

時にはハチミツの誘惑に
好奇心と後悔の中で
黒く黒く焦ってみたり

時にはブランデーの嫉妬に
香り高く
大人を気取って強がってみたり

時にはジャムの馴れ合いに
扱い方も分からず
外国人みたいに寒さをしのぐ

そんな紅茶みたいな
恋がしたいんだ

そんな紅茶みたいな
恋をしていたいんだ

 

 

「おかまいなしに」

ねぇ君のことが好きだよ
この上もなくね

ねぇこれから一生
そう思っていていいかな

 

 

「ピッキング」

あっという間に
私の心の鍵を開けたくせに
何も盗らずに
ただ
片思いという足枷の
鍵を奪った

それを使うのに
どうしててこずるの

 

 

雨は君 君は雨
リップクリームを忘れた唇を
やさしく潤すのは
春の霧雨
雨だれのキス

雨は君 君は雨
からからの砂ぼこり舞う胸を
にわかに宥めるのは
夏の夕立
雷の刺激と虹の抱擁

雨は君 君は雨
夜を持て余す体を
激しく包むのは
秋の長雨
雨音の子守歌

雨は君 君は雨
熱く熱く燃え立つ心を
いちめん覆い冷すのは
冬の雪
純白の愛撫

雨は君 君は雨
やがて止むだろうなんて
考えてしまうのは
あんまり悲しくて
差しもしない傘を
持って出かけた

 

 

手と手をつなぎ合わせて
目と目と見つめ合わせて
頬と頬を寄せ合えば
くちづけは自然に始まるはず

手と手をつなぎ合わせて
目と目を見つめ合わせて
頬と頬を寄せ合うことは
愛し合わなければ始まらないこと

愛し合わなければ

 

 

「先端と傷口」

尖った先端が
私の皮膚を切りつける
傷口は赤く
痛みはやがて
快楽に変わる
ねぇそれは
何かに似ていると思わない?

 

 

「俺はユダヤ人」

食う食うニシン食う
俺はユダヤ人
放浪の旅に出る
食う食うニシン食う
俺はユダヤ人
迫害の憂き目に遭う
食う食うニシン食う
俺はユダヤ人
確固たる信仰を持つ

縫う縫うミシン縫う
君はおんなのこ
恋愛の旅に出る
縫う縫うミシン縫う
君はおんなのこ
失恋の憂き目に遭う
縫う縫うミシン縫う
君はおんなのこ
確固たる理想を持つ

食う食うニシン食う
俺はユダヤ人
縫う縫うミシン縫う
君はおんなのこ
旅の途中できっと出会う
食う食うニシン食う
俺はユダヤ人
縫う縫うミシン縫う
君はおんなのこ
憂いはきっと分け合える
食う食うニシン食う
俺はユダヤ人
縫う縫うミシン縫う
君はおんなのこ
信仰と理想はきっと重なり合う
食う食うニシン食う
俺はユダヤ人
縫う縫うミシン縫う
君はおんなのこ
確固たる
信仰と理想の下で
恋に落ちるのに
そんなに時間はかからないはずさ

 

 

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