大いなる出会いと別れ

人はのろしを上げる
ちっぽけで細い細い
のろしだけれど
神様に自分の居場所を
知ってもらうために
人はのろしを上げる
ちっぽけで細い細い
のろしだから
神様に自分の居場所を
なるべく分かりやすく知らせるために
ハッカのにおいをさせてみたり
まあるい輪っかの煙を上げてみたり
とにかく個性的なことをしてみせる
人はのろしを上げる
神様に自分の存在を
知ってもらうために
自らの命を少しずつささげながら
ちっぽけで細い細い
のろしを上げつづける

 

 

「直線と曲線」

直線は人工的
曲線は自然

自然が正確な直線を
作れない代わりに
人工的な曲線は
どうしたって自然にはかなわない
正確さは時に
どこか冷たい

山 川
風に揺れる木々の葉
足元に転がるドングリ
不規則に切り取られた空に
ぽっかりと浮かぶ雲

曲線だけで作られた風景の
なんと美しいことか

人間は
その全てが曲線でできているくせに
どうしてあんなにも
直線の美しさを求めるのか

確かに
摩天楼は美しいが
それは
まあるい空の下にあってこそだ

大昔に作られた
神々の姿はみな
曲線をまとい
力強さをも優美さをも備えている

昔から分かりきっていることを
忘れゆく人々へ

忘れてはならない
人間も
大いなる曲線
自然の産物に
他ならないのだということを

 

 

写真を切るのは苦手です
あなたが
傷ついてしまうのではないかと
不安になるから

 

 

「大好物」

「僕たちは水と油だ」
なんて別れの言葉は
通用しないわ
だってカレーには
水と油が必要だもの

 

 

私の前で立ち止まる
君の足音みたいに
止んだ雨音
ますます愛しい
この晴れ間

 

 

私の手が君に触れて
君の手が私に触れて
私の瞳が君を見つめて
君の瞳が私を見つめて

それでも恋にはまだ足りぬ

交わす言葉もまだ足りぬ
流す涙もまだ足りぬ
あふれる思いもまだ足りぬ
眠れぬ夜もまだ足りぬ

君の手が私に触れて
私の手が君に触れて
君の瞳が私を見つめて
私の瞳が君を見つめて

やがては恋も満ちるでしょう

 

 

夢を見ていた
夢の中で 私は
これが夢だと知っていて
目の前にいる君が
この後私を抱きしめてくれることさえ
知っていた のに
君の腕力が
君の弾力が
あんまりリアルで
耳元でささやかれる
君の声までもが
あんまりリアルで
夢の中で私は
それが夢だと知りながら
演技でもなんでもない動きで
すとん と
その場に
へたり込んで
君を驚かせてしまった

目覚めて 私は
この目覚めこそが
夢なのではないかと
疑ってしまう

 

 

すう と消えて
冷たい甘さ
舌に残して
もうとっくに
使い古されてしまった
この恋さえも
ぱちぱち と
初恋のように
胸に響かせる
ラムネよ

 

 

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