HIROSHIMA 2002
君の指先でもえる
その小さなほのお
使いみちをなくして
凍りついていた私の恋心
ぱりん
君の口元でひかる
その小さなほのお
使い方を忘れて
凍りついていた私の恋心
ぽたん
君の指先から
君の口元から
ゆるゆると昇る
むらさき色のけむり
レースのカーテンのように
君を
隠しては 見せ
隠しては 見せ
そのたびに
凍りついていた私の恋心
ぱりん
ぽたん
ぱりん
ぽたん
君の指先の
その小さなほのお
君の口元の
むらさき色のけむり
君と私の間の
ささやかなる障害物
そのつつましさに
その美しさに
凍りついていた私の恋心
ぱりん
ぽたん
ぱりん
ぽたん
その鋭さに
その冷たさに
今はっきりと気づく
手の届くところにいるのだから
今はっきりと言える
ねぇ 私
君が好きだよ
この上もなくね
君の口元で
ぽう と赤みを増す
その小さなほのお
君の指先で
くゆり となびく
むらさき色のけむり
君の指先
君の口元
そんなタバコのほのおみたいに
そんなタバコのけむりみたいに
私に触れて
そうして
凍りついていた私の恋心
その小さなほのおにとけだして
その小さなほのおにわきたって
ゆるゆると
うすべにいろのゆげ
むらさき色のけむりとともに
昇る
「ねがい」
何度雨に期待しただろう
雨の季節に生まれた君に
恋をした私
私の心を覆うこの気持ちは
まるで雲のようで
私の心にふりそそぐ君の言葉は
まるで雨のようで
私の心を貫くこの思いは
まるで雷のようで
私の心に輝く君の笑顔は
まるで虹のようで
何度雨に期待しただろう
雨の季節に生まれた君に
恋をした私
この雲の下で
この雨の中で
この雷の周りで
この虹の傍らで
アジサイが咲いている
まっすぐに雲を見つめ
従順に雨を受け
けなげに雷に耐え
朗らかに虹を迎えて
アジサイが咲いている
何度雨に期待しただろう
雨の季節に生まれた君に
恋をした私
この雨に打たれれば
アジサイになれると信じていた
そう それは
まっすぐに雲を見つめ
従順に雨を受け
けなげに雷に耐え
朗らかに虹を迎える
雨の伴侶
寂しさに満ちた青はやがて
恋の喜びを湛えた紅色に変わる
その時こそ 私
まっすぐに君を見つめ
従順に君の言葉を受け
けなげに君に耐え
朗らかに君の笑顔を迎えよう
何度雨に期待しただろう
雨の季節に生まれた君に
恋をした私
この雨に打たれて
アジサイになりたい
「HIROSHIMA 2002 A SHORT STORY」
ラーメン食べよう
サービスにゆでたまご2つ
殻をむいて
1つは君に
ああそうだ
きみはきれいな
「ありがとう」を言う人だった
なんで私
別れちゃったんだろう
「花とナイフ」
一瞬の
行列と雑踏
沈黙と喧騒
笑顔と涙
光と闇
静と動
右と左
前と後
上と下
はじめとおわり
記憶と記録
断片と連続
過去と未来
一瞬は
長く短く
広く狭く
強く弱く
鈍く鋭く
深く浅く
遠く近く
高く低く
白く黒く
青く赤く
熱く冷たく
速く遅く
ああ
その
一瞬で
音楽が生まれる
とらえようとして
とらえられるかもしれない
とらえられないかもしれない
とらえられなければ
とらえたとしたら
とらえたかのように
とらえたいのだ
とらえたいのだ
とらえたいのだ
その一瞬を
忙しい君だから
片思いの切なさなんて
知らなくていいよ
私が二人分味わうから
いつかちゃんと
幸せにしてね
君のふいごが必要なんです
この恋の火を保ち続けて
私を温めるために
君のふいごを君が吹いてくれることが
必要なんです
私が鳥になりたいと言ったら
君はコウモリになりたいと言うのだろう
君と私はまるっきり反対で
私にないものを持っている君に
私はますます惹かれてゆくけれど
君にないものを私は持っているかな
しぶき一つ上がらず
波紋すら起きない
水面に
懲りずに石を投げ続けるみたいな
恋をしている
雨の季節に生まれたと
うつむいてばかりの君を
花火の季節に生まれた私が
騒がしいくらいに励ますから
届け!
届け!
届け!
君に感謝しなければいけない
愛するということを私に
教えてくれた
君に感謝しなければいけない
君に愛されることを望む前に
君を憎んでしまう前に
ほしたふとんみたいに
君のぬくもりも
簡単に手に入ったら
いいのにな
「花とナイフ」
着飾ってください
そのポケットに
しのばせて
あのひとを
惑わせるほどに
本とメール
君はいつも
文字だけで
たくさんの
君の言葉が
私のもとに
あるけれど
君の言葉は
なにひとつ
私の耳には
はいらない
からっぽの
耳はいつも
君の言葉に
飢えている
君に
後悔さえさせることのできない
片思いよ
コンビニとレストランばかりの
君の食事
栄養バランスを心配する前に
他の女の影のないことに
安心している
その時が来たのだ
静かに
静かに
片思いの終わり
君を傷つけずに済んで
よかった