恋の集大成

「ねこ式恋愛の手引書」

音もなく
相手の心に入り込む
足を持つこと

先の見えない
暗闇も見すえる
目を持つこと

時には
相手を誘惑するような
声を持つこと

気に入らないことからは
さっさと逃げ出せる
強さを持つこと

 

 

君の言葉の
一つ一つが
あたしを射抜く

ハート型の矢尻は
傷口に鈍い痛みをもたらす

流れる血で
あたしの恋は
渇くことを知らない

 

 

「Fated Love」

君が触れるための
この曲線

君が受け入れるための
このふくらみ

君が入り込むための
このぬくもり

あたしは
君が男であること
それだけで
女として存在している

もしも君が
女として生まれてきたのなら

あたしは
男として存在しただろう

それはきっと決まっていたこと

この曲線に
君が触れて

このふくらみを
君が受け入れて

このぬくもりに
君が入り込んで

そうして二人は
恋に落ちる

 

 

君は夕立
私の燃える心を冷まし
私の渇いた心を潤す

君は夕立
私の心に雷を落とし
私の心を虹で慰める

君は夕立
いつかは私の心に
花を咲かせて

 

 

皆既月食
あたしは
軽い乱視
消える月
だぶる月
それでも
月も空も
あるべき
ところに
ちゃんと
あるのよ

 

 

「狂信者の懺悔」

そうです
そうです
眠りとともに
愛しい人の姿は消えて

猥褻な衝動が
あからさまに
あたしを誘惑する

それはあたしの
欲望じゃない
本能じゃない

そうです
そうです
目覚めとともに
愛しい人が戒める

猥褻な衝動は
あからさまでも
あたしを満たさない

それはあたしの
綺麗事じゃない
誤魔化しじゃない

衝動と欲情だけが先走る
あたしの淫らな深層は
夢にすぎない

愛しい人さえ現れずに
あたしを苦しめる
夢ならいらない

それはあたしの
欲望じゃない
本能じゃない
綺麗事じゃない
誤魔化しじゃない

だから
あなたを愛する
その事実だけで
あたしは生きてゆきます

 

 

「SWEETS」(四連作)

「ココア・シガレット」
甘いだけの恋なんていらない
ちょっぴり苦くて
ヤミツキになるやつをちょうだい

「オレンジジュース」
オレンジジュースを
飲まなくなって久しい
山ほどのsugarと
まやかしのcolorには
もううんざりなんだ

「カフェオレ」
君がコーヒーで
私がミルク
ブレンドよりは
カフェオレくらいの割合で、ね

「チョコレート」
君のチョコ
私のチョコ
溶けあって
固まって
ほろ苦く
甘く

 

 

 

「lovers sketch, ―北風と太陽」

北風が吹きつける
恋人たちは手をつなぐ
太陽が照りつける
恋人たちは笑顔を交す
北風が吹きつける
恋人たちは腕を組む
太陽が照りつける
恋人たちは言葉を交す
北風が吹きつける
恋人たちは肩を抱く
太陽が照りつける
恋人たちはくちづけを交す

勝負は
どっちつかずのまま

そして夜が
いとも簡単に
恋人たちの服を脱がせる

 

 

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