君に溺れる

「劣っているところ」

小さな虫ですら
その羽音で
自らの存在を知らしめる

 

 

「ステージと醜女」

飾り気のないステージでは
売り物の美が並ぶ
ミーハー男にちやほやされて
得意満面な愚かな女たちは
ステージの花さながら

美は
愚かさをも相殺する
美は
過ちをも埋め合わせる
美は
望みをかなえるアールマイティな鍵だ

華やぐステージを尻目に
私は席を立つ
やっぱり君も綺麗な女が好きだとか
言い出すのだろうなんて
ここにいる全ての人に毒される前に

愚かしく生きぬように
過ちを犯さぬように
望みをかなえる鍵も持たずに

生きてやろうじゃないかと
誰が聞くともない
捨てぜりふを残して

 

 

「おさそい」

日ごと夜ごと
その葉を脱ぎ捨てる
木々にならって
寒い夜には
僕たちも裸で
過ごそうじゃないか

冬にはまた
雪の衣装を着てしまうのだから



今じゃなきゃダメなんだ

 

 

愛する人よ
どうか教えて

君に抱きしめられたとき
この胸は
どんな思いで満ちるのか

この目は
どんな景色を見せるのか

この耳は
どんな鼓動を聞くのか

この鼻は
どんな香りに染まるのか

この口は
どんな吐息をもらすのか

とうに忘れた
この感覚

愛する人よ
どうか教えて

 

 

「Invisible Allow」

雲の上から
私を射抜く
見えない矢

ガラスのように
冷たくもろい

私を傷つけるだけで
ひとおもいに殺すことはしない

雲の上から
私を射抜く
見えない矢

それはいつも
突然現れる

傷口は乾くことなく
いっそのこと私の血さえ透き通ってしまえばいいのに

 

 

「月を背に」

あなたに背中を向けているのは
あなたを見ないためじゃない
あたしの行く先を
あなたにも見ていて欲しいから

あなたに背中を向けているのは
あなたから離れていくためじゃない
あたしの背中に
あなたもついてきて欲しいから

あなたに背中を向けるのは
あなたがやっぱり遠いから
それならせめて
いつまでもそのままでいて

 

 

「かくれんぼ」

百までも
千までも
数えて待ったのだから

今度は君が
私を見つけてよ

 

 

「Spider's supper」

ようこそ
か弱く美しい
あたしの食事

今からあなたを
あたしの一部にして
あげるわ

あなたの
姿形はそのままに
あなたのすべてを
吸いつくしてあげるわ

何も心配しなくていいのよ
あたしの姿を見れば
信じられるでしょ

あたしのこの
四つの目で
あなたを見つめ

あたしのこの
美しい足で
あなたを抱きよせ

あたしのこの
飢えた口を
あなたに寄せる

ようこそ
か弱く美しい
あたしの食事

今からあなたを
あたしの一部にして
あげるわ

あたしはただ
待ってただけよ

巧妙なあたしの罠に
魅せられた
あなたの負けだわ

 

 

「傘を差す」

幼い頃に夢見た未来は
いつしか過去になっていた

それでも世界は
雨の降る季節を繰り返している

君も確実に
年を重ねている

傘を差して
顔を隠して

私が夢見ている未来も
いつしか過去になるのなら

やっぱり世界が
繰り返している雨の季節に

君と一緒に
年を重ねていきたい

同じ傘の下
顔を見つめて

 

あなたという空から
集中豪雨をくらって
私の中は大洪水
箱舟なんかいらないわ
このまま溺れていたいから

 

 

ねぇ
恋は盲目 だなんて言うけれど

ねぇ
私 世界がこんなに綺麗に見えたの

ねぇ
生まれて初めてよ

 

 

「冬の部屋」

結露のひどい
この部屋で
私は君に
抱かれたい

結露のひどい
この部屋で
私の体も
びしょ濡れだから

 

 

数え切れないくらい
いろんな言葉を使ってきたけれど
伝えたいのは一つだけ

好きよ
好きよ
好きよ

数え切れないくらい
いろんな言葉でも
足りないほどの

好きよ
好きよ
好きよ

今までも
これからも
数え切れないくらい
いろんな言葉で

好きよ
好きよ
好きよ

 

 

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