「惚れた弱み」(シンデレラその後)

 

ガラスの靴を持ったお城からの使いが、町中を探し回り、ようやく一人の女性を見つけた。みすぼらしい恰好をしているが、その顔はまさしく舞踏会の夜に王子が見初めたものである。

「あなたこそ、僕の花嫁にふさわしい方だ。どうか僕と結婚してください。」

それから、ほんの少し年月が経った。

 

「なんだか思っていたのと違うわ。」

台所から料理を運んできたシンデレラは、テレビを見ながらタバコを吹かしている王子に向かって言った。

「君がそんなことを言うとは思わなかったな。」

「別にこうやって家事をするのが嫌だって言ってるんじゃないのよ。お城での生活って・・・

「もっと楽かと思っていたかい?」

「・・・そうね、たくさんの召使がいて、何もかもみんなやってくれるんじゃないかって思っていたわ。」

「僕のために働くのは嫌かい?」

「いいえ、それは全然。好きでやってることもあるんだし、あなたはあたしのすることに文句を言わないから、あの継母や姉たちと一緒だった頃よりはずっといい生活だわ。」

「それだよ、それ。僕は君のそういうところがずっと好きだったんだ。」

「あたしのことずっと前から知っているような口調ね。」

「それはそうさ。父さんが国を治めていた頃からずっと知ってたよ。」

「どういうこと?」

「まぁまぁ、国がこんなに貧しくなってしまったことは申し訳ないと思うよ。君にも国民にも。だけど、こうなることは分かっていたんだ。だってそうだろう?この僕に国を治める力なんてあるはずがないじゃないか。父さんが国を治めているときから、それが気がかりだったんだ。僕は花嫁にふさわしい女性を早くから探しておく必要があったのさ。結婚するなら逆境に強くて家事のできる女性に限るってね。だから、君にはなんとしても舞踏会に来て欲しかったんだ。あぁ、魔法使いを雇ってまで君を舞踏会に誘った甲斐があったよ。」

「そうだったの・・・。あたしのことそんな風に見ていてくれたなんて嬉しいわ。さぁさぁ、冷めないうちに早く食べて。」

貧しいながらも幸せな食卓を、今日も二人は囲んでいる。

 

 

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