図書館日記 > 一般 > ミステリー(アガサ・クリスティー)

◆◇◆ アガサ・クリスティー ◆◇◆
1920〜1930年代の長編作品(発表順に掲載)

スタイルズ荘の怪事件 THE MYSTERIOUS AFFAIR AT STYLES (1920)田村隆一訳 早川書房
 戦傷を癒そうと旧友の母の邸スタイルズ荘を訪れたヘイスティングズは、二十も年下の男と再婚したばかりの友人の母が毒殺されるという事件に巻き込まれた。困惑する頭に浮かんだのは友人ポアロの姿。名探偵ポアロが初登場、女史の記念すべき処女作です。やっぱりクリスティはミステリーの女王と呼ばれるにふさわしいですね。

秘密機関 THE SECRET ADVERSARY (1922)田村隆一訳 早川書房
 青年冒険家商会をつくりお金を儲けよう−久しぶりに再会した幼なじみのトミーとタペンスがこう語り合った直後、冒険は始まった。英国の極秘条約文書を預かって消息を絶った女性をめぐって、幼なじみカップルが大活躍を演じるスパイ小説。クリスティーのスパイ小説はどんどん読み進めてしまう面白さです。

ゴルフ場殺人事件 THE MURDER ON THE LINKS (1922)蕗沢忠枝訳 新潮文庫
 大富豪からの助けを求める手紙を受け取ったポアロが現地へ赴くと、すでに手紙の主は殺されていた。夫人によれば、前夜覆面の男達に連れ出されたという。凶器は息子が造らせたペーパーナイフと判明したが、何者かに盗みだされさらに同じ凶器で殺された刺殺死体が発見された。ポアロとパリ警察の若い新鋭「人間猟犬」ジローの対決が見物です。

茶色の服の男 THE MAN IN THE BROWN SUIT (1922)桑原千恵子訳 早川書房
 高名だが赤貧な考古学者の娘アンは、父が亡くなり天涯孤独の身になると、これまで我慢してきた冒険とロマンスへの強い憧れをおさえきれず一人ロンドンに出た。それにも退屈しはじめたアンの目前で、一人の男性が何かに驚きプラットホームに落ちて死んでしまう。その時、医者のふりをした男性の落とした紙片を拾ったアンは、その紙に書かれた謎を解こうとスパイ団の争いに巻き込まれていく...。とってもロマンチックなお話でございました、ハイ。しっかし古い訳本(S.51)は読みにくいですねぇ。“兎も角”って初めて見たよ(^^;;

チムニーズ荘の秘密 THE SECRET OF CHIMNEYS (1925)厚木淳訳 東京創元社
 まずはタイトルに魅かれて選んだ作品。チムニーズ荘はイギリス屈指の大邸宅。冒険好きの青年アンソニーが大活躍し、意表をつくどんでん返しのハッピーエンド。登場人物が多くて、つい何度も一覧を見てしまうが、長編にもかかわらず一気に読んでしまった作品。

アクロイド殺し THE MURDER OF ROGER ACKROYD (1926)田村隆一訳 早川書房
 村の医師、シェパードが残した手記の形で綴られるこの作品は、名探偵エルキュール・ポワロが活躍。このトリックに関して、フェアかアンフェアか論争を巻き起こした名作です。私は、もちろんフェアだと思います!とにかくすばらしい作品です。

ビッグ4 THE BIG FOUR (1927)田村隆一訳 早川書房
 ポアロの家に突然倒れ込んできた英国情報部員は口もきけず上の空で“4”を書くばかり。世界制覇を企む謎の国際犯罪組織<ビッグ4>とポアロとの対決は、こうして始まった。次々に先手をうって証人が抹殺され、正体を現さない謎の4人。謎解きと冒険に満ち溢れた作品で、初期の意欲作でもあり大変面白かったです。

青列車の秘密 THE MYSTERY OF THE BLUE TRAIN (1928)田村隆一訳 早川書房
 青列車で大富豪の令嬢が絞殺されたうえ顔面を殴られ、高価なルビーを盗まれた。たまたま列車に乗りあわせていたポアロが警察の依頼を受け捜査に乗り出す。列車の中で令嬢と偶然知りあった魅力的な女遺産相続人が、更なる偶然によって次々と「殺人劇」の深みにはまっていく様に、最後まで一気に読めてしまう作品です。

七つの時計 THE SEVEN DIALS MYSTERY (1929)深町真理子訳 早川書房
 クリスティー初期の冒険ミステリの一つで『チムニーズ荘の秘密』の続編にあたる作品。鉄鋼王の招きでチムニーズ館に滞在していた四人の青年のうち、一番のろまなジェリーが睡眠薬の飲み過ぎで死んだ。現場に並べられた七つの目覚まし時計はどういう意味なのか?謎のセブンダイヤルズクラブとこの事件の関連は?館主の娘バンドルが大活躍。登場人物が多いのと、名前が一致しない(呼名が色々)のがツライところ。

牧師館の殺人 THE MURDER AT THE VICARAGE (1930)田村隆一訳 早川書房
 ミス・マープル長編初登場の作品。閑静な村セント・メアリ・ミードにある牧師館の書斎で、村の判事が射殺死体で発見された。やがて犯人と目される画家が自首したことから事件は簡単に解決すると思われたが、遺留品やアリバイから新事実が発見され事件は混乱していく。詮索好きでおしゃべりな老嬢ミス・マープルが持ち前の深い洞察力と鋭い観察力で事件の真相に迫る。マープルって最初は嫌われ婆さんだったのね…。

シタフォードの秘密 THE SITTAFORD MYSTERY (1931)田村隆一訳 早川書房
 雪に覆われ、下界と遮断されたシタフォード山荘で行われた降霊会。そこに現れた霊魂は、山荘の持ち主であり現在はふもとの村に住む老大佐が殺されたと告げた。果たして同時刻に大佐は死体となって発見される。容疑者として逮捕されたのは大佐の孫、そして無実のフィアンセを救うために若い女性エミリーが探偵役となって大活躍する。女史の作品には活動的で行動力溢れる若い女性が度々登場しますね。

邪悪の家 PERIL AT END HOUSE (1932)田村隆一訳 早川書房
 古い屋敷の若い女主人で財産もないニックがなぜ何度も命を狙われるのか?そのうち身代わりのようにニックの従妹が射殺されてしまった。何重にも重なった謎、名探偵ポアロまでも愚弄させた犯人に驚くべき結末。やっぱり女は怖い?

エッジウェア卿の死 LORD EDGWARE DISE (1933)福島正実訳 早川書房
 女優ジェーン・ウィルキンソン、現エッジウェア男爵夫人がポアロに離婚の説得をして欲しいと依頼を持ち込んだ。数日後、当の男爵が殺されてしまう。処刑された犯人からの手記で終わるこの作品、お正月にTVで映画放送してたのよね...見逃してしまったのが残念〜。

オリエント急行の殺人 MURDER ON THE ORIENT EXPRESS (1934)中村能三訳 早川書房
 「至急カエレ」との電報で、ポアロがやむなく飛び乗ったオリエント急行は厳寒の季節にも拘わらず、いつになく混雑していた。途中、雪の為に立ち往生した列車の客室で、満身に十二カ所もの刺し傷をうけて一人の米国人が死んでいた。映画化もされた大変有名な作品。大胆なトリックと結末の意外性が話題になりました。

なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか? WHY DIDN'T THEY ASK EVANS? (1934)田村隆一訳 早川書房
 「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」崖から転落した男はこう言って息を引き取り、事件は事故と断定された。ところが数日後、発見者のボビイが何者かに大量のモルヒネを盛られる事件が起こる。その言葉にはどんな意味があるのか?幼なじみの伯爵令嬢と二人で探偵稼業を始めた。女史の描く冒険推理はとにかく大変面白い!

三幕の殺人 THREE ACT TRAGEDY (1935)田村隆一訳 早川書房
 引退した俳優がパーティーをひらき、そこにはポアロも招かれており、その場で牧師がカクテルを飲んで死んでしまう。数ヶ月後に今度は俳優の友人の医師が、自宅のパーティーでポートワインを飲んで死んでしまう。出席者も死の状況も全く同じ。二つの死に隠された関係は?とんでもない結末が待ってます。

雲をつかむ死 DEATH IN THE CLOUDS (1935)加島祥造訳 早川書房
 ロンドンへ向かう定期便がパリを発った。乗客にはポアロの姿も見える。英仏海峡にさしかかったとき、突如機内に黄蜂が飛び回り始め乗客の一人がそれを殺すが、すでに後部座席の婦人が首を刺され死んでいた。しかし、その刺し傷は蜂に見せかけた吹き矢によるものと分かり…。旅客機という完全な密室で起こった異様な事件に居合わせたポアロが調査を開始する。人間関係の絡み具合が何とも言えず、さすが、です。

ABC殺人事件 THE ABC MURDERS (1935)堀田善衛訳 東京創元社
 ポアロのもとにABCと名乗る奇妙な犯人から、殺人を予告する挑戦状が届けられた。やがて予告通り、頭文字にAのつく人物がAのつく場所で、続いてBのつく人物がBのつく場所で殺害され、被害者の傍らには必ず「ABC鉄道案内」が置いてあった。犯人の目的は?女史の代表作としても名高いこの作品、最後まで一気に読んでしまいました。

メソポタミヤの殺人 MURDER IN MESOPOTAMIA (1936)高橋豊訳 早川書房
 妻の恐怖症を心配した考古学者レイドナー博士の依頼で、レザラン看護婦はメソポタミアの遺跡調査隊宿舎にやってきた。夫人は死んだはずの前夫からの脅迫状に脅えていた事がわかり、ついに死を予告する手紙が届き殺人が起こる。ポアロの灰色の脳細胞と聡明な看護婦が活躍する。短編「ポアロ登場」ではエジプト旅行をしたポアロは愚痴ばかり言っていたが、この作品では全くそんなそぶりを見せない。クリスティーが考古学者の夫と再婚し、砂漠のキャンプで執筆するようになって中近東に対する想いの変貌がうかがえる作品です。

ひらいたトランプ CARDS ON THE TABLE (1936)加島祥造訳 早川書房
 “殺人に成功した犯人のコレクションをお見せしましょう”殺人の前歴のある人間ばかりをあつめたパーティーを催すと、シャイタナ氏に招待されたポアロ。不気味なパーティーは何事もなく進むが、客たちがブリッジに熱中している最中に、シャイタナ氏が皆のいる客間で刺殺された。ポアロはブリッジの点数表から殺人者の心理を読み、真犯人を推理していく。次々に明かされる過去の犯罪、そして新たな殺人。とても面白い作品でした。ブリッジ(トランプゲーム)の解説が最後に載っていたけれど、このゲームを良く理解しているともっとこの作品が楽しめたと思います。

もの言えぬ証人 DUMB WITNESS (1937)加島祥造訳 早川書房
 富豪の老嬢が死んで、巨額の遺産全部が一介の家政婦に贈られた。彼女の死から2ヶ月程たったある日、一通の手紙がポアロのもとに届けられる。そこには自分がやがて殺されることを予感するような内容が。興味をいだいたポアロは調査に乗り出すが、関係者は虚偽の証言しかしない。所々に登場する白いテリアの“心の声”が面白いです。

ナイルに死す DEATH ON THE NILE (1937)加島祥造訳 早川書房
 ナイル河を航行する船内で、新婚旅行中の美しい金持ちの若妻が何者かに頭を撃たれて死んでいるのが発見された。犯人は、彼女に恋人を横取りされた女性かと思われたが、アリバイがある。乗りあわせたポアロが船内の客に話しを聞いていくうちに、何人もの人に殺人の動機があることがわかった。そして、目撃者が1人、また1人と殺害されていく。女史自身、この作品を“外国旅行物”の中で最も良い作品の一つと考えており、“読者はこの作品でひとときを犯罪の世界に逃れるばかりでなく、南国の陽射しとナイルの青い水の国に逃れてもいただける”と勧めています。

死との約束 APPOINTMENT WITH DEATH (1938)高橋豊訳 早川書房
 エルサレムを訪れたポアロは“彼女を殺してしまわなければ...”という会話を耳にしてしまう。そして当地を訪れていた金持ちの夫人が死体となって発見された。母親に脅え従うことしか出来なかった子供たちの誰もが殺人の動機を持っている。ポアロが事件の真実を解き明かす。

ポアロのクリスマス HERCULE POIROT'S CHRISTMAS (1938)村上啓夫訳 早川書房
 一族が再会した富豪の屋敷で、偏屈な主人が血まみれの死体で発見された。集まった家族達はそれぞれに秘密をかかえていた。犯人は家族の中にいるのか?ポアロは事件の鍵は被害者の性格にあると推論する。この作品はクリスティーが義兄のために「思いきり兇暴な殺人」を描いたと言っています。“クリスマスにクリスティーを”というキャッチフレーズが似合います。

殺人は容易だ MURDER IS EASY (1939)高橋豊訳 早川書房
 植民地帰りの元警官ルークは、列車内で同席した老婦人から彼女の住む村で密かに連続殺人が行われている、という奇妙な話を聞いた。彼女はその犯人を知っていてこれから警察庁に訴えに行くというのだ。翌日、ルークは新聞でその老婦人が車にひき殺された事を知る。犯人探しに現地に向かったルークの前に新たな犠牲者が...。女史特有のどんでん返し、最後まで気が抜けません。

そして誰もいなくなった TEN LITTLE NIGGERS (1939)清水俊二訳 早川書房
 舞台や映画化されたとても有名な作品。マザー・グースの唄の通りに殺人が行われていき、最後には登場人物全員が死んでしまう。過去にも読んだ作品だが、再度読んで思ったことは『名探偵コナン』や『金田一少年の事件簿』がこれとよく似た謎解きを使ってたな、ってこと(笑)【先日映画版をTVで観た。タイトルは「サファリ殺人事件」舞台とラストが違っていた...】


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