G-XTH日記・5月

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【最初に】
 この日記は、チームムラマサこと、株式会社エクスペリエンスの新作RPG「Generation XTH(略称・G-XTH)」のプレイ日記です。
 プレイのペースは相当遅いですが(1日の時点で既にクリアしてる方もいるとか)、ストーリーその他に関してネタバレ上等で一切考慮しておりませんので、これからプレイしてみようかなぁって方は閲覧注意なのです。
 日記形式ですので、最新の記事が一番上に来て、古い記事は下へ追いやられていきます。
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 キャラクター作成までのプレストーリーはこちらから→プレスト1 プレスト2 プレスト3
 キャラクター紹介編はこちらから→ジオと愉快な仲間たち

 

5月18日 11人目と12人目

ドガァ!!

 銃器師団の部室に、すさまじい音が響いた。
 一斉に音がした方向に目を向ける隊員たち。ただ一人、ヴァイスだけが仮眠中でいびきをかいて寝ているが、まあ、それはいつものこと。
 部屋中が揺れるような重い音。どうやら、入り口のドアを蹴りつけている人間がいるらしい。今にも蹴破られそうなほど、ガンガンと衝撃音が聞こえてくる。なぜそんなことをするのか、4人には理解できない。ドアの鍵は開いているのだから。
「無粋な……いったい誰の仕業です?」
 スノーが顔をしかめる。ジオ、ティス、京の3人も同様だ。
「おい銃器師団、いるんだろ!? さっさと出てこいよ!」
 ガラの悪そうな女性の怒鳴り声が聞こえてきた。
 そして再び響く、ドアを蹴り上げる音。
 女性の声を聞いて、一同は嫌な予感がした。この声の主を、彼らは知っているのだ。
 そして、なぜドアをわざわざ足蹴にしているのかも理解した。これは彼女……いや、彼と呼ぶのがより正しいか……彼流のノックのつもりなのだ。
「いますよ。いますから、ちょっとドアを蹴るのは止めてくれませんかね?」
 呆れ顔のジオが応対する。ドアを開けた拍子に蹴り飛ばされてはかなわない。
 急いで、かつ、慎重に団長がドアを開けると、そこには二人の人影があった。
 一人は長身で緑の髪、しかしながら、その髪型はどう見ても俗に言うネコミミというやつだ。目つきも猫のようで、頬には呪術か何かを連想させるタトゥーが彫られている。ノック代わりにドアを蹴飛ばしていたのは、彼である。
 彼の名は、アセルス・グリューネンシュタイン。銃器師団同様、詳細な活動内容が不明な部活、通称・メサイアの団長である。外見や声色は間違いなく女性のそれだが、れっきとした男性である。粗野で傍若無人、一言で言えば不良的な性格として知られるが薔薇同盟ではネコ担当で、性向もなぜか善らしい(ぉ
 もう一人の人物は、短身であるもののがっしりした体型の白髪の男。ただ、その男が普通でないのはかぶっているジェイソンマスクから容易に推察できる。コーホーというロボ超人のような息遣いが、こちらまで聞こえてくる。
「アセルスさんとは珍しいですね。こんなところまで、一体どんなご用件で?」
 恐る恐るジオが尋ねる。アセルスがここに来る用など、ろくでもないことに違いないのだが、さりとて訊かないわけにもいかない。
 アセルスは開いたドアのふちに手をかけ、ジオにのしかからんばかりの勢いで詰め寄る。ナチュラルに他人を恫喝できるタイプだ。
「オモシロそうだから仲間に入れろ」
「……はい?」
 ぶっきらぼうにもほどがある。言いたいことは解からないでもないが、あまりに唐突過ぎて、間抜けな返事しかできなかった。
「エクスっつったか? それに俺たち二人を入れろ」
 おそらくこれもくれはさんの仕業だろう。彼女の奇抜な格好を目の当たりにして、情報を探っているうちにここにたどり着いた、と。ジオはそう直感する。というか、それ以外に情報が漏れる経路が存在しない。
 後ろのジェイソンマスクは意外にも深々と頭を下げた。外見の割には礼儀正しいようだ。
「ああ、紹介するのを忘れた。こいつの名前は……」
「ワタシハ、超人・エンボー。コンゴトモヨロシク」
「俺のツレだ。俺と同じく、頼りになると思うがな」
 アセルスが紹介しようとしたところで、マスクの男は自ら名乗った。なぜかメガテン風に。ジェイソンマスクに関して一切説明がないので、余計困惑しただけだが。顔の一部として受け入れてしまったほうがいいのかもしれない。
 気さくにも握手を求めてくるエンボー。スノーとティスがそれに応える。ジオと京も戸惑いはしたが、結局握手を交わした。

お二人さん近影

 エクスのことを知られた以上、彼らを仲間に引き入れるか、あるいはCPOの上層部に連絡して彼らの記憶を改ざんするかの二択しか銃器師団には残された道はないわけだが、サングラスの男は思案する。部外者はくれは一人だけでも手に余っているのに、こんな人間をエクスに入れて、リーダーとして彼らを御しえるかジオには自信がなかった。
 その様子を察した京が口を開いた。その口調には敵意のようなものが混じっている。
「私は反対です。どこでそんな情報を嗅ぎつけたかは知りませんが、お引取り願えませんかね?」
「おいおい、京耶。お前みたいな緑モヤシよりは幾分使えると思うがなぁ?」
 これに対して、ネコミミの男は緑髪の参謀を見下すような発言で挑発した。しかも本名を呼び捨てにして。
 どうやら、京とアセルスは旧知の仲のようだ。それもあまり良い関係とは言いがたい。
 一触即発といった様相で、二人の視線からは火花が散っている。
「どちらにしろ、あなたが最初に選ぶであろうブラッドコードは、どうせ昇竜でしょう? あいにくですが、昇竜は既に私一人で間に合っておりますので。侍も、緑の髪も、ひとつの部隊に二人も要りませんよ」
「知らんのか? このゲームの侍はネコミミと相場が決まってるんだよ。お前はさっさとアマテラスにでもコードチェンジしたらどうだ?」
 どちらも一歩も退かない。
 うん。まあ、プレイヤー側から言わせて貰えれば、エンフロート要員足らないから、チェンジしたほうが全体のためなんだけどね、京君。

 しかし、ジオが下した決断は意外なものだった。
「わかった、歓迎しよう。アセルスさん、エンボーさん」
「ちょ……団長!?」
 当然、悲鳴をあげる参謀。
 ジオの魂胆は見えている。アセルスの押さえ役を京に押し付けるつもりだ。
 メサイア団長というだけあって、彼の実力は銃器師団にも知れ渡っている。その彼が連れてきたのだから、エンボーと名乗るマスクマンも相当な使い手と見受けられる。わざわざ二人を追い返すのは惜しい。
「参謀とそれだけ言い合える仲ならば、無碍に断るのもよろしくないと思ってね。それに、問題なく前衛に出せる侍が欲しいと思っていたところなんだ。……別に参謀を軽んじたわけじゃないよ」
「はっはっは! なかなか物分りがいいじゃないか、団長さん。知恵者気取りの緑もやしとは一味違うな」
 ここは何とかして団長の気を変えなければ……と、京は頭をフル回転させるが、良い案は浮かばない。そもそも魔法剣士、すなわち侍としての実力を比較すれば、アセルスを手放す理由など存在しないからだ。強硬姿勢を取っても、不利になるのはむしろ自分のほうになる可能性が高い。それこそ、アマテラスにでもコードチェンジしたらどうだ、などと言われることは間違いあるまい。
 京は黙って承諾するしかなかった。面倒なことになった、と頭を抱えるがどうにもならない。
「よろしくな、京耶。前衛の切り込み役は任せてくれや」
「こちらこそよろしくお願いします。まあ、あなたとパーティを組むつもりはありませんけれどね」
 精一杯気炎を吐くが、やはり力不足。これは何か裏で策を練らねば、と、心中穏やかではない京であった。

つづく

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5月16日 まあ、日輪学園だし

 銃器師団の部室には、大抵のものが揃っている。
 机やソファはもちろん、書棚に仮眠用のベッドにキッチンにクローゼット。広さも他の部活の部室に較べてはるかに大きい。新聞や雑誌なども取り寄せており、シャワー室があればここで暮らせますね、とは京の弁だ。無論、これは銃器師団がエクスに参加しているために得られた特権なのだが、既にCPO司令室に充分すぎる設備が整っているので、この部室の優遇は少々無駄に過ぎるといえよう。
 何故銃器師団だけがと疑問に思う他の部活の生徒もいるにはいるのだが、まあ、日輪学園だし、ということでみんな思考停止してしまっている。そもそも彼らが怖くて誰も近づかないので、どうでもいいのかもしれない。
 さて、そんな銃器師団の部室。
 一応メインで使っているのは、本来の銃器師団のメンバーである、ジオ、ティス、スノー、京、ヴァイスの5人だ。
 現在は休憩時間らしく、5人全員が部室内でくつろいでいる。
 ジオはソファに腰掛け、ティスが淹れたコーヒーを飲みつつ、新聞をじっくりと読んでいる。こういうときくらいはサングラスは外したほうがいい気がするのだが、彼は外さない。サングラスを外すくらいなら、彼は照明を明るくしてサングラスをかけた状態でも新聞を読みやすいようにする。電気代の無駄に他ならないが、まあ、日輪学園だし。
 団長という立場上、やはり彼が最も関心を寄せる新聞記事は異形に関することである。
 探偵・台みはる(うてなみはる)の件のように、情報は統制されて外には漏れないようになっているが、それでも異形の仕業と考えられる事件はニュースとして新聞に書かれる。エクスはXPDの裏の顔として存在を知られてはならないため、自分たちが関与したニュースが出てきはしないかと、いささか神経質ぎみにチェックするのが最近の日課となっている。コーヒーの消費量も増えるというものだ。
「すまない、副長。もう1杯頼めるかな?」
「私はお茶汲み係ではないんだがな?」
 空になったコーヒーカップをぷらぷらと振りながら、さも当然のようにコーヒーの追加を頼むジオに対し、不満を訴えるティス。どうやら、この男はここをドリンクバーつきのファミレスか何かと勘違いしているらしい。
 副長が団長を睨みつけると、彼は肩をすくめ、カップを置いてそのまま新聞のほうへ目を泳がせた。
「副長の淹れたコーヒーが飲みたいんだがな」
 ぽつりとつぶやく。
 ティスはこのテに弱い。陳腐すぎてかえって体が動いてしまうのだ。ティスも自覚しているし、ジオも解かって利用している。
「カフェインの摂りすぎはあまり良くないぞ、団長」
「はいはい」
 返事は一度でいい、と言おうとしたが、ティスはやめた。
「副長、私にも1杯頂けませんか?」
 微妙にあらたまった、緊張した声が響いた。
 眼鏡をかけた細身の男は床にべたりと座り、黙々と作業をしていた。
 床に無造作に広げられているのは……無数のナイフ。古今東西、いろいろな短刀類が転がっている。普通のハンティングナイフはもちろん、バイヨネットからカタール、ソードブレイカーからククリまで。一番脇にあるグラディウスなど、ビホルダーカードが3枚も刺さった値打ちものだ。
 これらの刀剣はコードライズされたアイテムではなく、全てスノーの私物だ。当然、銃刀法に完っ璧に抵触しているが、まあ、やっぱり日輪学園なので問題にならない。
 スノーは、このナイフたちを1本1本丁寧に手入れしている最中だった。彼はこういう刀剣類を集めてメンテナンスするのが趣味である。日がな一日、刀身の指紋や埃をふき取り、刃先を研ぎ続けても飽きない。だからジオから特殊な性癖とかいろいろ言われるのだが、本人は全く意に介さない。
「わかった。二人分まとめて入れればいいんだな」
 ティスもこの男が一度作業に没頭すると周りが見えなくなることは承知済みだし、彼の依頼ならば素直に聞いておきたいところなので、ため息をつきつつも戸棚からコーヒー豆の袋を取り出す。
「いや、ティスちゃん。二人と言わずに、人数分淹れてくれないかな?」
 へらへらとした声が、キッチンから聞こえてきた。声の主は、間違いなく緑の髪の優男だろう。
 無駄に仕事を増やす奴は、そろそろぶん殴ってやりたいところなのだが、キッチンから流れてくる甘い匂いをかいで得心がいった。
 京は小さいながらもケーキを焼いていたのだ。丁寧に生クリームを塗り、苺で飾り付けをしている最中だった。
「なんだ京さ、たまには役に立つんだな」
 料理が得意とは知っていたが、菓子作りまでこなすとは思っていなかった。自分が料理ベタなので、ティスは素直に彼を見直した。毒物の精製ならば自信があるのだが(ぁ もちろん、日輪学園なので毒物精製も余裕でした。
「たまには、は酷いなぁ。探索でもしっかりお役に立ってるつもりなんですけどね……よし、できた。団長とスノーさんを呼んできますね」
「ショックゾーン1発で戦闘不能になる奴が役に立てるとは思えないんだがな」
 京はニヤニヤといつもの笑みを浮かべるだけだ。
「ところで、仮眠ベッドでいびきをかいている、そこの大男を起こさなくていいのか? コーヒーも5杯用意したんだが」
「知ってます? 円形のものは5等分するよりも4等分するほうが簡単なんですよ」

つづく

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5月13日 紅のベニーと悪一文字の男

「とにかく、ああいう格好はさすがにまずいんですよ。校内の風紀に関わります。彼女が最近この部室に出入りしていることはこちらが確認済みですので、早急に何とかしてください!」
 銃器師団の部室に怒号が響いた。
 招かれざる客とでも言えばいいか。くれはがコードライズした状態で校内をうろついていることを生徒会関係者が目撃し、その格好が余りにも突拍子のないものだったため、生徒会長親衛隊の彼が直々に出張ってきた、というわけだ。
 生徒会長・ひろこ……じゃなかった、日々野規子の周囲を取り巻く親衛隊、通称・ドミニオンズの隊長を務める彼の名は、ニルム・クリムズ。赤い髪、赤い瞳、筋肉質で大柄な男だ。生徒会長親衛隊といえば聞こえはいいが、要するにただのファンクラブなのは言ってはいけないお約束。とはいえ、銃器師団も彼には一目を置く。紅のベニーの異名を持ち、ファフニールの返り血を浴びたその体は、まさしく不死身のジークフリードそのものという。また、バックに生徒会が控えている以上、彼相手に事を構えるのは得策とはいえない。
 ティスがコーヒーを淹れ、相対するジオとニルムに勧める。
 ジオは何も言わずにカップに角砂糖を2個放り込み、ニルムは礼はするもののカップに一瞥すら与えない。
「そうカッカしないでくれ、ニルムさん。私も正直困っているところなんですよ」
 ジオはくれはに対して、頭が上がらない。1年先輩ということもあるし、彼女がジオのことを坊や呼ばわりしていることも理由のひとつ。学術士のためだけに彼女を引き入れたのは間違いだったか、と、今更ながらに後悔し始めているのだ。学術士の似非サイバー装備が気に入っていたまでは良かったのだが、まさか常時コードライズし続けて、他人にまで迷惑をかけるとは予想していなかった。
 くれは相手に平気で会話できるのは、現状では先輩後輩とかどうでもよさそうなウェルトくらいなものなのだ。彼女を止められる人間が欲しい。
「そもそものところ、あの格好はいったいなんなんですか? 宙に浮いていたり、コスプレとしては少々大仰に過ぎるように見えますが」
 ジオはコーヒーに口をつけつつ、少しの間思考を巡らせた。京がそばにいれば意見を聞きたいところなのだが、あいにく、彼はうっかりショックゾーンに踏み込んで一撃で瀕死となって帰還、現在はICUで治療を受けているところだった。ってか、京のHPが前衛としてやばすぎることになっているわけだが、どうしてくれよう。
「ニルムさん、あなたを信頼の置ける人間と見込んでお話しましょう。どうせあの格好を見られては下手な言い訳はできませんしね。生徒会関係者を味方に引き入れてしまったほうが、後々動きやすくなるかもしれない」
ソレカラドシタ
 ジオが取った選択は、紅のベニーに真相を包み隠さず話すことだった。承諾を得られなければ、CPOに頼んで彼に記憶改竄処置を施してしまえばいい。あくまで最後の手段だが。
「にわかに信じがたい話だが、君が嘘をついているとは考えづらい。君が僕を信用してくれたように、僕も君を信用しよう。エクスとやらにも興味がある」
「では、エクス入隊についての返答は、イエス・オア・ノー?」
「ここまで話を聞いてしまったんだ。ノーと言えばただでは済まないんだろう? くれはを監視するためにも、僕がエクスに入るべきじゃないかな」
 周囲に安堵感が押し寄せる。ジオにとってもニルムにとっても。
 銃器師団団長が手を差し出し、不死身のジークフリードがそれに応える。がっしりと握手を交わす。
「エクスへようこそ。あなたのような人材を、我々は探していました」
 前衛を守る王騎士として、くれはを諌めるストッパー役として、生徒会とのパイプ役として……その言葉に偽りはなかった。期待しすぎかもしれないが。
 しかし、結果的にではあるが、ウェルトにリーネ、そして今回のニルムの獲得はくれは無しでは成せなかった。これは、ますます頭が上がらなくなるかな、と、サングラスの下の表情はわずかに苦々しくもなるのだった。

つづく

「……って、おい! 俺については一切触れずに終了なのかよ!?」
「マッチョ一人紹介するだけでおなか一杯なので^^」
「あんまりだ〜〜〜!」

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5月11日 迷子の迷子の

☆今回の参戦メンバー:ジオ、京、ウェルト、リーネ、イリア、くれは☆

「ぬ。切れてしもうたわ」
 ツー、ツー、と無機質な電子音を流すエスバイスを、くれはは睨みつけた。
 睨んだところでどうなるわけではないのだが。
「まあ、いつものことです。それで、ハチ隊員からの情報は?」
「CGみたいな世界とか、ドリルがどうのとか言っておった」
 ジオの問いに対して、断片的なキーワードを掻い摘む。
 そこから手繰り寄せられる答えは、彼らを驚愕するに足るものであった。
 エクスを影からバックアップする、CPOの実働組織、XPD。
 彼らは異形に対してはほぼ無力であるものの、CPOの表の顔を受け持つ栄え抜きのエリート集団である。
 しかしながら、いかに映え抜きといえども、中には困った人間も少なからずいるわけで。
 XPDの新米隊員、村正八(むらまさはち)もその一人なのである。
 彼を知るものは、親しみを込めてハチ隊員と呼ぶ。重度の方向音痴らしく、ふらっとどこかへ行ってしまったかと思えば、すぐに迷子になってしまう体質らしい。
 三半規管が壊れているのだろうか。
 今回のXPDからの依頼は、その迷子になったハチ隊員を探し出して欲しいというものだった。
 実を言うと、銃器師団一行はすでにこれまで3回以上、ハチ隊員の捜索に駆り出されている。
 迷惑な話もいいところなのだが、功績値も得られるし、なにより大事なXPDのメンバーを失うわけにはいかない。
 下手をしたら、異形の現れるアビス内まで侵入してしまっているかもしれないのだ。現に、前回は森本ビルに迷い込んでいた。
 だが、今回の事情はさらに深刻だった。
「CG、ドリル……。まさかとは思いましたが、そのまさかのようですね」
 緑髪の参謀が、呆れ果てて天を仰いだ。
「バベルスフィア内のどこかってことで間違いないわけか」
「私たちもまだ全然探索が進んでないのに、そこで迷子の捜索ですか。もうここまできたら、彼の放浪癖も一種の芸術ね」
 ウェルトとリーネもげんなりしている。
 バベルスフィア。銃器師団一行に、この前探索許可が下りたばかりの未知の迷宮である。
 ドリルというのは、ハチ隊員のような侵入者を排除するための機械兵器、いわゆるバベルンフォースであろう。
「しかし、探すのならば早めのほうがよいぞ。深瀬に例の電気ウナギが潜んでいることなど、あ奴は知るまい」
「そ、そうですね。あたしたちならまだしも、ハチ隊員では一歩間違っただけで……」
「うむ。あんなむっさいおっさんが、ウナギ責めで昇天している姿など見たくもないわ」
「いや、だからそれは違いますから、先輩」
 漫才に移行しかけた流れを、ジオが引き戻す。
「そういうことなら、すぐに出発しよう。探索をしつつ捜索、というのもまた新鮮でいいかもしれない。参謀、新武器のダイミョウカタナの切れ味、期待してますよ」
「了解です、団長。頭脳だけじゃないってところを、たまには見せないといけませんからね」
 ハチ隊員がCGのようだと揶揄したように、現代社会からは想像できない、近未来的な未知の空間。それがバベルスフィア。
「日輪学園駅から、まさかこんなところに出られるなんてな。寒気がするぜ」
 心なしか、ウェルトの顔がこわばっている。
「なに、出てくる異形はさほど脅威ではないよ。特にドリルの排除は私に任せてくれればいい」
 対して、自信たっぷりに京は応対する。この辺はやはり経験の差だろうか。
 ドリルは、バベルンフォースの中でも比較的原始的な部類に入る機械兵器だ。京が持つダイミョウカタナならば、弱点にその薄刃を確実に入れることができる。
 探索は予想通り、順調に進んでいった。
 リーネのエンフロートで、深瀬の上を自由に行き来できるようになったのは大きい。イリアのエンライトも併用し、視界を確保して進んでゆく。
 出てくる異形にはそれほど苦戦はしなかった。京の斬り込みで、ドリルもイールバーンもあっさりと殲滅されていった。
 口の悪い奇妙な機械人形を手に持った少女に出会ったりもしたが、まともなコンタクトが取れなかったため、位置を記録するにとどめた。
 あとで司令室に報告すべき事案が一つ増えただけだ。そもそも、銃器師団の目的は彼女ではない。
 概ねマップを埋め終わったところで、あごひげを生やし、重そうな鎧に身を包んだ大きな男が倒れこんでいる姿を発見した。
 間違いない。ハチ隊員だ。

おっさん近影

 いつも通りに、彼の好物のカレーを気付けとして差し出す。
 見る見るうちに元気を取り戻すハチ隊員。
「まったく、現金な奴じゃのう」
「まあ、無事に見つかって何よりです」
 例を言うハチ隊員をXPDの本部へと送ってやり、今回の依頼は終了した。
「というか、あんな人がXPDに所属していて、大丈夫なんでしょうか。これだけ頻繁に迷子になっていたのでは……今回も運が良かっただけで、もしかしたら死んでいたかもしれないのに」
 リーネが当然の疑問を口にする。それに対して、ウェルトは簡潔に答える。
「悪運が強いんじゃねぇの? ほら、よく言うじゃん。『憎まれっ子世にはばかる』とか」
「それは、ワシに対するあてつけか何かかの?」
「べつにぃ〜?」

つづく

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5月9日 キーパー殺しとして恐れられる

「今回の深水域での即死理由は、かなりえげつないのう」
「ほえ? 装備品が重たいから沈んじゃうんじゃないんですか?」
「コードライズした装備品なんじゃから、重量なんぞ無きに等しいじゃろうに」
「ああ、そうでしたね。今回はTHが上昇しちゃうアイテムもあまり見かけませんし。で、深水域に入ると戦闘不能になってしまう理由ってどこに書いてあるんですか?」
「情報端末の異形のデータの中じゃ。この前、イールバーンとかいう異形に出会ったであろう? ちなみに、イールとはウナギのことだ。カバヤキにすると美味いぞ?
「それはロベルト本郷……って、このネタわかる読者の方なんているのかなぁ? まあ、ちょっと閲覧してみますね〜」

噂のイールバーンさん

「うぇえぇええ……イールバーンってよく見ると気持ち悪い……。ROの亀島1Fにこんなmob出てきませんでしたっけ?
「ROのmobの半分はエロ触手でできておるからのう。それよりも、こいつらの解説文をよく読んでみるのじゃ」
「ふむふむ、なになに……?」

このエロmobの大群が殺到し、瞬時に昇天させてしまう云々

「ガクガクブルブルΣ(´Д`;;;)」
「さすがチームラ。ウナギ責めとはワシも予想しておらんかった。そっち方面へのニーズまで考慮されているとは、そこにしびれるあこがれるぅ!」
「いやいやいや! なんですかそっち方面のニーズって!? ウナギ責めとかそんな生易しいものじゃないですよ、電気ウナギなんですから感電死ですよ!」
「言い方が間違っておる。電気ウナギで昇天と呼ぶがよい、昇天と」
「微妙に意味が違うー!」

「して、イリア」
「なんですか? まさか、深水域に飛び込んでみてとかいうんじゃないでしょうね?」
「そんな芸がないことを言うはずがなかろう? ただ単に、二人でバベル内を探索しようと」
「なんかすごい嫌な予感がするんですが。というか、あたしはエンフロートを使えないので、殆ど探索できないはずですが」
「まず、ツールの方のエンフロートを使います」
「ウィズコード無しでも、浮きます」
「次に、深水域の上まで移動します」
「そして、おもむろにエンデフォルトを使います」
「ちょ、ちょっと待ったー!!!」
「するとあら不思議、エンフロートの効果がなくなります」
「全然不思議じゃないよ、必然だよ!」
「ザボーン! ウナギに昇天させられるイリアちゃんの出来上がりー!」
「やっぱりぃぃぃ……。あれ、でもちょっとよく考えてみてくださいよ」
「なんじゃ?」
「エンデフォルトなんて使ったら、先輩まで深水域へザボーンなんじゃないんですか? 先輩、あんな重そうな装備してるんだから、あたしよりも酷い目にあいません?」

↓あんな重そうな装備↓

「ふっふっふ。甘い。甘いのう、イリア」
「ほえ?」
「この鉄の塊(マシンウィングのこと)の性能カタログをよく読んでみるのじゃ」
「ええっと……。『学技+』、『浮遊』。……ふゆう……浮遊!? 浮くのコレ!?
「浮くらしいぞ。ROでいうところのパンツァーゴブリンみたいな感じじゃなかろうか」
「ってことは、あたしだけが池ポチャで……」
「ワシは無傷のまま、ウナギにあんなことやこんなことさせられてるイリアをニヤニヤして眺めることができるというわけじゃ」
「先輩、悪趣味です。悪趣味すぎますorz」
「褒め言葉として取っておこう」

つづく

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5月7日 理想主義者と秋の空

 7カ国サミットの警護に、エクスを導入したことは正解だったといえよう。
 彼らでなければ、異形の排除はできなかったのだから。
 しかし、その勝敗は一瞬で決した。
 隊長・アリスが本体を叩いている間、銃器師団が相手をしたのはレックスシザーと呼ばれる超巨大蟷螂。そして、それを護衛するマンティス数体。
 ユニオンスキル・団長チャージで強化された京のファイアワークは、一撃で巨大な蟷螂を灰燼へと変え、取り巻きの異形も次々と打ち倒されていった。
 ジオが攻撃を防ぎ、スノーが短剣を閃かせ、ティスの弓が手負いを射抜く。イリアが傷ついた仲間を癒し、くれはは……えーっと、くれはは……。
「まさしくでかいだけの見掛け倒し。口ほどにもないのう。カードを落とさないマンティスに存在価値などないわ」
ジ「確かに、Str+3は魅力的ですよね^^」
 あ、そうそう、肝心な仕事があった。減らず口を叩く
「くれはさん、もう少し真面目に戦っていただけませんかね」
 苦言を呈するスノー。激しい動きでずれた眼鏡の位置を直しつつ、もっともなことを言う。
「エグゼだとダメージ通らないんだからしょうがなかろうに」
「折角ボムやアースワークを常備しているんですから、そちらを使ってくださいよ……」
「あんな見掛け倒しに貴重なアイテムを使うほどでもなかろう?」
「……」
 言い合いは、やはりくれはのほうに分があるようだ。
 滞りなく、7カ国サミットは終了した。
 終始日本側が主導権を握っていたという、海斗からの報告を聞いてほっとする銃器師団一同。
 溜飲が下がったといえよう。
 後味の悪かった前回の沈滞した雰囲気を吹き飛ばすことができた。
 アリスだけは未だに不機嫌そうだったが。
 てとてとぴぴぴ。
 銃器師団一行には、一日の休暇が与えられた。
 アビスに潜り続けるよりは、リフレッシュを挟んだほうが効率が良いという判断だ。
 そもそも、一応身分は高校生なのだから授業にも出なければいけない。
 過半数の人間、もとい、イリア以外の全員がサボるわけだが(ぁ
 というわけで、サボった悪い子の銃器師団4名は、久々に部室に戻ってきた。
 性格が悪に変更されることはないのだろうか。くれはは元から悪まっしぐらだが。
ジ「さて、授業サボってまで集まってもらったのは他でもない」
「遊葉町に繰り出すんですね、解かります><」
ジ「繰り出しません」
「え……。メイドのコスプレを持ってきたんですが、アソバへは行かないんですか」
「ちょっと待て、誰が着るんだ誰が!」
ジ「ノリノリだな、お前ら」
「そりゃ、久々のおやすみですからねぇ。ゴールデンウィークはことごとく出動だったんですから、今日くらいは羽目を外しましょうよ、ねぇ副長?」
「着ないぞ? 言っておくが、メイド服なんて絶対着ないぞ!?」
「メイド服はダメですか……」
「『メイド服は』ってなんだ、『メイド服は』って!? コスプレの類ははすべからく着ないからなっ!?」
ジ「とりあえず、スノさの特殊な性癖は置いておいて。ちょっと話を聞いてくれないか」
「特殊って……グラサンが無ければ何もできない方に言われるとは心外ですね」
ジ「これ以上コント続けるとgdgdになるので、眼鏡がなければ誰なのか解からなくなっちゃうような方は口にチャックでもしててください」
「……くっ」
「売り言葉に買い言葉とはまさにこのこと><」
「口喧嘩弱いな、スノ」
ジ「『愛国学会』、そして『中華総連』。話が段々とややこしくなってきたね」
この物語はフィクションであり、実在する人物・団体・事件・地名などには、一切関係ありません
「いや、それは解かってるから。まあ、さすがにこの2団体が出てきたときには大丈夫かと心配にはなったが」
ジ「これからの戦いは、より本格的に厳しくなってくることだろう。相手は国家が絡んできていることだしね。全滅の危険と隣り合わせのミッションも増えてくることと思う。そこで、我々とくれはさんとイリアちゃんの6人の他に、もう数人、メンバーを追加したいと考えているわけだが」
「賛成です。呪文無効+深水域のような凶悪トラップの作成に定評のあるチームラですから、もしものためのサブパーティは用意しておいたほうがいいでしょう」
「救助隊を編成するには、最低3人程度といったところでしょうか。理想は6人でしょうけれど」
「しかし、誰でもOKというわけではないだろう? これ以上インテリ侍や射術士は不要といえる」
ジ「現状、足らないと感じる人員は……?」
「潰しの効く前衛職が足りません。前にも申し上げましたが、戦術士が一人は欲しいかと。王騎士も欲しいところですが、それはまた後ほどでも。団長をいつまでも前衛に置いておくわけにもいきますまい」
「あとは魔術士ですか。参謀の対応力の良さを活かすには、専門でウィズコードを使いこなす者が必要かと」
「ヴァイスさが目を覚ませば、前衛はこれで鉄板になるね。わたしも心置きなく別ブラッドへ移行できる」
ジ「なんだ、皆考えていることは同じなのだな。私もほぼ同意見だ」
「そして、手際の良い団長は、既に新メンバーを確保している。そういうわけですね」
ジ「そんな馬鹿な。私はエスパーじゃないんだ。今から探すのさ。面倒だとは思うが、知り合いで興味のありそうな人間に声をかけてみてくれないか?」
「いや、そうじゃなく……」
ジ「なんだ参謀? 歯切れが悪いな」
「さっき部室の外でそれらしい二人組を見たんだが、それじゃあアレは、ジオさのスカウトした新メンバーじゃなかったのか?」
ジ「え……?」
「今回の集まりは、彼らの入隊歓迎会だと思っていたんですが」
「そうそう。だから、遊葉町のメイド喫茶に繰り出そうと提案したんですが」
「メイド喫茶までは決めてなかった気が」
「着ないぞ? 私は絶対にメイド服なんて着ないからな!?」
ジ「えええ……!?」
 銃器師団の部室に、ノックの音が響いた。
 ドアを開けて入ってきたのは、男子一人と女子一人。
 銅色の髪にあごひげ、目つきも凛々しい男子。金髪のポニーテール、愛嬌の中にも知性がにじみ出る女子。
 制服のバッヂから察するに、両者とも一年生のようだ。
*「ちーっす。銃器師団の部室ってのはここでいいのかい?」
ジ「い、いかにもそうだが。私は団長のジオ。君らは?」
 男子のほうが口を開いた。
*「俺はウェルト。ウェルト・ミリタールだ。理想郷(エデン)を探しているうちに、こんな学校に入学してしまった剣道部の一年だ。戦術士ってのになれるんだろ? 殴り合いなら自信があるぜ。よろしく!」
 エデンってなんだ、というツッコミはともかく、続いて女子のほうがウェルトを茶化すような自己紹介をする。
*「私はリーネ・バルタス。この熱血馬鹿にツッコミを入れていたらこんな学校に入学してしまった文学部の一年です。魔術士というのに興味がありますので、ウェルトと一緒に参加させてもらいます。よろしくお願いしますね」
ジ「えーっと……ウェルト君、リーネさん。と、とりあえずはこちらこそよろしく。歓迎するよ。でも、一体どこからここの情報を知ったんだい?」
 当然だが、エクスに関しては最大級の機密事項だ。情報が漏れていたのなら、それは問題だ。
「あー、なんかすっげー格好した婆さん口調の人から、ここに来れば楽しいことになるって聞いたんだけど」

すっげー格好近影

ジ「くれはさん……あの人の仕業か。こっちが求めている人材を早速確保して寄越してくるとは、彼女はテレパシーでも使えるのか? ……ってか、コードライズした状態で校内うろついてるのか、あの人は。大問題だぞ、それ」
「まあ、あの人ならテレパシーくらいは平気で使えるかもしれませんね」
ジ「……使われてたまるか」

つづく

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5月5日 愛、おぼえていますか

 エクス隊長・アリスの説明は、彼らに対して強い嫌悪感を抱かせた。
 今回のクエスト、女子高生連続殺人事件についてだ。
 とりわけ、フェミニストの京はあからさまに顔を険しくさせていた。
「なるほどね。今回の任務は、その女性の敵をとっちめろということですね」
 柔らかな緑の長髪を掻き揚げ、銃器師団の参謀は珍しく冷静さを欠いているかのようだった。
 女性の敵、それすなわち京にとっても敵なのである。
 日輪区周辺で頻発している、猟奇的な殺人事件。
 女子高生ばかりを狙った殺人という時点で不快なのに、その女子高生の死体はすべからく乳房を切除されているなど、その猟奇性は正気の沙汰ではない。
「この前の怪人ノノの形態といい、今回の黒幕も最低のロクデナシなんでしょうね」
 怪人ノノを作った人物と、殺人事件の犯人には関連性があるのでは、と、そう暗に示唆する。
 口調は怒りに震えているが、頭は通常通りに回っているようだ。
「一体、何の目的でこんな行為を繰り返しているのでしょうね」
「さあな。それを考察するのは我々の仕事じゃない」
ジ「そうだな。度し難い連中が相手、と割り切ってしまったほうが雑念が入る余地がなくていいかもしれない」
 彼らは、与えられた任務を確実にこなす。それしか選択肢はない。異形たちとの戦いはまだ始まったばかりなのだ。
「今回の任務はその内容を鑑み、もしものことを考えて、副長を後衛に配置します。代わりに私が前衛へ。異論はありませんね?」
 +9まで強化したエクスクロスを着込みつつ、参謀が指示を出す。
 そもそも、武術士である京が後衛にいること自体問題なわけで、これが本来の配置と言えよう。
 HPはティスはおろか、くれはにすら劣るのだが、質のいい防具で何とかごまかしは効くだろう。
「了解だ。ショートボウも手に入ったし、後方支援は任せてくれ」
 弓矢の弦の張りを確認しつつ、ティスが答えた。
 銃の扱いと同様に弓矢も手馴れている感じだ。
ジ「本来ならば銃器師団らしく、銃を装備したいところだがね」
 コードライズできる装備品の中に銃が存在していないことを、残念に思うサングラスの団長。
 弓矢も銃も基本は同じなので構わないのだが。
 彼はティスと同じく射術士ながら、ロングソードとシールドで武装している。近接戦闘の心得も当然あるのだ。
 着込んでいるレザーアーマーは未強化だが、彼の生命力ならば充分耐えられるだろう。
 森本ビル27階。
 探偵気取りの女が立ち入り禁止を無視して侵入し、不破刑事に追い出されたハプニングもあったが、XPDの隊員たちは既に配備が済み、あとは銃器師団が探索を開始するのみとなった。
 戦闘においては無力とはいえ、普通の人間が入り口を固めていてくれるというのは心強い。
「森本ビル用のマップにエントーチにエンフロート、アンチポイズンにケアがたくさん。緊急用のエスケープ、ボム。今回の鍵になるコードザイルもたくさん用意できておる。よし、準備万端じゃ」
ジ「さあいこうか。既に27階は探索し終わっているが、もう一度部屋を一つ一つ調べていこう」
 探索を開始して、異常はすぐに見つかった。
 部屋の中にいた白いローブを着た人間が、突然ゴブリンやホブゴブリンへと変貌し、襲い掛かってきたのだ。

どう見ても怪しい

 しかし、ゴブリン程度ならば銃器師団の敵ではない。
 あっさりと打ち倒し、所持していた携帯電話に海斗がハッキングをかけ、所有者を特定する。
「愛国学会? 日輪駅で布教活動をしている、あの集団か」
ジ「宗教団体か。これは少し話がややこしくなってくるかもしれないね」
 京が苦々しい顔をする。裏で暗躍している宗教の力がいかほどのものか、それは彼にも解かっている。
「愛国学会は、日本における最大の宗教団体です。彼らが黒幕だとすると……確かに、あたしたちだけで手に負える問題じゃなくなってしまうかもしれませんね」
ジ「探索を進めよう。もっと決定的な手がかりが欲しい」

 ザイルを使い、26階、25階へと歩みを進める。
 現れる異形の危険度も増し、ここには何かある、という雰囲気がひしひしと感じられる。
「超常体への対策は万全。手抜かりはありません」
 超常体――すなわち、ポルターガイストのような実体を持たない相手――への攻撃は、特殊なアプローチが必要となる。
 すなわち、エグゼやサイコ系など超常体への直接攻撃が可能な武器、対超常体用に強化した武器、スペルによる攻撃、アンチエナジー能力のあるイリアによる攻撃の4種類。それ以外の普通の武器での攻撃は、殆ど意味を成さない。
 イリアとエグゼ装備のくれはを除く銃器師団の4人の武器には、既に対超常体用の強化が施されている。ダメージさえ通れば、ポルターガイストなど恐れるに足らない。
 その他にも、ブロブやベノムトミーなどのような耐久力の高い異形が多く出現したが、貫通力の高いティスの攻撃や京の攻撃スペルによって打ち落とされていった。
 そして25階の中央。
 追い詰め、本性を現した愛国学会の信者を返り討ちにし、その先へと向かうと……。

な、なんだtt

 どうやら、愛国学会にゆかりのある場所へとワープしたらしい。
 この事実に息巻くアリス。すぐにでも奥へと進んでしまいそうな勢いだ。
ジ「これで確定だね。さて、CPOのお偉いさんはどう出るか……」
 ジオを始め、銃器師団の一行はこうなることは半ば予想がついていた。異論があったのはアリスだけだったといえよう。こんなことをやってのける宗教団体である。バックスにどのような組織が絡んでいるか、想像に難くない。
 CPOが下したのは、局長の神埼自らによる、探索の打ち切り命令。
 今回の探索は、これで終了したのだ。
「一度仕切りなおしですね。国家間レベルまで話が飛躍して、大きくなりすぎている。犠牲となった女の子たちには申し訳ないが」
 かぶっていたニチリンキャップを取り、黙祷するかのように目を閉じる京。
 柔らかな長髪が揺れ、ため息が漏れる。そこには無力感があった。
「後味の悪い幕引きだな」
 ポツリとティスがつぶやく。他の5人も異口同音だろう。
ジ「このままでは終わらないでしょう。今回は徹底的に洗い出すチャンスがなかった、というだけでね。何事も焦りは禁物だ。アリス隊長の独断専行を止めるという意味でも、局長の命令は賢明な判断だったといえるだろう……。納得はできかねるがね」

つづく

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5月4日 ふたりはプリ○ュア(1)

「くれはと」
「イリアの」
「NPC紹介のコーナー!」
「せ、先輩……恥ずかしいです」
「ん? どこが?」
「あうぅ……。この人には何を言っても通用しないorz」
「何をぶつくさ言っておるのじゃ。折角わしとイリアだけの日記なのに」
「二人だけ!? て……手抜きじゃないんですか、これって」
「手は抜いておらん。やる気を抜いておるんじゃ」
「もっとダメじゃないですかー!」
「さてさて、今日はストーリーに登場するNPCどもを紹介しようというコーナーじゃ」
「NPC『ども』って……少なくとも、あたしたちより目上の方たちばっかりなんですが。今回は、最序盤に出てくる重要キャラクターの方をピックアップします〜」

死亡フラグ最前線

「我らがエクスの隊長、御舟アリスじゃの」
「いきなり呼び捨てですか」
「いつも腰に手を当ててる、強気な娘っ子じゃ。あんなポーズで疲れないのかのう」
「コードライザーとしてもエース級の、頼れる隊長さんです。ソフトのパッケージイラストにも採用されてるんですよ」
「イリア知っておるか? このシリーズには『パッケイラに採用されたキャラクター=ラスボス&死亡フラグ』というジンクスがあることを!」
「え゛……」
「女性で立場的に目上、おまけに苗字が御舟ときた。これはひょっとするとひょっとするかもしれんのう」
「いくらチームラでも3度も同じ展開は用意してないんじゃないかなぁ……」
「あと、ネーミングセンスが最悪なのも特徴じゃの。1日に遭遇した怪人を『ノノ…』としか喋らないって理由だけで『怪人ノノ』などと名付けたり」
「センスの悪さは先輩もどっこい……ゲフン」

ショタ担当

「続いて副隊長、佐伯海斗くんじゃ」
「15歳ながら大学を卒業し、あたしたちやアリス隊長をサポートする男の子です。学園の非常勤講師でもあるんですよ。アリス隊長よりも背が小さくて、ちょっとかわいいのですv」
「ほうほう、イリアはこういう年下が好みっと。メモメモ」
「メモらないでくださいー! あたしにはナレスト君がいるし!」
「ナレストは今回未登場なわけじゃがのう。んで、こやつはXTH2の村正凛に相当するキャラという認識でいいのかのう。今後、行方不明になった兄を探すクエストとか出てくるやもしらん」
「そしてそのお兄さんがラスボスとか……そんな展開はXTH2までで充分です;」

3年B組剣一先生

「学長じゃな。どうしても、某ドラマのあの先生を連想してしまうが」
「神崎剣一学長……というのは表の顔。その正体はエクスが所属している機関、CPOの局長さんなのです」
「さらにさらにその裏の顔として、実はアリスの父親なんじゃな、これが。ぜんっぜん似とらんが」
「それはあたしも驚きましたー」
「母親の顔が見てみたいわい。いったい、どんな遺伝子のいたずらであんな娘ができたのかと」
「それはちょっと言いすぎかと」

「ところで先輩?」
「なんじゃ?」
「今日の日記って、もしかしてオチなし?」
「わしがオチを用意すると想ったか?」
「やっぱり(==;;;」

つづく

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5月2日 バトルメッセージ狂想曲

 探索は続く。
 異形を倒し、コードチップを手に入れ、武装を強化する。
 武装が強化できれば、探索の範囲と時間を延ばす。
 基本はこの繰り返しである。
 森本ビル27階と学徒遂道を行ったり来たりして、一行の探索は順調に進んでいるようであった。
ジ「コープスマシン……クリーピングドリルだな」
「数は多くとも、取るに足りませんね。先手をいただきます」
 真っ先に攻撃を仕掛けるスノー。
 無論、クリーピングドリルも反撃行動に移るが、神速の身のこなしの前に、ドリル音は虚しく空を切る。

DriDriDri!!

「遅い」
 バトルナックルの一撃がカウンターで入る。ぐしゃりと機械兵器は変形し、地面に落ちる。左手のバトルダガーの一閃を浴び、完全に機能が停止した。
 スノーの早業に続き、全員が突撃する。
 この程度の敵は既に相手にならないようだ。

「お次はマンティスか。こいつには気をつけたほうがいい」
「心得ています。時間を稼ぎますので、あとはイリアさんにお任せします」
「は、はい!」

カマー!

 ひらりと身をかわすスノー。
 食らえば一撃で倒されかねない攻撃だが、それゆえに動きは単調だ。
 回避に専念すれば、そうそう当たるものではない。
「いきます、ファイアワーク!」
 スノーが飛びのき、放たれるウィズコード。着実に連携も上達している。
 火炎が蟷螂を包む。一瞬にして灰と化すその威力。

「トードか。水属性は火属性に強い。ファイアワークが通用しない以上、前衛が踏ん張るしかないね」
ジ「こういうときこそ陣形技だ。団長シールドを張るぞ!」
 ユニオンスキル・団長シールド。
 効果時間は一瞬だが、相手の攻撃を大幅に緩和させる障壁を発生させる技だ。

ゲコッ!

「効かない……ねっ!」
 障壁に阻まれたトードの舌を切り落とし、続く脇差が喉を捉えた。
 切っ先は反対側まで貫通し、体液が噴き出す。異形の命を確実に奪った。
「やれやれ……コードライズしていなければクリーニング代も馬鹿にならなかっただろうにね」
 返り血を浴びた優男は、顔色も変えずにうそぶいた。

「ちょいとイリア」
「なんですか、先輩?」
「たまには前衛に出てみたくはないかえ?」
「……変なこと想像しないでください」

つづく

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5月1日 超高速な咀嚼運動

** シ ャ キ ィ ー ン ッ ! !**

ジ「ぐぅ……っ!?」
「だ、団長ー!!」
 鋭い刃物が、肉を切り裂く音が聞こえた。
 先頭に立つサングラスの男の首筋がぱっくりと割れ、鮮血が迸る。
 森本ビル27階に入り込んで、ほんの数歩歩いた直後のことである。
 相手は5体のヴォーパルラビット。体験版を通じての気の緩みか、最初の1匹目の攻撃が、見事にジオの急所を捉えた。
「まずい。くれはさん!」
「言われなくともスタコラサッサじゃのう……エスケープ!」
 この突然の異常事態に冷静でいられた者はたったの二人。だが、その二人が的確に事態を収拾させた。
 サイコード・エスケープ。確実に退却して仕切りなおす呪文である。
 無理に戦闘を継続していれば、おそらく被害が拡大するだけだっただろう。
「何たる不覚! あんなウサギどもに先手を取られるとは!」
「どうする参謀。一旦退くか」
「団長を欠いた状態での進軍は困難でしょう。尻尾を巻くのは不本意ですが仕方がありませんね」
 撤退を促す緑髪の参謀。スノーが前進したがっているようだが、それは止めなければならない。
 あのジオが一撃で屠られたのだ。そんな敵がいる場所を、わざわざ不利な状況で進むべきではない。
 ……自分が前衛に立ちたくないだけなのかもしれないが。
「入ってすぐだったのが不幸中の幸いだったかの。よし、ジオ坊を運ぶぞ。手伝え、イリア」
「は、はいぃ……」
 戦闘経験の薄いイリアは狼狽気味だ。
 担架に乗せられ、ICUへ運び込まれていくジオ。
 首の傷は深いが、幸い、一命は取り留めたようだ。
「あわわわわ……。どうしましょう、せんぱ〜い」
 涙をぼろぼろこぼしながら、くれはにしがみついているイリア。トラウマにならなければいいのだが。
「怯えるでない。ジオ坊なら大丈夫じゃ。……とはいえ、いきなりでアレではさすがに肝を潰すか」
「学校へ戻りましょう。我々も一旦体制を整えます」
 ICUからジオが退院したのは、それからしばらくのこと。
 さすがは日輪学園。最早人類の最先端医学をはるかに超えた治療能力
 首に包帯を巻いてはいるが、血色も良く、すぐに戦線へ復帰しても問題はなさそうだ。
 体力も年齢も変化がないところがとても素晴らしいと思います。
ジ「遅れてすまない。いきなり幸先の悪い滑り出しになってしまったな」
「いえ、戦いとは時の運。百戦して百勝出来るものでもありますまい。むしろ、気を引き締めるきっかけができました」
「いずれにしろ、ヴォーパルラビットは要注意だな。体験版の情報では危険なのはマンティスの攻撃力だけだと認識していたんだが」
 いやだって、体験版やってたときは一度もクリティカル出さなかったんだもの。
 何でよりにもよって、初戦のしかも初手でクリティカルが出るかなorz
「対抗策としては、素早い殲滅。数が多い場合はエスケープを使う選択肢を常に頭に入れておきましょう」
「了解じゃ」
 仕切りなおして、再び森本ビル27階。
 今回は危なげなく、探索を続ける。
 一度は撃退されたものの、さすがは銃器師団。慣れてくればどうということはない。
 次々に襲い掛かる異形を、簡素なバトルダガーだけで手際よく殲滅してゆく。
 数戦を終えたところで、ゴブリンにトドメを刺したスノーが顔を上げる。
「コードチップのようです。ランクはD」
 コードチップとはアイテムコードの入っている箱。まあ、平たく言えば宝箱だ。
 ただし、宝箱といってもただの宝箱ではない。
 往々にして強烈なトラップが仕掛けられており、解除できずに開けてしまうと手痛い被害を受けてしまうのだ。
「ここはわしの出番のようじゃな」
 当然、このトラップ解除ができるのは学術士であるくれはを置いていない。
「ふむふむ……こいつはショックトラップのようじゃな。解除するからちょいと下がっておれ」
 カチャカチャと、何やら怪しげな工具を取り出すくれは。
 指示通りに、他の5人は念のために距離を置く。
「ここをこうして、こうすれば〜。ん……あれ、違ったか。それならば、こうしてこうして……」
「先輩がんばって〜」
 ……数分後。
「むぅ……? おかしいのう。これで開くはずなのじゃが」
 トラップ解除にてこずっている。いかに運全振りとはいえ、Lv1ではトラップ解除はなかなか難しいのだ。
 こらえ性のないくれはは、徐々にイライラし始めている。
「トラップの種類が違うんじゃないのか? 例えばポイズンスネアとか」
「ええい、めんどくさいわー! 学術で開かないのなら、これでどうじゃ!」
ガ コ ッ !
「蹴っ飛ばしたーΣΣΣ」
 当然発動するトラップ。
 ぶしゅー! と、勢いよく噴き出すのは……毒霧。ティスのあてずっぽうの予想通り、ポイズンスネアだ。
 やっぱりトラップの見立ての時点で間違えていたらしい。
「げほっ、げほっ! ウ、ウェポンゲットだげほっ!」
「何やってんですかくれはさん」
 呆れ顔で参謀がくれはを見やる。
 まあ、トラップの解除ができない学術士なんて、飛べない豚みたいなもんだからなぁ。
「げほっ、ごめんね、母さん向こう見ずでごめんねげほっ!」
「誰が母さんですか誰が。解毒用のアイテムなんて持ち合わせていないんですよ?」
ジ「退却しよう。1話に2度も戦闘不能者を出してもネタにならん
「すまないねぇ、ジオ坊げほっ!」
ジ「いいから黙っててください」
 踵を返し、入り口まで向かう一行。
 みるみるくれはの体力は消耗していくが、その都度ティスとイリアがヒールコード・ケアでフォローしてゆく。
 入り口まであと少しというところまできたが、そこで一向に悪寒が走る。
 蜘蛛のようななんかすごくでっかい異形が、一向に立ちふさがったのだ。

ちくびっと!

「ちっ! 楽には帰らせてはくれないようだね」
「乳房を武器として飛ばしてくるとは、まったく悪趣味な。女性のセックスシンボルをなんだと思っているんだ」
「冗談言ってる場合じゃありませんよ。こんな異形を相手にしていては、くれはさんの体力が持ちません」
「ケアのMPが切れちゃったよぉ。このままじゃ先輩が……」
「ぜぇっぜぇっ……何、まだ大丈夫じゃ。ヒールコードは尽きても、ウィズコードは残っているんじゃろう?」
「ですね。ここは全力で撃破に当たりましょう。イリアちゃん、準備はいいかい?」
「は、はい〜! ウィズコード、発動――!」
ジ「陣形技も使おう。速攻だ、テンペストの陣形を組め!」
 京とイリアが虎の子のファイアワークを2連発。
 異形の3分の2を焼き尽くし、残りは前衛の3人が片付けた。

 最初のクエスト、クリア。
 この調子でラストまでいけるのか、すごく心配ですが、がんばれ銃器師団!

つづく

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