浜野茂則『伝記小説・深沢七郎』

平成十二年六月三十日 第一刷
 葛゚代文芸社刊
 181頁
 1500円

 本書の帯に次のようにある。
 「本書は作家・深沢七郎と私的交流を持ち、深沢文学研究家でもある著者が、崇高な文学の極みから赤裸々な日常生活までを一気呵成に伝記的に描き切った小説であり、深沢七郎入門書とでも言うべきものである。その内容は七郎の甥の深沢三人氏と共に七郎の故郷、山梨県石和町の実家に「深沢七郎記念資料室」を開設したほどの、現代の奇人深沢七郎狂の著者ならではの小説である。」

 著者浜野茂則氏は、このHP制作者の大学の先輩である。浜野氏は、深沢七郎の死に至るまでの十数年を、この作家をよく観察し得る位置にいた。大学の卒業論文以来、三十年にわたって、一貫して「深沢」に関わり続けてきたその姿勢は、尊敬と畏れを感じせるものがある。
 本書の内容はきわめて魅力的で、読み始めて文体に若干違和感を覚えるところがあったが、すぐに作品世界に引き込まれていった。
 表紙カバーの装画も、著者の手になる。本書の主題と調和した見事なものである。帯を外し、開いた全体を示す。