林晃平『浦島伝説の研究』


平成十三年二月二十八日
鰍ィうふう
五百一頁
一万二千円

「 世に五大昔話という言い方がある。桃太郎・花咲爺・舌切雀・かちかち山・猿蟹合戦がそれである。明治初期にはこれにぶんぶく茶釜・金太郎を加えた七つが、子ども向けの絵本の圧倒的な素材であった(第六章第二節)。浦島太郎の話はそれには含まれてはいない。しかし、浦島の話がその時にまだ生まれていなかったわけではない。浦島の話は、古くは現存最古の歴史文学書である『日本書紀』や『風土記』に既に見られ、途切れることなく連綿と現在まで続いているのである。ゆえにこれを文学のモチーフのひとつと考える時、浦島の話は日本の文学の中で古代から現在までを見通すことのできる唯一のモチーフであり素材ということができる。」(本書、巻頭より)

 「浦島伝説を通して文学史の再構築ができないか、という思い」を持つ著者による、浦島伝説の総合的な研究である。記紀万葉から現代文学に至るまで、「浦島」に関わる膨大な資料が渉猟され、論述が展開して行く在り様は、壮観と言ってよい。

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