-----------------クーロンズゲート・エントランス------------------
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------------------------------------------------------------- 最初に「クーロンズゲート」の画面を見たのは、友達が遊びに来た日だった。 それまでにも彼女から話だけは聞いていたが、九龍がどうの陰界がどうの、ネットがどうの風水がどうの、 しまいには「物」に邪気が取り憑いてモンスターになる「鬼律(グイリー)」がどうの、 「物」の事ばかり考え続けた挙げ句の果てに「物」自身になって仕舞った「妄人(ワンニン)」がどうのと、 何だかさっぱり要領を得なかった。只、可成り猥雑な世界観なのだろうという事だけは、 想像に難くなかった。 「扉とか、ボイラーとか、窓とか、鍵穴の妄人が居る訳よ」 「鍵穴?」 「鍵穴を覗く事に心血を注ぐ余り、自分が鍵穴になっちゃったりした人なのよ。 でも自分が鍵穴になったら、もう何を覗いたらいいのか判らなくて、悩んでるのよ」 う、うーむ、なるほど。 何となく理解出来初めて、私は彼女に言った。 「例えば…消火器よりも、消火栓の方が妄人になりやすそうだったり…」 「そうそう。カンジが掴めて来たじゃない」 よく判らないが、これが私と彼女の共通した世界観であったらしい。 主人公は風水師で、彼は陰界に赴き四神獣の見立てを行わなければならない。 概要としては、これだけである。 確かにそれだけの事なのに、どうしてあんなにも凄いゲームになったのだろう。 とにかく、彼女はプレステのソフトを持ってやってきた。 余りにも美麗なオープニングで既に魅了された。 やっぱり、猥雑な世界観に違いはなかった。 ただ、私の想像なんか遥かに超えて仕舞っていたけれど(笑) 彼女が操る主人公の目線で、暗鬱な雰囲気の龍城路の街中を練り歩く。 あっという間に気分が悪くなり出した。 更に胡司(フートン)と呼ばれるダンジョンの中へ入っていく。 胡司の名前は重慶花園(チョンキンガーデン)。 他国語が入り交じった、不思議に耳に残る響きだ。 暗いダンジョンに鬼律の姿は見えないが、近くに寄るとピンク色の邪気と共に画面が波打つ。 そして上手に、邪気最高潮の渦中にブチ当たれば、晴れて鬼律と御対面。 ↑私のHP。 「イヤーン」 御対面した時には、もう私は三半規管が死にかかっていた。 鬼律は、何か六本脚の昆虫に、ゼンマイが付いた奴。 不気味な様な、可愛い様な、哀しげな様な。 モノと昆虫、どちらにとってもフリークスだ。 別に、攻撃を仕掛けてきたりはしていない。 風水師は、その鬼律が纏っている邪気によって1ターン毎に勝手にダメージを受けている。 そうしながら相手の邪気の属性(木、火、土、金、水のいずれか)を調べた。 どうやら「ゼンマイ」に邪気が宿った物だから「金」の属性らしい。 しかるのちに「金」に相克する属性「火」を、七宝刀から打ち出す。 金は燃えるから、火に弱いらしい。 一発で鬼律の邪気は消え、罪なき鬼律は物に戻ることが出来た。 斬新な戦闘だ。 でも、もう限界。 酔うのです、このゲーム。 動きが細かいんだもん。階段なんか小刻みに揺れる。鬼律が近い時の画面の波打ちも凄い。 或いは、邪気にやられてるのかも知れない。そんな気が凄くする。 彼女が帰った後、私は小一時間寝込んでしまった。 気分が悪いー。 ↑もうHPこのくらい。 でも既に、もう一回やりたくなっていた。 なんでか知らんが、どうしてもやりたい。 私は既に、邪気に取り憑かれていた。 ★ 買ってきて、プレイして、クリアした。 ★ こう書くと簡単なのだが、この間たっぷり半年。 胡司の中を30分歩いただけで酔っちゃうんだから仕方がない。 でも、クリアして暫くするともう一度やりたくなっちゃうんですよ、これ。 恐ろしゲー。 アイテム1「鬼律玉」どんな属性の邪気も打ち消す。 そして2001年の3月、もう一度最初から最後までプレイする機会に恵まれた。 このゲームをやる事になったARIのもとへ半月ばかり滞在するにあたって、そのナビを務めるため。 でも、ARIは元々、集中出来ないゲームにはとことん集中が出来ない奴だ。 おまけに、漫画家なんかにしておくには惜しい程の強さと男気の持ち主であるにもかかわらず、 「こわいものと虫がキライ」という乙女の如き感性を持った小心者だ。 ヤクザの事務所に殴り込みを掛けるなんて事は全然平気でも、オバケやバッタが怖いのだ。 うーん、困ったぞ。 先述した「金」の鬼律なんか、そのまんまオバケっぽい虫じゃないか。 もっとすごいコワイのもウヨウヨ出てくるのだ。 アイテム2「貝粉(ボイフン)」鬼律の属性を変化させる。 こうして不安一杯で始まった此の度のプレイだったが、 以外にもARIは、ヴィジュアルの美しさにひたすら感動しながら、街中も胡司もスイスイ歩く。 「俺、ネオン街って好きなんだ♪」 な、何か上機嫌だぞ。 怖がるかなーと思っていた鬼律も、「んー、こいつの属性は…あー土かぁー、よっしゃ木だっ」 等と言いながら、バシンバシン物に戻している。 三半規管は稀にみる丈夫さの様で、全然酔わないらしい。 私はナビの癖にとっとと酔ってしまった。 元々私の寝床の上に座ってやっていたので、画面を見ない様に横たわる。 よしよし、とARIは片手で頭を撫でてくれたが、目は画面から離していない様だ。 ふと見上げれば、ARIの目の色が変わっていた。 そうか、こいつも邪気に取り憑かれたか。 良かった、きっとこれならうまくいくぞ。 ★ うまくいった。 ★ 途中、一緒に何度も泣いた。 そういう感動も存分に味わえる、素晴らしいゲームなのである。 また暫くしたら、やりたくなるんだろうなー。 -------------------------------------------------------------
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