第17回  トルシエの去就騒動に一言
  トルシエの残留が決定。2002年まで延長?まだまだ二転三転しそうだが、6月の騒動を含め、トルシエ監督について語ろうと思う。

 今回追試の対象となった4試合は「2勝2分」。数字上はもちろん合格である。が、対戦相手とその内容は・・・というとやはり疑問が残る。しかしこれは追試を受けた受験者『トルシエ』にではなく、試験官である「協会」に問題があったように思う。
 試験にするのであれば、正解か部分点か失格かという採点基準が必要であるはずだが、そこを明らかにしていたのかどうかが疑問に残る。これでは試験後に採点ミスを言われても反論できない。
 また、試験にする以上、問題の吟味は絶対必要である。たとえば、アウェーでの試合だからといって、これが真剣勝負になるのか、フランスはヨーロッパ選手権を控え、何割の力で来るのか、ジャマイカ、モロッコはW杯予選を控え、今のチーム状態がどんなものなのか、キリンカップは親善試合(断言)だが、スロバキアは親善なのか、W杯予選を考え新しいことを試してくるのか、W杯予選中のボリビアはベストメンバーを連れてくるのか、そういったことを細かく調べた上で、さらに現在の日本代表の状態とを比較してのテストでなければ意味がないと思う。当然のことながら、この仕事は試験官「協会」の仕事である。が、その仕事がなされていたとは考えにくく、この追試を「協会」は表面的にとらえていただけのようにしか見えなかった。そんな試験では、出た結果に信憑性は全くない。

 今回の4試合は、結局は『トルシエ』の当面の思惑どおり、新たな選手のテストと、オリンピックに向けての調整だったように思う。しかし今回は(皮肉なことに)ここに大きな成果が見えた。森島、西澤の「セレッソコンビ」と、サイドの切り札「三浦淳宏」である。
 今までのトルシエは、「フラット3」と「NAKATA頼み」だけのサッカーしかできていなかったが、今回で新しい形、そして「トルシエ・ジャパン」の最終形が見えてきたように思う。中田にマークが付くのは見え見えであり、それを打開するのに「森島」という1.5列目は有効であることが証明された。森島には、デルピエーロやラウールのようなMF的FWになって欲しい。城はやはりストライカーであり、今まではこのポジションで無理をさせていたが、これからは、西澤、久保、柳沢あたりと1つのイスを争っていく方が良いと思う。森島の代わりは・・・今は該当者が無く、あえて言うなら「NAKATA」であろう。NAKATAのポジションの代わりは、少々質は落ちるがいっぱいいる。今のサッカーの攻撃は1.5列目という概念が有効なのは、活躍する選手(前述の2人やリバウドあたりが該当)を見ても明らかである。
 そして3−5−2(または3−6−1)でやる以上、サイド攻撃は必要不可欠である。これには優れたウイングバックが必要なのだが、今まではなぜかトルシエは手を付けず、真ん中のプレーヤーを代用させ続けてきた。しかしここにきて「三浦淳宏」である。これを機に、サイドに強いプレーヤーの見直しをして欲しい。望月も伊東輝も中村俊輔も本山も名波も明神も小野も中央のプレーヤーである。オリンピックでの平山、市川、A代表には該当者が少ないが、切り札「アレックス」を含め、多くのサイドプレーヤーを試して欲しい。中盤の外側の二枚が決まってきたとき、『トルシエ・ジャパン』の最終形、すなわち2002年W杯の形が見られると思う。

 協会も2002年まで・・・などと気の早いことを言わずに、9月、10月の試合を、採点基準をしっかりと持ってみてもらいたい。そして、もう少し現在の監督である「トルシエ」のサポートをするべきだと思う。「トルシエ」の行っている強化は今のところ間違ってはいない。協会のやっている奇行としか呼べない行動よりはよっぽどましである。
 とにかく、9月、10月まで代表はこのままでいいから一度落ち着いて欲しい。これからは、Jリーグの「サイドプレーヤー」に注目していきたい。

(2000.6.25)