第4回  おめでとう!五輪代表!!
 やはりというか、当然というか、五輪代表はシドニーへの切符を手にした。日本サッカー界としては一安心だったろう。

 その中でも、トルシエ監督の(インタビューでの)喜びようはすごかった。でも、それもわかる気がする。まず、自分の首がつながったこと。五輪出場権を獲得することが、去就の条件だったのだからよくわかる。これが良かったのかどうかについては、また別の機会で・・・(次回あたりでオリンピック予選の総括をしたいと思っています。)

 しかし、あの喜びようはそれだけではないと思う。考えられるのは、自分の采配の(初めての?)大成功というのがあると思う。確かにあの試合の交代選手の妙、そしてその後のチームの意志の疎通というのは、はまりすぎた感がある。1点取られたところでの早めの交代。酒井の投入により、右サイドのサイド攻撃の強化をねらい(酒井本人のインタビューでは、守りもしっかりやれということを言われていたようなので、疑問も残るが・・・)動きの良かった明神をボランチで起用、ミスをした遠藤は交代。この交代により、稲本のポジションがやや上がって、そこからチャンスが出来ていた。
 そして後半、FWの福田に変えてMF本山の起用。中田(英)は1.5列目に起用する。これがはまった。中田のマンマークは変わらなかったため、DFラインが1枚増え、中盤があく。そこを中村が自由にプレイすることにより、さらにチャンスが増えた。左サイドの本山も、前半中村の使えなかった前のスペースを十分に使っていた。カザフスタンも、数分後には中村にもマンマークを着けて対応。それを見てさらに手を打つ。相手のオフェンスが少なくなったので、ボランチ稲本を下げFW高原を起用。当然高原にもマークをつけなくてはならず、中田(英)は自由にサイドを動き回る。中村は、2.5列目に下がりパスを供給。この時点でカザフスタンのDFラインは破綻していた。中村のドリブルから、中田−平瀬とつながった1点目は、メンバーチェンジの時点で決まっていたといえる。

 この一連の交代劇の何がすごいのかというと、このポジションのめまぐるしい変化に当然のように対応した選手たちである。中田(英)はさすがという感じだが、中村、明神の適応力はすごい。当然こういうシステムを練習したことも考えられるが、この世代のサッカー勘のよさが際だった試合だった。そしてトルシエの意図がここにはっきりと見えている。監督としてはたまらないゲームだったのではないかと思う。自分の意図を選手が理解し、試合をひっくり返す。監督をやったものにしかわからない快感がそこにあったのだと思う。そう考えるとあの喜びが理解できる。

  あの喜びの真相でもう一つ考えられるのが、純粋な喜びである。FIFAの公式大会の出場権が得られたのである。2年前のW杯予選のジョホールバルでの感動。日本国民のほとんどが喜びを爆発させたと思う。それに比べ『勝って当たり前、出場して当たり前』という空気があったのは事実である。慣れるというのは恐ろしい。これが日本人の特性なのかもしれないが、もっと喜んでもよかったのかもしれない。監督、選手の今までの苦労を考えればなおさらである。サポーターとしても反省するところがあったと思う。

 (1999.11.08)