File 14【船酔い】 静岡県は浜名湖に「釣り」に行った。去年から妻の弟にルアーフィッシングに誘われ、時々近くの港でシーバス(スズキ)を狙ってタックル(竿)を振っているのだが、今回は趣向を変えて浜名湖が太平洋とつながる今切口(いまぎれぐち)というポイントで船頭付きの海釣りを義弟と一緒に行くことになった。私は何事もこだわるのでリールも巻きにくいけど「アブ」(釣り好きなら知っていよう)、タックルも「ン万円」もするものを持っているのだ、しかも今回は「船釣り」。わはは、船なら絶対に大量じゃ〜!
日曜日の朝五時に出港なのだが、幼い頃から遠足の前の晩は眠れなかったり、バイクでのツーリングは必ずと言って良いほど夜立ち(どうせ眠れない)」なので、当然の事ながら土曜日の深夜には、すでに浜名湖に到着して舞阪港の防波堤でルアーを振っていたのであった。結果は勿論ボ〜ズ。
自慢じゃ無いが、ルアーを始めてから一度たりとも魚の顔を拝んだ事が無いのである。つまり「ヘタクソ」と言われても反論する事が出来ないのである。だから私は弟以外の者と釣りの話は絶対にしない。・・・しかし道具だけは負けないのである。いかん、余計にミジメになるってしまう。
早朝五時半に出港し、浜名湖の今切口で船頭さんの指導で生き餌(エビ)に仕掛けをセットして太平洋のうねりの中で「流し釣り」を始めた。さっそく義弟にスズキがヒットし、つづけて櫓を漕ぎながら竿を沈めている器用な船頭にも大物のコチがヒット。同じ仕掛けで同じタナ(水深)のハズなのに、私にはアタリさえも来ない。さては船頭、義弟に頼まれて何か細工をしたな?・・・いや、そんなハズは無い。
その内にうねりが 大きくなって船がロールする様になり、私はついに出来上がってしまった(船酔いだぁ)。途中で仕掛けを変えて鯛狙いに切り替えたのだが船頭さんと義弟にはキビレ(ヒレが黄色い鯛)が次々とヒットし、釣れる度に缶ビールのフタを開けていた義弟の横には、ついに十本の空き缶が並んだ。その頃には私も完全に酔っていて(船に)エサのエビを仕掛けに付ける事もままならなくなっていまっていた。
しかし、「船釣り」でボーズという事だけは許し難い屈辱。自前の撒き餌(ゲー)だけは海に撒くまいと、ぐっとこらえて仕掛けにエビを付けては海へ投げ込みつづけた。しかし、一向にヒットしないのである。この世の中に神というものが存在するならば、どうか私に鯛の顔を拝ませてくださいまし。信仰とはこの様な精神状態で生まれるものだろうか、私は神に祈り、供物(ゲー)を捧げた。
お昼が近づき、帰港間際の最後の最後。ついに私の竿が大きくしなり、生まれて初めてのマダイの感触!。うおぉぉぉぉぉぉおぅ!その感動にしばし船酔いも忘れて「うれしい、・・・うれしいよぉぉぉ」と言いながら、帰港する間じゅう自分の釣った鯛を見つめて涙をながしてどこが悪い。
本日の釣果は20枚。鯛の中で唯一、私が「三十五センチを超す大物賞」、それも生まれて初めて釣ったオサカナなのである。ああ夢心地、でも船酔いで気持ちが悪い。そして船頭さんには名誉ある「正真正銘の一発屋」の称号を頂いた。たとえそれが皮肉でも、私には人生最初で最後の賞賛になるかも知れないので「ありがとう、・・・ありがとう」と、船頭さんに握手を求めてしまった。
今回の教訓を生かし、次回は「波の無い奥浜名湖」で、カワハギとハゼに挑戦する予定だ。
私のファイルの MENU へもどる
Copyright (c) 1997 TAKUFUMI SUZUKI. All rights reserved.