坐るにあたって、さしあたり用意するものといえば「坐蒲団(ざぶとん)」です。できれば坐禅
専用の黒色の大き目のものを用意するとよいでしょう。これは「坐蒲(ざぶ)」と呼んでいる丸い、
あるいは細長い一枚の坐蒲団です。これは坐るとき、お尻をのせるものです。これは専用のものが
入手できますが、家庭用の坐蒲団を二つ折りして使ってもよいのです。ただ、専用にしておきませ
んと痛みます。そして最初のうちは何枚も重ねてお尻を高くすると坐るのが楽です。慣れるに従い、
あまり重ねないようにします。
 次にお線香を用意して香炉に立てます。坐禅のときは時計は用いず、線香の燃えつきる間で時間
をはかります。禅堂では長い線香を使い、これが燃え尽きる時間を「一柱(いつしゆ)」(約四十分)
といっています。香りといい、ゆらゆらと線香の煙がたなびくのも良いものです。
坐禅会のときは「析(たく)」という拍子木を用いて開始と終了の合図をしますが、家庭で一人で
坐るときも、これを鳴らしますと気が引きしまります。
 坐るときの服装はどうかといえば、その季節にあった服装でよく、全体的にゆったりとした軽装
でよいでしょう。坐禅会に行き皆と共に坐るときは、正装して背広にネクタイ、あるいは着物とい
うことになるでしょうが、家庭にあっては、構(かま)いません。作務衣(さむい)を着たり、着物
に袴を着用した方が、気がひきしまるとお考えの方は、それも良いでしょう。あくまでも本来の坐
の目的は、佛さまと対面して自己を究(きわ)めるという佛道修業であるとの自覚さえあらば、服装
も自ずと決まってくると思います。


 

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