 
 夢窓国師の歌の一つです。
       極楽に行きたい行きたいと願うのが人間の心。その心がすでに地獄へ落ちる第一歩だ。
       確かに誰もが願い望んでいる所は極楽です。悟りの世界です。今生きているこの世の生
      活が苦しければ苦しいほど来世の幸せを願うのが人情というものです。この人間の心の根
      源となるものこそ人間の欲望に外なりません。
       佛教では、このように求めても得られない苦しみを「求不得苦(ぐふとくく)」といい、
      四苦八苦のなかの一つとしています。人間の欲望は果てしがなく、そこで人間は無限に欲
      望を満たそうとして苦しんでいます。何とかして自分の欲望を満たしたいのが人間の欲で
      す。執着心です。
       これがあるからこそ、人間は苦しむ。だから知らないうちに地獄に入っているのだと
      夢窓国師は説いておられます。この欲望を捨てるのが禅の教えです。とらわれない心、無
      心の心になろうとして、求めること自体がとらわれているのです。
       人間にとって財産も必要です。楽しむことも必要です。しかし、それにとらわれて家庭
      をおろそかにしたり、人々をおとし入れるようなことをしてはいけません。正しく生きる
      のです。あまり極端ではなく調和のとれた生き方をするのです。このようにありのままに
      生きるのが禅的な生活なのです。
          あきらめようにも あきらめきれない
          あきらめ大事と あきらめた
