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つかの熱海殺人事件は、今が旬だ 演出 堀江辰男 1960年代、赤テントの唐十郎、黒テントの佐藤信、天井桟敷の寺山修司たちが前衛演劇としてアングラと言われながらも、民芸や文学座等の新劇に対し刺激的な演劇を創り出していた。小生も何回も観に行った。 ◆つかの爆発的ブーム しかし、1970年代の初めに登場した”つかこうへい”との出会いは、さらに衝撃的で、今までの演劇観が根底から揺らぐのを感じた。第一世代とも名付けられる前述の唐十郎たちの作品には、ある美意識というか、前衛芸術のようなことばが絡まっているが、それらがまったく剥ぎ取られてしまっている。日常語によるホンネの噴出、絶叫、ハイテンポ、音楽の洪水などによって起こる俳優の異様な情念の渦は、観客を激しく揺さぶった。ややマニアック的でもあったかつてのアングラ演劇ではない、いわゆる新劇でもない演劇が登場したのである。今回上演の「熱海殺人事件」(岸田戯曲賞)、「初級革命講座飛龍伝」、「蒲田行進曲」(小説は直木賞)などを通じて若者たちに爆発的ブームを巻き起こしたのである。遅れた青年であった小生も追っかけた。 ◆つかに刺激されて演劇人の噴出 そして、高校や大学の頃に”つか”に出会った若者たちの中から多くの演劇人が登場してくる。著名な演劇人では、扉座の横内健介、キャラメルボックスの成井豊、離風霊船の大橋泰彦、自転車キンクリートの飯島早苗、MOPのマキノノゾミ、新感線のいのうえひでのりなど、これは氷山の一角でしかない。 ◆30年前の作品であったのか こう、もそもそ振り返ってみて驚いた。これはもう30年も前の出来事ではないか。昨晩稽古していたが、そんなこと、つまり時代の古さを全く感じていなかった。万華鏡は1990年にこの市民演劇祭で既に上演もしているのにも拘わらず、この現在、今やっていて活き活きとして面白いのだ。そして全身が熱くなって動脈が高鳴って来るのである。つかこうへいのこの「熱海殺人事件」はまぎれもなく戦後を代表する名作の一本である。 |