孤独な若者たちを応援したい 演出堀 江 辰 男
人は生まれた時代の政治経済や技術・文化的環境の影響を受け成長していきます。
■テレビっ子
一九六〇年代に生まれた世代は、物心がついた時にはテレビがあり、青年期は、それまでの時代と異なり、日米安保条約反対などの政治の季節は終わり、物質的に豊かな生活にどっぷり浸かることになります。
■テレビゲーム
一九七〇年代に生まれた世代は、テレビゲーム世代でしょう。子どもが勉強そっちのけでゲームに夢中になり、親たちを随分心配させました。この世代には、時にゲーム感覚で物事を見、行動する傾向があるかも知れません。
■いじめ・オタク
一九八〇年代〜九〇年代はどうか。一つはいじめが社会問題としてクローズアップしてきます。そしてもう一つがオタクです。現実・リアルなものよりバーチャルなものに魅力を感じる若者が増加します。生身の人間の痛みを喪失したかと思われるゲーム的、オタク的犯罪が現れて人々を震撼させることにもなります。それは今へ続いていると言ってよいでしょう。オタクは、今は秋葉系というような呼び方で市民権を得てきてもいます。
■さらに携帯電話
そして今の世代はと言えば、携帯にどっぷり浸かっている分けです。この世代がこれからどのような考え方や行動形式を持つのか、それは分かりません。ただ前の世代のゲーム感覚、オタク的生活感覚が終わって次ではなく、この二つにさらに携帯電話が積み重ねられてきているわけです。ゲームはご承知の通り、任天堂とソニーを典型として日本の大きな産業であり輸出産業として外貨を稼いでいます。そして、この三つは、青年期で卒業とはならないで大人の時代へと引き継がれて、日本社会全体の雰囲気を醸し出しているようにも思われます。
何か論文みたいで面白くなくて恐縮ですが、以上の時代感覚は、一方で非常に批判的で、憂える意見がたくさん出てきます。例えば「相手に伝えずらいことを努力して口で伝える。伝えようと努力するから人間関係が深まる」などです。
■電車男
さて、今回の電車男は、「2ちゃんねる」という電子掲示板サイト(集合体)のプログ(ウェブログweblogを省略した語。ホームページの形式の一種)を素材としました。このプログは、新潮社より中野独人著(インターネットの掲示板に集う独身の人たちという架空の名前)「電車男」として出版され、一〇〇万部突破したといわれます。そして、テレビ、映画、舞台で紹介さましたから、皆さまの中にも観た方も多いと思います。
■絆の崩壊
ここに書き込まれたことは、もしかして作り話、つまりバーチャルな世界かもしれません。しかし、人々の間の絆・信頼関係が崩壊し、自分を喪失したり、他の人とコミニュケーションから遠ざかってしまった孤独な若者たちの夢や願いのようなものを強く感じました。それは匿名だから書けたかも知れません。無責任なのかも知れません。でも、真っ直ぐ受け止め応援したくなる気持ち掻き立ててくれたのです。前述の三つの状況を作り出したのは、取りも直さず大人にこそ責任があるのですから。
■明日への希望を
最期になりましたが、当日は力を緩めて、舞台の中で若者たちと一緒になって夢を見、明日への希望へと繋げて下さることを切に念願しています。
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