宝塚宙組公演「風と共に去りぬ」 10/20 マチネ 浜松アクトシティ

 台風23号、東海地方大接近! そんな中行ってきましたとも、「風と共に去りぬ」浜松公演。
 アクト3階席、しかもかなり後ろ。オペラなしじゃ、豆粒〜。うう。オペラなしの連れが退屈そうにしてました。でも貸すと私が観えないんだよぅ。今度は一番前で観たいって……そりゃあ簡単にとれるならそうするけどさあ。
 と、それはさておき、感想おば。 和央ようかさんレット・バトラーは、すんごく出番多いわけじゃないんだけどさすがはトップだけあって、存在感がありました。つーか宝塚は主役を主役に見せるのが巧いと思う。主役が、ここに! とパッと見てわかる。肌を黒くして、髭をちょちょっとつけているのがポイントね(笑)
  酔っ払っているシーンとか、舞台の前振り&閉めの語りとか苦悩が伝わってきて、繊細なレットに見えました。語尾が頻繁にくりんと上がるの(ポケモンのシゲルの独特の言い方、さーとしくーんっていうのを思い出しちゃった…)だけはどーっしても気になったというか、シリアスな場面でもうっかり笑ってしまうんだけどー。あのわざとらしさも宝塚の色の一つかもしんないなぁと思う。そこで歌入りますかーって時でも、すぐにワンマンステージな世界に切り替わっちゃうのが素敵だよ。歌っている時のカッコつけ表情や仕草にときめいてみたりしました。タラに戻る時、レットが馬車を運転するのはいいんですが、後ろでスカーレットが銃構えているのもいいんですが、馬がなくちゃ子供のお遊びに見えるよーう。

 スカーレット・オハラは花總まりさん。能面をつけたようなニッて笑顔が怖い〜。普通の顔との切り替えのポイントが絶妙で、細かいところで笑わせていただきました。レットに高い価格でダンスを申し込まれて、口先だけ仕方ないわと言って踊るとこのたくらんでいるっぽい笑みがしょっぱなから素敵でございました。映画で見た逞しい女性像は感じなかったかなぁ。子悪魔っぽく見えた。線が細く小柄ってこともあって、割と歳になっても少女でいられる人だと思った。実際、役者さんはお幾つなのだろう。ドレス、似合ってたー。スカーレットが二人いたのは最初びっくりした。もう一人の自分との言い合いという試みは面白いと思った。心のスカーレット(こちらは静岡出身!故郷に錦だぁ…)も何だか可愛かったな。
  スカーレットの内面を描くという意味ではどうにかまとまった舞台なんじゃないかしら。まあダイジェストちっくなのは拭えませんでしたがー。大感動巨編だけに仕方ないのかなぁとは思う。
  アシュレ・ウィルクスは初風緑さん。あー、今度エリザベートでルドルフやる人? 駄目っぷりがとてもとてもとても良くでていたと思う。歌もまあまあなんじゃないかな。私的に風と共に去りぬで一番印象に強い人物はメラニーなんですが、かなりそれらしい感じでした。パンフ買わなかったので、役者さんの名前がわからない〜。メラニーの死もじっくり書かれたわけではなかったんだけど、うっかりと目に涙が滲みました。舞台観て、でははじめての経験だったかもしれないなぁ。ジーンとするくらいはあったけど、うん。演技に乗せられてというより、映画で見たメラニーを思い出して……っていう感じなんだけどね。少なくともメラニーが好きだということを思い出させてくれるメラニーではあったんだよ。マダムとのやりとりはどれもジーンとしたよ〜。死ぬときに離れたところで祈っているところに感情移入。ぱっと見の印象というか女性が大勢いるとどこにいるのかわからなくなっちゃうところが残念といえば残念、しかしメラニーらしいといえばメラニーらしいかったかな。

 他では、黒人女性のお手伝いさん’Sが印象に残った。映画のイメージに、そして黒人のお手伝いさんらしい雰囲気に、近かったと思う。
 ……で、えーと、それ以外の人がいまいち役どころつかめずに終わった……なんて言えないわ。若者代表とか、南の貴族代表とか、そんな風にしか捕らえらないまま終わっちゃった。スカーレットの妹とか、娘とかは結局でてこなかった……はず。
 はじまった時からスカーレットは未亡人で、南の町のバザーから本編ははじまる。んで、一幕のラストはタラに戻って、土持ってタラがあるわーと言うところ。スカーレットは普段男役の人がやってもいいような気がする。特にこの場面。ニ幕は税金を理由に土地を取り上げられる〜ってところから。そしてあっさり唯一のお金持ちレットと結婚することを決め(妹の婚約者奪うエピソードはなし)、本当にさくっと結婚しちゃう。んで、メラニーが死に、アシュレに見切りをつけ、レットが一番大事だと気がつくところで終わる。
  娘の死がないと、レットがもう駄目だと思ったのも、一人で立ち直ってくれっていうのも、いまいち説得力が足りない気がした。時間が掛かりすぎて、レットがもう駄目だというところにまで到ってしまったのは理屈ではわかるんだけど、それがラスト付近にレットの横を素通りしてアシュレのところに行くシーンだとは思うんだけど、うーん、やっぱり、あちこち描写不足ー。オール歌のミュージカルならこのくらい飛ばしても許せるんだけどなぁ。あと全体的に、男役の人少し歌の声聞き取りづらい。声作っているからだというのはわかるけど、もう一歩。台詞の間違え&言い直しが多すぎな気がしました。まだツアーはじまったばかりだし、これからだよね? 地方公演ゆえかもしれないけど舞台セットもこじんまりだった……と思ったけど、これはめちゃめちゃ後ろの席だったからかもしれない。
 で、ショーといえば、今回はないのかなーと思っていたレビュー。短かったけどありました。わーい。あの煌びやかな世界は好きなんだよねぇ。これぞ宝塚、これぞショー!! って感じ。どーのこーのと楽しい気分になって帰路につきました。


ハンガリー国立歌劇場オペラ「リゴレット」 10/25ソワレ 浜松アクトシティ大ホール

指揮 マダム・メドヴェツキー マントヴァ伯爵:アッティラ・フェケテ ジルダ:ステファニア・ボンファデッリ リゴレット:レナート・ブルゾン

 ざくっとあらすじ
 
女好きのマントヴァ公爵に仕える道化師リゴレットは口の悪さから廷臣より怒りを買っている。リゴレットは娘を公爵に汚されたモンテローネ伯爵を笑いものにして、呪いの言葉を吐かれる。リゴレットには密かに娘ジルダを育てていた。箱入り娘ジルダは教会で出逢ったマントヴァ公爵に言い寄られて有頂天になる。その後ジルダはリゴレットへの復讐のために廷臣たちに浚われマントヴァに献上されてしまう。大事な娘を手篭めにされ怒ったリゴレットは殺し屋スパラフチーネに公爵殺しを依頼する。ジルダは身代わりになって殺される。リゴレットは「あの呪いだ!」 と叫び、ジルダの死体に倒れ付す。

 本格的に海外オペラは初です。当日指定の券で行ったら、なんと4階建てのホールの一番後ろでした。先日が豆粒なら、こっちは米粒です。アクト大ホールの屋根ってすんげー高いなぁと思っていたけど、案外客席と近いんだねぇ。遠すぎて字幕が視力検査状態でした。字によっては読める、ちょっとごちゃごちゃしてくるとさくっとは読み取れないという。大筋は予習していたし、舞台を観たいし、どのみち字幕をしっかり読むつもりはなかったんですが、やっぱある程度は見ないとストーリーがわからん……。ああ、でも役者さんも観たい〜てなワケで、オペラで右を見たり、左を見たりと大忙しでした。中盤、終盤に行くにつれて、字幕はちら見でもさして問題なくなりました。慣れたというのもあるけど、盛り上がっていくにつれて、ああ、ここは「愛」を歌っている、「悲しみ」を歌っているというのが、まああらすじ知っているという前提でだけど、表情、動き、歌、オケの伴奏だけでも、十分に伝わってきたんですよ。すごーい。オケと歌が一体だし、ストーリーとも合う。終わった後、本物の音を聴いたなぁという満足感を得ました。劇としてもばっちり。リゴレットは滑稽なあらすじに見えて、めちゃめちゃ悲劇なんですが、本気で気分がずしーんと重くなりました。やりきれなーい。ラストで殺したはずの公爵がのうのうと歌っている演出って効果的だよー。酷いっ! と、むかむかした。別にね、公爵が死ねばよかったって思ったワケじゃないのよー。憎めない公爵だし、歌とか容姿も素敵だったと思うの。それだけリゴレットに感情移入しちゃったってことなのよぅ。ラストの親子のお別れは、長くひっぱりすぎってくらいでしたが、死に目は長いくらいのほうがやはり好みらしい。好みのものを観て暗い気持ちで帰るってどーよ。

 リゴレットの、滑稽に振舞う彼の内面の暗さや怒りががっつり伝わりました。欲を言えば、もうちょっと道化としての顔も楽しみたかったかも(欲言い過ぎ)。ラストの号泣も勿論ですが、序盤、鏡の前で一人苦悩する場面とかして、重くて苦しい。鏡に殺し屋が映っている場面はどきどきしました。殺し屋さんもカッコイイね。登場した時から、殺し屋〜って感じでかっこよかったよ。出番のわりに印象に残ったな。妹もね〜。公爵とのじっくりたっぷり情事は、オペラとしての気品は残ってはいたとは思うけど、生々しかったです。公爵も、容姿も声もいかにもテノール〜って感じで素敵。どこにいてもあ、公爵だーって思える華やかさがあった。明るめな歌が多くて、聴いてて心地よかった。一部リゴレット親子に肩入れして、むかむかむか〜とはしたものの、やっぱり憎めないキャラでした。うう。でも酷いよ〜。
  そして娘ジルダ! 美しいし、可愛いし、言うことなし。今回印象に残ったのは、この人です。一幕の父との二重奏の美しいこと! 娘を案じ、愛している歌。父を慕い、でも少し窮屈に感じているのが感じられた。第一部でジルダがかなりきんきんきんきんなファルセット使うところがあるんですが、きーんとは来たけどしっかり歌として成立してて、ああ、綺麗だったな、今のすごかったなとちょっとだけ後になって思いました。優しい雰囲気の容姿も、人の声じゃなーいってソプラノも当然よいのだけど、演技もいいんだ。ふんわりした喜怒哀楽の表現もとてもよかった。恋して浮かれて頬杖ついているとろけるような顔は可愛いし、手篭めにされる直前、ペンダントと顔を交互に見て、公爵の嘘を知り、愕然とも困惑ともとれる、え、え!? って顔も印象に残りました。清らかな娘らしかった。男装も可愛いかったし、純粋さにも違和感がない、魅力的なジルダでした。公爵のかわりに死を決意するところも、殺す相手を許しているところも、心の底からの優しさを感じた。彼女がいる場面では、彼女ばかりを目で追ってしまいました。一部声はすれども姿は〜で、探したりもしちゃったけどね。オペラは不便〜。

 舞台装置も好みだったな。迫力こそないけど、木目を基調に、いかにもヨーロッパの〜って感じで統一されてて、品があったよ。音楽としても勿論ですが、劇としてもすごーくよかった。ばっちり引き込まれました。ところで海外の本格オペラは初めてだったんですが、幕間のたびにカテコやるのって普通なの? 本格的なのじゃなくて、メインの数人が出てきて手を繋いでお辞儀して〜ってだけの簡単なやつなんですが、そういうの初めてだったからびっくりした。そしてラストのカテコは盛大な盛り上がりでした。……出演者だけが。オペラって4回が普通のはずだけど、えーと……途切れがないので、何回とは言えないんだけど普通のカテコを二度くらいした後、一人ずつ幕の間から出てきて、一人づつお辞儀して〜というのを二度繰り返して、最後に皆でお辞儀して、それ終わった後、またひょっこり歌手が顔出したりして……。な、長い……。あの〜お客さん、一度目のカテコの時から、かなりの数、外に出はじめているんですが〜。二度目ではさらに外に出て、最後まで拍手している人ってそんなにいなかったと思うんだけど。いや、私はいいもの観せてもらったし礼儀だろーと思って、最後までいっぱい拍手しましたけどね。おかげで手が痛くなりました(笑)。あと礼儀といえば、カテコの時、結構フラッシュ光ってたんだけど、いいんか? まあ許可とっている人の可能性もあるにはあるけどさー。それと、ブラボーって掛け声が頻繁に聞えました。うーん、オペラって感じだ。
 劇として観ても、伏線はしっかり張られていたし、構成もわかりやすいし、大きな破綻もなくて楽しめました。ただ感情の部分はかっ飛ばし〜ではあったかな。しかしオール歌だと全然気にならない。歌で愛してるんだよ〜ってやられると、スピード成就でも、なるなる、と納得できるんだよね。歌って不思議。特にラストのやりきれなさは歌で表現しているからこそ、あれだけ胸に残ったんだと思うな。胸にというか、耳にというか……。歌ってやっぱり不思議な魅力あるよ。大満足v

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