CLUB SEVEN 3rd STAGE 10/28 品川exクラブ

構成・演出・振付・出演:玉野和紀

出演:
香寿たつき/笹本玲奈/泉見洋平/西村直人/原知宏/桜木涼

一番のお目当ては勿論泉見さん(笑)。ん、でもそれ差し引いても楽しい舞台でしたけど!
七変化! いや、七なんてもんじゃない二十変化くらい? すごーいいろいろな姿の泉見さん他6名(マテ)が拝見できました。華やかなドレス姿から始まり、紳士なかっこ、犬のかっこect。どれもしゃれにならないくらい似合うんですけど。特に女装、可愛すぎて笑えません。でも泉見さん全体的に大人しかったよーな。みんなで踊る時たまーにたまーに踊ってたけど、基本的に難しいやつは踊らないし、それにどうにか振り付けを真似しているような印象でまだ自分のものになってない気がしたよ。まあ、ダンス専門の人じゃないもんね。その分歌は多かった。かなり目立ってたというか、構成に目立たせてもらってた気がする。泉見さんのソロで玉野さんがタップダンス踊ったりとかね。かっこよかったー。ただ出番のタイミングのせいか、基本的に異質な存在っぽかった気もする。ゲストっぽいわ。次回はなさそーだなぁ。

玲奈ちゃんもかなり歌ってたな。演技も歌もダンスもバランスよく出演。なんとタップダンスまでも上手で、普段も、もっと踊る役やってほしいなーと思った。あとコメディもやってほしい。なんでもこなせるスーパー舞台女優!
特にラストのヒット曲50音順メドレー77曲の時、めちゃめちゃ活躍していた。
香寿さんも女性が少ないからってのも勿論あるけど、メドレーでもミュージカルでも何気にヒロイン? メドレーでは多分宝塚の時のナンバーらしいものをそれらしい衣装で歌ってくれたよー。ダンスでは男性の格好もして、それがまたかっこいいんだ。元宝塚トップというのは頭では知ってても、実は女優さんとしての彼女しか知らなかったので、かっこいい香寿さんにお目にかかったのは初めてでした。す、素敵すぎる〜。ていうか、出演者の名前でも最初に挙がるし、何気に主役?  女性二人が光ってた舞台だったなぁ。

あ、もちろん、他の方々も素敵でした。
玉野さんのタップダンスには魅せられっぱなし。リーダーとしてぐいぐいひっぱってってるとこもね。
ていうかほんと、全体的によかったよ。コミカル(家族なコントとか楽しすぎ。観客を近所の女の子に見立てて舞台上に招いたり)でシリアス(終盤の小ミュージカルは超ベタな内容だけどしんみりしちゃったよー、ガヴローシュみたいな玲奈ちゃんがかわいく健気!)で芸術的(ダンスかっこいー。歌も聴かせるとこもいいし)。いろんなものが見れる楽しいショーでしたよん。欲を言えばビデオ映像はもうちょっと少なくてもよかったかな。息を整えるための時間なのかもしれないけどさ。生でいろんなものが観たかった。あと、何気に参加型なところも楽しかった。誕生日の人にブロマイドプレゼント(しかも玉野さん手渡し)とか、前日焼肉食べた人にプレゼントとか、あっていいなーって感じでした。最前列だと、すごいステージ近い上に、かなりの確率で話しかけてもらえてて、いいなーって思った。あとBブロックもいいなぁ。正面からダンスみたかったよっ。

 今回特に面白かったのは、CLUBSEVEN名物らしい50音順メドレー。全77曲!
 コミカルだったりシリアスだったりな小芝居がいっぱい組み合わさった、すげー面白いメドレーでした。曲は基本的にみんな知ってるよーなものばかりで、泉見さんのオレンジレンジとか希少なものが聴けました。ロート製薬のCMも希少だ‥‥。
 特に笑ったのはカ行。前の曲の時の小劇で撃たれた玲奈ちゃんに泉見さんが駆け寄って(ケ)「怪我してるどこも血だらけだー♪」「大丈夫、ムッシュウマリウス〜♪♪」。かなりウケてました。玲奈ちゃん息絶え後は、曲は(コ)「言葉にならない〜♪」と、泉見さんのカフェソングに切り替わる。さらにその後、なぜか玲奈は「呼吸を止めて一秒貴方真剣な目をしたから〜♪」と立ち上がり、楽しげに歌うし。あと「オン・マイ・オウン」もちょっと歌ったよ。エポちゃんとか呼ばれてた。得した気分♪ 「恵みの雨」が流れた時、ももももも、もしかしてミス・サイゴンも〜とかなり期待しましたが、なかったです。レミゼほど有名じゃないからか、トゥイキムのナンバーが有名じゃないからか。ざんねーん。玲奈ちゃんでなく、泉見さんが撃たれればよかったのになぁ。

 色々楽しめるエンターテイメントショーで、楽しませてもらいました。会場も素敵だったしね。


NODAMAP『贋作・罪と罰』 12/28 シアターコクーン

[劇作・脚本][演出][出演]野田秀樹 [出演]三条英/松たか子 / 才谷/古田新太 溜水/宇梶剛士
段田安則/美波/マギー/右近健一/小松和重/村岡希美/中村まこと/進藤健太郎


 初野田作品、そして初シアターコクーン。結構お久しぶり〜なストレートプレイ。変わった形の劇場で、どんな演出なんだろー、と開演前からわくわくできました。 周囲に椅子が置いてあって、舞台の上にいない役者さんはそこに座ってるの。
 雪の表現する白い大きな布をはじめ、小道具は白がメイン。主役の松さんは朱赤の着物。松さん本人の持つ華もさることながら、色の効果でも目立つ。重いテーマなのにお笑い要素部分も多い、でも残った印象は「綺麗」。照明も含めて、色彩の使い方がよかったなあと思う。
 原作はそりゃあもうってほど主人公の内面を掘り下げ、うだうだうだうだと内面世界を書いているのですが(あ、でも途中からは周囲の内面のほうがクローズアップされてるかも)、舞台ではそれはなし。あえて観客に感情移入させないタイプの主人公にしたのでしょうか。オーバーでステレオタイプ的な立ち振る舞いをする主人公でした。台詞は読み上げる感じだし。なんつーか、松さんがあまりお上手でない役者さんに観えてしまうのだけど! 演出なの? 周囲が熱演って感じなので、クールな主人公として目立つし、悪くはないけど、松さんの使い方としてはちょっと残念だったかな。それならもっと演劇慣れしていない、しかし華はあるってタレントでもいいだろーと……。存在が綺麗で、罪を犯してもどこか無垢って感じはよかったんだけどね。
 固める脇は華やかさはないけど手堅い演技、重い部分は重く、コメディ部分ははっちゃけて、魅せてくれました。 野田さんなんて、何役やってたんだろ。一番テンション高かった気がする。

 そこそこ面白かったけど、大絶賛できるというほどでもないかな。わかりにくーーーいまわりくどーーーーいロシア文学な原作を幕末に置き換え、かつテーマを端的に表現していたところが評価できる。それでもまだまだわかりにくいけど(私がおばかさんなんで)、原作ほど根気いらないのはいいよね。本筋は途中までかなり同じ話で、巧い具合に置き換えてた。ラストは原作とは違うんだけど、それでも根本では同じかも、と思わせるところがすごい。
 表面的なことだけを見れば、原作はハッピーエンドで、舞台はアンハッピーエンドなんだけどね。舞台は前向きに見えても、実は雪の下に哀しさが詰まっている。ただ愛によって解放された魂ってことは共通項としてあるのかなぁと思う。
 原作では主人公は男性で、親友は当然主人公とではなく、その妹と恋に落ちる。才谷の役柄は、原作での親友と恋人二人分だったみたい。なんで女性に置き換えたのかなぁ。女性にすると綺麗な存在ってのが引き立つからかな。それとも贋作っぽさを出すためかしらん。

と、色々考えさせられる要素もあって、観てみてよかったなあと思ってます。一生読まなかったかもしれない「罪と罰」を読む切欠になったしね。


「ドン・ジョバンニ」  1/8 浜松アクトシティ

 初めて生で観たモーツァルトオペラ「ドン・ジョバンニ」。
 魔笛、フィガロの結婚とモーツァルト三大オペラと言われ、制作時期が近いだけあって、同じ思想が感じられました。下克上的で、上位の人であっても悪は罰せられる。従う者が絶対的支配者に仕返しをするっていうのは、革命に共鳴したから故の内容なのでしょうか。フィガロの結婚って内容的に、上演するのに揉めたはず。巧みにコメディにして受け入れられたフィガロ〜がまずいなら、これも時代背景的にはまずかったんじゃないかしら。コメディ的な部分もあるけど、基本的にダークな内容だしね。

さすがに音楽はもうブラボーっの一言に尽きるレベルだった。今回はオペラによくある、耳にきーーんとくる、音域の高さと長さを魅せるって感じの女性ソロがなく、落ち着いて聴いていられた。どの部分も、どの人も、声に無理して出しているって感じを全く受けなかった。すごい。
女性メインは皆ソプラノ、男性一人を除きテノールだったんだけど、同じ音域の中でも声で違うんだなぁと思った。特に召使レボレット役の人は声に特徴があって皆で歌っても目立ってた。……まあ、他の人はソロや男女のデュエットはいいんだけど、それ以上で歌うと『皆で歌ってる』って感じになって、私の耳では個別認識できなくなるんだけどさ。そういうシーンは大抵一丸になってタイトルロールであり悪の象徴であるドン・ジョバンニに反抗するようなとこなので、絶対王権に立ち向かう民衆を想起させるために、『集団』として認識されやすくするためあえて個を消す構成にしたのかもなぁ、とちょっと深読み。

悪の象徴らしく、ドン・ジョバンニのロマン・ヤーナル氏はとても魅力的でございました。長身で彫の深い顔立ち、黒いふりふり衣装がよく似合いました。演技も存在感もいい感じ。女性をゲーム的に口説く時にはどこか心のない感じでいきいきとし、神にも物怖じもせずにふてぶてしい。ドン・ジョバンニってフィガロの結婚の伯爵やリゴレットの公爵みたいに、どこか憎めない女たらしなのかと思ってたら、完全に女の敵で、まさしく悪だったわ。悪だけど魅力的。花がある。そう観えたのは演技や容貌もあったけど、やはり声の力によるところも大きいと思うわ。うわぁ、美声〜って感じでしたん。すごーく難しい役どころだと思うなぁ、ドン・ジョバンニ。

上演時間(3:10+休憩20)が長いせいか、音楽の印象なのか、間延びした印象が残った。勿論、盛り上るところはあるんだけど(終盤の追い詰めるところとか…)、全体的な旋律を、重めな部分を核にして統制をとったって感じ。舞台装置は当時のものと同じデザインだということで、場面展開も少なく、荘厳さはあるものの地味めなのは仕方ないかな。ミュージカルの源流、と考えると妙に納得できる一作でした。現代人好みにカスタマイズする前です、とでもいいましょうか。古きよき物を知れたって感じで、行ってよかったなって思ってます。

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