「ベガーズオペラ」日生劇場 06/1/19 ソワレ

キャスト/内野聖陽 嶋政宏 村井国夫 橋本さとし 金田龍之介 島田歌穂 笹本玲奈 森公美子

 初日生、今年初めて観るミュージカル〜♪ というわけで、ベガーズオペラ初演です。前評判はやったら高かったけど、蓋を開けてみると世間では賛否両論? 再演はあるのでしょーか。
  私が大好きなオール歌タイプのミュージカルではないってことで正直、観る前は好みではないかもなー……と思ってました。劇中劇の形をとるのも微妙だなぁと思ってました。フィクションの中のフィクションって、夢オチに近いかなぁと思うのですよ。細部は適当でも、現実でないから問題なしってことだし。それって諸刃よねぇ……なんて思ってたんですが、が! 新しい試みを観ること自体好きってことも手伝って、実際にはかーなーりツボ突かれました。一粒で二度美味しいとはこのこと。中の中の人(メインストーリーにあたる部分のキャラ)も愛しいのですが、中の人(その役をやっている本来乞食の役者さん)にも愛着が感じられたのが自分的によかった気がする。

 なんでかなー他の舞台は割と冷静に楽しめるのに東宝作品はうっかりキャラ萌えしてしまう。今回の萌えは、橋本トムと笹本ポリー。橋本さんはフィルチではなく、その中身に萌えたのですよ。メガネ萌えだし、幕間の「あんまり餌あげないで、さっきから見てると動物園状態じゃないか」とか、ラストのやけくそいじけっぷり→ルーシー追いかけ〜とか楽しすぎ、愛しすぎ。超ツボ。舞台の端をよくうろうろしてたけど、どこまでがフィルチでどこまでがトムなのか判断つきかねました。笹本さんはマーガレットよりポリーですねぇ。中の中の人。夢みる乙女っぷりが超可愛かった。笹本さんは暗めの役柄も上手にこなすけど、明るい役やってるときの方が好き。CLUBSEVENの時も思ったけどコメディ似合うよねぇ。悪人中流家庭の中に咲いた一輪の花って感じで、歌も演技もあってたし、ドレスも似合ってる。ちょい芝居がかった夢みがちっぷりやオーバーアクションが、実は娼婦が演じているヒロインとしても、マクヒースに夢みまくり、恋に夢みまくり、をちょっと冷静に判断しつつ演じているって感じがしました。歌穂さんルーシーとの掛け合いもよかったな。うっかり殺しちゃおうとするとことか、やばいよそれ、と突っ込みつつ、なんか笑えた。
 うっちーマクヒースもよかった。かなり悪なのに憎めない、エロキャラ。登場早々(でも登場は遅い)、ポリー押し倒し。未成年(多分)相手に、いいのーーー、って感じ。トートとは正反対ってくらいにキャラ違うねー。月9不機嫌なジーンの教授に系統近いキャラだなぁと思った。どっちもハマるから不思議。この舞台、1幕のラスト、うっちーが出てからが途端に面白くなります。それまでは説明的というか、ちょっと冗長な感じがしたかな。2幕、3幕は面白かった。あと、幕間がめっさおもろかった。
幕間には森久美子さんが差し入れを食べてくれます。動物園みたい……って思ってたら、餌をあんまりあげないでくださいって橋本さんが突っ込んでた。楽しい〜。二階席だったんだけど、幕間だけでも下に降りてもよかったかも。

 舞台装置と演出、特に光の演出がとっても好みでした。くらぼったい舞台の中に差し込む光の模様が綺麗でうっとり。舞台いっぱいに、世界が築き上げられてた。舞台の上に、ステージサイド席っていうのもあったんですが、ここが美味しすぎ。舞台の真ん中に引き寄せられたり、語りかけてもらったり、開演前には掃除させられたりと、多分、1階前方席も含めてベガーズの舞台を見に来ている観客、という設定で舞台に参加しているんだと思う。面白い試み。ていうかさー、ご贔屓間近で観れるって美味しすぎよねぇ。再演あったら、ステージサイド席で観たいなぁ。
  ところでパンフ見る限り、中の人の関係は、ルーシー→←トム←マーガレット←マッコリ、なのでしょうか。終盤、ルーシーがよく男性絡んでいる男性がいたけど、誰なのかわからん。そしてそれが気になっている。今回のパンフ、舞台写真とかはないから薄いけど、内容が面白かったわ。
 と、こんな感じでトータルで満足しました。DVD、多分買っちゃうだろうなぁ。


音楽座ミュージカル「とってもゴースト」静岡公演 06/1/29

超近場&手ごろ価格(S席4000円、しかもパンフ付…東京だと1万近いのになぁ)&鈴木ほのかさん主演ってことで、再び音楽座です。
鈴木ほのかさんは、むかーしグインサーガ50巻発売記念(もう100巻超えてます…)ミュージカルの時に観ているらしいけど、ほぼ初見。初演エレン〜ってこともあって、ぜひぜひもう一度観てみたいと思っていたのですよ。今回はそれが叶いました。歌がすごーい。のびやかで膨らみがあって、しかも声量あるし、とっても素敵。声に華があるって思った。彼女が歌うとぱっと舞台が引き締まる感じがした。他の舞台でも観たい、聴きたい。かなり好み。ヒロインのユキはツンデレ系なんですが、キャリアウーマンっぽさも、恋する中年さしかかり女性っぷりも可愛かった。
 音楽座のミュージカルはどうやら演劇がメインで歌を頻繁に挿入、ダンスもちょっと入れてみました感じ。
舞台装置のそのものは地方の小さな劇場ってこともあってシンプル。ファッションショーから始まるのですが、衣装が時代設定を暗黙に教えてくれる、ちょっと前の時代の前衛的な華やかさを演出。おおー、かっこいい。
ストーリーはいたってシンプルで、シンデレラのエピソードをところどころに散りばめている。ロマンティックな演出をしつつ、予想通りに話は展開され、こうなるといいなーと思った通りのラストになる。だからつまらないというのではなくて、それが心地いいと思えるのです。王道でシンプルなストーリーは好きです。欲を言えば、主役二人が恋に落ちる部分にもうちょっとフォローが欲しかったかな。恋に落ちましたーってナンバーもなかった気がするし(個人的にはミュージカルならそれがあればOKなんです…)。あと、前にマドモアゼルモーツァルト観た時も思ったけど、ここの場面を魅せたいんです! ってところもサクッと流してくれるとバランスよくなりそーな気がするんだけどなー。音楽座の役者さんは長身な方が多く年代も高め? 華やかさはそれほどないけど(でも広田勇二さんの顔の濃さは癖になりつつある…、M.Aにも出るし密かに応援)しっとりした魅力があると思う。主役格は歌の掛け合いも巧いし、聴きごたえある。ダンスは上手いんだろうけど、無理には挿入しなくていい気がするなぁ。バレエシーンとか、綺麗だったけどね。
 現代日本が舞台のミュージカルって何気に初めて観た気がするけど、案外いいかもって思った。素直に楽しめるというか。いろいろお得だったし、行ってよかった。


「アルジャーノンに花束を」 静岡公演 静岡市民文化会館 中ホール 06/3/8

チャーリー/浦井健治、アルジャーノン/森新吾、アリス/安寿ミラ、永山たかし、宮川浩、小田島クリスティン、小野妃香里、朝澄けい、戸井勝海

 ミュージカル「アルジャーノンに花束を」を観てきました。
 前回に引き続き、こんな田舎に来てくれてありがとーっ、な公演です。
 原作は既読。かなり好きです。が、ほどよく忘れてます。だからいい感じに楽しめました。
ラストのあの言葉には原作同様、じーーーん……。
いい感じに舞台化されてたと思います。全体的なまとめ方がよくて、いい感じにコンパクトになってた。 役者さんも実力派揃いで、演技もよかった。浦井君が、すごーく頑張ってるなぁと思った。序盤、そしてラストのロレツがまわってない低知能状態も、高知能の嫌な人っぷりもハマってた。特に低知能時の笑顔が眩しかった。終盤の涙交じりの苦悩と、戻ってしまった笑顔の落差は切ないよ。
 あと、演出が面白かったな。ねずみアルジャーノン役の森新吾さんは、台詞がアルジャーノンとしてはない(子供チャーリー役では少しあった)んですが、その分しなやかなダンスでやるせなさとか苦悩とか、感情を表現していました。役回りとしてはモーツァルト! のアマデウスに近いかな。彼の存在によって舞台にミステリアスな雰囲気が漂っていました。あと、宮川さんと戸井さんの手堅い実力派(だと思う)お二人。時に医者、時にパン屋の仲間と一つひとつの役回りこそ小さいものの、ナンバーはしっかり与えられてたし、常に舞台の中心よりちょっとだけずれたところにいた。目まぐるしく舞台の上でお着替えしたりしてね。戸井さんエプロンつけるところがなんか可愛かったよ。アルジャーノンと子供チャーリー、母ヒルダと大人になった妹ノーマなど、一人がやる二役、三役のバランスが絶妙で、具体的にはよくわからなくても深い意味がありそうに思えました。
 ただ、歌についてはもう一歩だったかも。ナンバーが個人的にいまいちって思った。一曲一曲は悪くないけど、統一性にいまひとつ欠けている気がしたんだ。これいいな、って歌もあったんだけどね。浦井君が歌った1幕ラストの歌とか好きです。あと、メインナンバーの「僕はかしこくなりたい」かな。歌い手は皆さんお上手で安心して聴けるし、よかったんだけどなぁ。歌の取り入れ方そのものが不自然というか、好みでないというか。
 正直、ストプレでじっくり演技を観たかった気もする。といいつつ、ミュージカルだから醸し出せた雰囲気があったといえばあった気もする。よしわかった、じゃあこうしよう。ストプレでも観てみたい作品でした、とね。


劇団四季「オペラ座の怪人」 4/1

怪人/高井 治  クリス/苫田亜沙子  ラウル/ 柳瀬大輔
カルロッタ/岩本潤子  メグ/ 宮内麻衣 マダム・ジリー/戸田愛子
アンドレ/ 寺田真実  フィルマン/小林克人  ピアンジ/半場俊一郎  ジョセフ/ 岡 智

昨年の夏以来のオペラ座です。キャストも大きく変わってます。キャスト違うと、印象も変わりますね。
特にクリスとラウルの関係が違うものに見えた。一口に幼馴染みといっても色々あるよね。当時クリスは少女に差し掛かりの幼女、ラウルは青年差し掛かりの少年で、当時クリスの身長はラウルの腰までしかなくて「大人になったらロッテがお兄ちゃんのお嫁さんになってあげる」「ははは。光栄だなぁ、お姫さま」(勿論、当時は本気ではない)とやりとりしてたんじゃないかしら。年の差カップルな二人も素敵。

苫田さんクリスティーヌは声も容姿もぽややーって感じで夢みる少女っぽい。
劇場支配人の『何かを夢みているような少女』 という紹介がぴったり。カルロッタのスインク・オブ・ミーを聴いてる時のちょっと拗ねたような感じで、服の肩のあたりを弄っているところが可愛いくて、そこで今回はクリス視点で観ることに決定しました。お歌も結構よかったと思うのですが、台詞時の声が作りすぎってくらいかわゆく、そっちのインパクトが強すぎて肝心の歌が私の中でかき消されてしまった気がっ。あ、でもラストの三重奏はすごくよかったわ。
柳瀬さんラウルはナイスミドルな紳士で、大人の包容力でもってクリスを護ろうとしているように見えました。
密かにかーなーりー観たかったのですよ、柳瀬さんラウル。かなり注目していたせいで、ラウルの出番が増えたような気がした(絶対気のせいです)。 ファントムと戦ってみたり、マダム・ジリーを怪しんでみたり、首を気をつけつつ穴に飛び込んでみたり。映画だと頭の罠を気をつけてたら穴に落ちちゃったけど、舞台だと自分から飛び降りたように見えた。罠かもしれないけど、この先にクリスがいるかも! ってことで飛び込むほうがカッコイイよねぇ。真偽は謎だけど、私の中では自分から飛び込んだことにしておこう。
すごーくクリスを慈しんでいるラウルですねぇ。目に入れても痛くないってくらい可愛がってるのが随所に現れていた。それだけに、ラストで首に縄つけられたシーンで、もがきながらファントムにキスするクリスから目を逸らすところが痛々しかった。
高井さんは、哀愁が漂ってるファントムだなぁと思いました。身体の動きとオーラと歌から感情が滲んできた。
ファントムって仮面で顔を隠し、全身でファントムという存在全てを現さないといけない託される難しい役だと思うのですが、高井さんファントムは後姿でもしっかりファントムでした。背中でも演技してるってこのことねー、なんて関心したものです。
もちろん、他の人たちも素敵。さすが四季のロングラン公演! な完成度です。

トータルで文句のつけようもない素敵な公演でした。
1回目は全体像楽しんだけど、今回はキャラクター個人を追えた気がします。やっぱりまた観たくなってる。オペラ座は日を空けて、何度となく観たい演目みたいです。


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