富士山と音楽 「曲目一覧へ」
富士山に会いに行く為に車に機材を積む夜。
通りには車ほとんど通っていない。
家からの明かりだけが通りを照らしだす。
車に機材を積み終わりMDのスイッチを入れる。
作りたてのsinglsが流れ出す。
さぁ出発だ。
車は国道1号線に入り昼とは違ったトラックだらけの道となる。
トラックのテールランプを追うように車を走らせる。
後ろからはトラックのヘッドランプが眩しくこちらを攻め立ててくる。
昼間では考えられないぐらいのスピードで夜の国道は動いている。
軽い眠気と戦いながら僕は歌を口ずさむ。
途中で買ったペットボトルの水を飲みながらトラックを追う。
時々空を気にしながら。
富士の道の駅につく頃にはうっすらと富士山の姿も確認できる程になっていて、またそれが心を踊らせ眠気を吹き飛ばしてくれる。
さあ今日はどこから撮ろうか。
道の駅で僕は地図を広げひと休みする。
多貫湖へと続く道、僕はオリジナルラブの曲に乗って車を走らせる。
まだ道は暗いのに車の中ではノリノリの自分がいる。
Dear Baby/
「ディーアベイビー」なんて歌いながら。
眠気の中でテンションがあがっているのか、それとも撮影地に近づく事によってのハイテンションなのか、どちらにせよ人には見せられないぐらいのハイテンションの自分がいる。
軽く振りがついていたりして・・・
多貫湖からの帰りなのか他からの帰りなのか、変則の交差点で僕は車の窓を少し開けてB'zを歌いながら春の風を浴びている。
さまよえる蒼い弾丸/
「風のつよーい日はアレルギー・・・」
まだ5月と言っても富士山の近くは風が冷たい。
山中湖の駐車場で夜、後ろの座席を倒して毛布に包まりMISIAの「つつみ込むように・・・」を聞いて寂しさと寒さをまぎらわす。
気にしないで聞いていた曲だったが、周りが真っ暗なせいか音だけが心に響く。
彼女の声に聞き入ってしまい何度も繰り返した。
駐車場の近くのコンビニで僕は暖かい弁当を買って少しの幸せを感じる。
鳴沢の道の駅に夜ついた僕は自動販売機へと急いだ。
車の中にはブリリアントグリーンの曲がひっそりと流れていた。
There will be love there/
「大きな曲り角をまがったならー走り出そう。」
5月に道の駅には夜と言う事もあってほとんどと言っても良い程車がいない。
自分だけの駐車場みたいな気持ちになったりもする。
寒いからと言って暖かい飲み物だけを買う訳ではなかった。
そこにはラーメンやフライドポテトと言ったものまで自動販売機で売られている。
どちらも寒い時期にはとても上手い。
朝になって僕はトイレの洗面所で顔を洗う。
トイレと言っても観光客が来る所だからとてもきれいだ。
でもやっぱりそこに来る観光客は僕の行動を不自然だと感じたらしい。
ある日、僕が顔を洗っていると清掃のおばさんが言った。
「この水は冷たいでしょう。外に出ている水と一緒で、富士山の雪解け水ですからねぇ。」と。
僕は勝ったような気がした。
それは僕がトイレの洗面所で顔を洗う事を気にしている人達は、みな外の不自然な人工の岩から流されているトイレと同じ岩清水を嬉しそうにペットボトルなどに汲んで美味しそうに飲んでいたから。
それを知ってから僕がその岩清水を飲む事はなかったが、その水を汲んでいる人を見るととても楽しくなる。
山中湖の駐車場より反対の岸で夜明けを待っていた。
車の中ではDA PUMP。
そこは道の横にできた車1台分しかない場所。
横をギリギリで車が通り過ぎる。
やっぱり僕はノリノリで歌っている。
Feelin'Good/
「フィーリングー」
ごきげん/
「・・・・ごきげん!」
2曲も・・・
車が間違ってバックしようものなら後ろには蓋のないマンホールがある。
空気がやけに湿っぽいせいか富士山の姿がハッキリと見えない。
嫌な予感は当たってしまい、富士山にはもやがかかったままだった。
撮影ができないまま僕はそこから移動した。
撮影を終え帰路につく。
今回も何かしら撮れたので満足はしているが、帰って来るきっかけは天候の崩れ。
助手席にはさっき食べたコンビニ弁当のゴミと空になった500ミリのペットボトル数本。
そして静岡の地図と自分で作ったMDのsingls。
グレーの空に窓に当たる雨。
そんな中、SPEEDがちょっとゆっくり目の曲を歌っている。
ALIVE/
「絶えまなく打ち寄せる波よー・・・」
何となく撮影も終わったって言う気分。
T.M.Revolutionの軽快な曲が流れる中、僕は渋滞にはまる。
HOT LIMIT/
「生足魅惑のマーメイドー」
撮影に行く時は決まって夜、家を出る。
朝から撮影を始める為に。
雨の日の運転や渋滞も嫌いでは無いのだが、計算がずれてしまうのは痛い。
しかも夜の国道1号線はトラックが多い。
夜なのに車中は後ろからこうこうと照らされ非常に明るい。
ゆっくり走っているのにこの曲によって時間の流れが早くなり、物凄く渋滞の気分になる。
でも眠気は吹っ飛びハイテンション。
良いのやら悪いのやら。
朝の撮影を終えひと休みした僕は移動し、鳴沢の道の駅に着く。
夏の富士山周辺は海抜が高いので少し涼しいが、観光客が多い。
いつもの様に駐車場で休もうと入っていったが異常に車が多い。
観光バスが何台もとまっていて中からは中学生と思われる若者がゾロゾロ降りてくる。
風は涼しくてもやはり昼間の陽射しは夏だった。
車の電気系統がおかしかったので、エアコンを切って走っていたがこの車の多さの中で駐車スペースを探してのろのろと走っている僕に太陽は容赦しない。
Rhapsody in Blue/
「終わらーない夏、君が変わったー・・・」
DA PUMPが追い討ちをかける様に夏を醸し出す。
学生達はトイレに行ったりお土産を買って、また冷房全開のバスに戻っていった。
僕は夏を満喫。
鳴沢の道の駅から山中湖を目指す。
夜の139号線は車が少ない。
しかも暗い。
でも車の中では篠原ともえがほのぼのと歌ってやけに明るい。
人陰の少ない道路にたまにあるコンビニに車がとまっている。
周囲に行く所がないのか、明るい所がないのか虫の様に集まっている。
僕もそんな虫の一匹なのだが、用もないのに寄ったりはしない。
そんな所で時間を潰している余裕もなければ、眠いのに移動する分の体力は無駄にはできない。
河口湖の近くまで来ると道路をくぐって走る場所がある。
なぜかそこが好き。
気分が良い。
夜の139号線で全然車がいないし2車線なのに制限速度かそれ以下で走る。
スピードには興味がなく、ただひとりじめの道路。
外灯が少ないけどちょっときれいで嬉しい。
そんな1人の時間を邪魔するかの様に4WDの車が猛スピードで追いこして行ったり、もう1車線をトラックが仕事だと言わんばかりに走っていく。
たまに覆面パトカーに捕まっている車もあるが、こんなにゆっくり走っていたら逆に怪しいかと思う時もある。
There will be love there/the brilliant green