車が宿
富士山好きの僕が富士山に見守られながら眠りにつく事。
それはなんとも言えない幸せ。
しかし、撮影に来ているので目をつぶった後の彼の姿が気になる。
今まで見た事のない姿をしていたらどうしよう。
なんて考えながら。
鳴沢の道の駅の駐車場で眠る。
ここは第1駐車場。
着いたのは夜の9時。
日常生活では眠れるはずもない時間なのだが、自然の中では夜は早く朝もまた早い。
撮影の為に朝は3時ぐらいに起きる事にしている。
逆算しても寝た方が良い時間だ。
道の駅の建物を挟んで富士山の頭が見える。
5月と言ってもまだまだ夜は寒く毛布一枚では凍えてしまう。
観光シーズンではないのと夜と言う事もあって自家用車は少なく、トラックが何台かとまっているだけだった。
携帯の目覚ましをかけ、眠りについた。
またも鳴沢の道の駅、第1駐車場。
ちょっと暖かくなったので(と言っても寒くないっと言った程度なのだが)車が増えてきた。
大学生らしき若者が、ドライブの途中で寄ったりする。
キャンピングカーが何台かあったり、なかにはスケボーを持参し、練習する人も。
そんななか僕は毛布に包まっている。
この場所に慣れてはきたけど、寝ている車の横を人が通過するのは気になってしまう。
そこで見つけたのが第2駐車場。
ここは夜中は電灯も消え真っ暗になる。
しかもあまり知られていないのか、わかりにくい所にあるのか人気がない。
見晴しもよく建物の邪魔もないので富士山が良く見える。
良い所を見つけた。
これからはここで寝よう。
10月の夜、水ヶ塚の駐車場に到着し次の日の撮影に備え毛布にもぐり込む。
10月と言っても五合目の近くのこの駐車場は夜ともなると氷点下になったりもするほど寒い。
日付が変わろうとしている頃、寒さと何かの物音に目が覚めた。
寝始めた頃にはほとんど自分の車しかなかった駐車場に何台かの駐車された車が見える。
気温差が大きいせいか車のガラスは曇りよく見えなかったが寒さのために暖房をつけると周りの状況が把握できた。
駐車場をドリフト族と言われる連中が占拠していた。
何とか族とついたからと言っても姿はふつうの青年や女の人もふつうの感じだった。
何が違うかというと走り屋と言われるような感じの車に乗っていると言うところ。
中には見学のために来ている軽自動車もいた。
自分の車は端の方に止めていたので周りを回られたわけではないのだが同じ駐車場内であのタイヤの擦れる音が続くのはきつかった。
しかも朝の3時まで続いたのである。
僕の撮影開始は4時。
結局その後の1時間しか寝ることができなかった。
心の中では「事故ってしまえ!」という叫びが怒りと共に湧いていた。