お月さまはおひさまにあこがれていました
周りのお星さまやおひさまから光りをもらってばかりで
お月さまは何もあげることができないからです
自分の力でぴかぴか光るおひさまをみて
お月さまも自分の光がほしいと思いました……
お月さまは、広い宇宙をみわたしました
向こうではおひさまが力強く光っています
周りではお星さまがちかちかと光っています
お月さまもふんわりと光っています
だけどお月さまはかなしくなりました
だってこの光はにせものなんです
お月さまの…自分の光じゃないんです……
お月さまは自分の光を手に入れるために
お星さまのところに行こうと考えました
お星さまに光り方を教えてもらおうと思ったのです
だけど お月さまは地球から離れることができません
お月さまはお星さまたちが自分のところへ
ぐるっと回って来るのを待つことにしました
お月さまの所に最初のお星さまがやってきました
ねえお星さま、お星さまはどうして光っているの?
お月さまはたずねます
僕は光りたいって思ったから光っているんだよ
お星さまは言いました
お月様は光りたいって思いました
いっぱいっぱい思いました
でもやっぱり光を手に入れることは出来ませんでした
お月さまの所に2番目のお星さまがやってきました
ねえお星さま、お星さまはどうして光っているの?
お月さまはたずねます
あのね、自分の中の、光を見つけるの
そして、それをもっともっと磨くのよ
お星さまは言いました
お月さまは光を探しました
一生懸命探しました
でもやっぱり見つけることは出来ませんでした
お月さまの所に3番目のお星さまがやってきました
ねえお星さま、お星さまはどうして光っているの?
お月さまはたずねます
お月さまはどうして光りたいの?
お星さまはお月さまに聞き返しました
光りたい『理由』は何?
『理由』が分からなければ光ることは出来ないよ
お月さまは考えました
僕はどうして光りたいんだろう…
”光りたい『理由』は何?”
お月さまはずっと考えていました
”理由が分からなければ光る事は出来ないよ”
さっきのお星さまの言葉が頭の中をぐるぐる回っています
お月さまは最初、おひさまに憧れて光がほしいと思いました。
でも、それではお月さまは光れなかったのです
僕が、今まで思ってた光りたい『理由』は本当の『理由』じゃなかったのかな・・・
お月さまは少しかなしくなりました
そんなお月さまの所へ、小さな流れ星がやって来ました
まだ見習いの、光の弱い流れ星です
そしてお月さまに言いました
ねえお月さま、僕もお月さまみたいに優しく光りたい
お月さまは悲しく笑って答えました
この光は僕の本当の光じゃないんだよ、おひさまからもらった光なんだよ
それを聞いた小さな流れ星は不思議そうに言い返します
でも、お月さまの光は皆を照らしてるよ
おひさまの光の形を変えて、皆に光を届けてるもん
お月さまはびっくりしてその小さな流れ星を見つめました
光り方はちがっても、みんなに優しい光を届けられるような
そんなお月さまみたいに僕はなりたいんだ
流れ星が去ったあとお月さまは地球を見下ろしました
今夜は雲もなく、お月さまからは地球の様子がよく見えます
広い道の真ん中で、お月さまを見ている小さな子供
病院の窓からお月さまを見上げている女の人
縁側で光を浴びながらお酒を飲んでいるおじいちゃん…
そしてそんな人たちの顔は、みんな柔らかく微笑んでいるのでした
お月さまは何だかすごく泣きたくなりました
『理由』がやっとわかった気がしたのです
僕は、皆に『僕の』光を届けたかったんだ…
でももう、お月さまは知っています
この光は自分だけの光じゃないけれど
それでもお月さまは『光って』いるんだということ
誰かがお月さまを見て微笑む限り、お月さまは『光って』いるんだってこと
…お月さまの夢は、自分の光をもつという夢は
本当はずっと前から叶っていたんだということ…