永遠の親友
「祐一…起きて」
「ううーーん…」
「祐一…朝」
まどろみの中で聞き覚えのある声が聞こえてくる…
「名雪…?」
ビシッ!!
「痛っ!!」
ああ…この気合の入ったチョップは…
俺は確信をし、身体を起こす
「よ、おはよう舞」
「私…名雪さんじゃない」
舞は相変わらずの仏頂面だが、最近なんとなくだが考えてる事が表情に現れるようになった
「舞…もしかして妬いてるのか?」
ビシッ!!
本日2度目のチョップ
「って…はは、冗談だって」
「……」
「ところで…佐祐理さんは?」
「朝ご飯、作ってる」
そう言って舞が台所へ目をやる。俺も続いて目をやると
なるほど、確かに包丁の規則的な音と、香ばしい匂いがしてきた。
「そっか、今日は佐祐理さんの当番だったな。こりゃ期待できそうだ」
「祐一、私には期待してないの…?」
「そんなことないぞ?舞の料理だって美味いさ。卵焼きだけな」
俺がイジワルっぽく笑みを浮かべるとやはり舞は表情を曇らせる。
俺は舞の次々と変わる表情を見るのが好きだ。
特に最近は、それが目に見えて現れているので尚更意地悪をしたくなる。
「冗談だって、そんな悲しい目をするなよ」
「それでも傷ついた…」
「悪かったって、それじゃあ今日は折角の休みだし、動物園でも行こうぜ」
「ゴリラさん…?」
「ああ、ゴリラさんに会えるぞ」
「ウサギさんは?」
「ウサギさんにだって会える」
「舞〜!!祐一さんは起きた〜?…ってあれ?佐祐理、お邪魔だったかな?」
声がして振り返ると、そこにはエプロン姿の佐祐理さん。
その姿がとても自然なものに見えるから不思議だ。
それとは反対に初めて舞がエプロンを着た時、大笑いしたっけな。
「???」
無意識の内に思い出し笑いをしていた俺を見て舞は不思議そうな顔で覗き込んでいる
「佐祐理さん、おはよう」
「おはようございます、祐一さん」
あれから舞たちが卒業し、やがて俺も卒業を迎え
兼ねての計画通り、俺たちはアパートを借りて三人で住む事になった。
佐祐理さんは俺や舞にとって『お母さん』的な存在だ。
俺はそんな佐祐理さんに心から感謝している。
転校して来て間も無い俺のことを『親友』と言ってくれた彼女。
もちろん舞だって俺と同じくらい…いや俺以上に佐祐理さんに感謝している事だろう
「佐祐理さん、さっき舞と話したんだけど、今日動物園に行かないか?」
「あはっ、そぉ思って〜佐祐理はちゃんとお弁当も作りましたよ」
「おお!?さすが佐祐理さんだ。誰かと違って気が利くじゃないか」
なあ、舞。と俺は舞の反応を確かめようと振り返る。
「祐一…」
もしかして、怒ってるのか?
そう思って俺はバツの悪い顔をすると…
「誰かって、誰?」
そうだった…こいつはいつだって色んな意味で冗談の通じない奴だった…
「ほーら舞。いつまでも祐一さんにくっついてないで早くご飯食べよう」
「そうだぞ、舞。いくら俺に惚れてるからっていつまでもくっついてるなよ」
ビシッ
ビシッ
「いたっ…あははー。舞って可愛い〜…ね、祐一さん?」
「てて…ったく舞。そんなポンポン叩くなよ」
「祐一が悪い…」
こんな他愛もないやりとり…
それが俺にとってはとても心地よく思える。
それはきっと舞や佐祐理さんにとってもそうだろう。
これからはずっと三人一緒だ。
10年、20年経っても…俺が年寄りになってもずっと…
そう、俺たちは永遠の『親友』なのだから…
−END−
後書き
さて、これはかなり前に書いて、UPしわすれていた作品です(笑)
どのくらい前かって?そうですねぇ〜…1年くらい前でしょうか(爆)
つーかこの祐一君、羨ましいです(笑)
そうですねえ…僕だったら…佐祐理さんですかね〜
執筆日……不明(爆)多分1年くらい前