white memories〜第四章〜

〜後編(?)〜

 

 俺には先生が何を言っているのかよくわからなかった…
ただ…
 『今日から明日にかけてが山です…』
の一言だけしか頭の中に入らなかった
 「どうして…なんで、いつも俺の大切な人ばっかり…」
それは自分に対しての怒りなのか、俺は壁を殴る
不思議と痛みはなかった。

 「もしもし?」
 「…あ、梓か?」
 「裕介!?今どこにいるのよっ!いつになっても帰ってこないから心配したんだよ」
こいつ…ついさっきあんなことがあったばっかりなのに、俺のこと待っててくれたのか…
今は、その梓の優しさにただただ感謝するだけだった
 「それに関してなんだけど…」
俺はおおまかに事情を話す
 「……そんなのって……」
 「おいおい、なんでお前が泣き出すんだよ」
 「だって…裕介が…綾ちゃんのときと同じなんだもん…」
 「それは違うぞ、同じにはしない…絶対にな…」
 「そだね…ゴメンね?変なこと言っちゃって」
 「それでさ、もしかしたら明日、学校さ…」
 「うんっ、それは私に任せて!だから裕介は、一緒にいてあげて」
梓は俺の言いたい事をわかってくれた
今になってやっと、梓の優しさに気付いた…
 「ありがとな…」
自然とそう言ってしまう。それはこんな俺を今までと同じように見てくれる
梓への感謝の気持ちからでた言葉なのか。俺にはよくわからなかった。
ただ、ホントに自然と出てくる
 「お礼なら…今度チョコレートパフェでも奢ってよねっ」
電話を切っても、梓の優しさが身に残っていた。
同じにしてたまるか…あの時と同じように…大切な人を何もせずに失うのだけは…
でも、俺はこれほどまでに立花のこと…
最初の内はどこか綾香の面影があるから意識していたのかもしれない
だが、今は違う。目の前にいるのは綾香ではなく確かに立花という人だった
いつも俺のボケにもマジメに突っ込んでくれる女の子…
どこか無愛想で、でもホントは心のあたたかい女の子
俺はいつしかそんな立花のことが好きになっていたんだな…
だから、失いたくない。それは我侭なのだろうか?
大切な人を失いたくないという気持ちはそんなにも滑稽に思えるのだろうか?
病室には静かに横たわる立花の身体…
聞こえる音は立花の寝息と規則的な呼吸器の音だけだった
 「立花…絶対に生きろよ…俺はまだあの場所から見える景色…見せてないんだからな」
そっとその手を握り、そう呟く俺
その手は、いつものような温もりが残っていた。
そう、この手の温もりがある限り、俺はいつまでも待ちつづける…
そして俺は夢を見た…

 

 【裕介編】

 「裕介…」
 「ん…」
 「裕介ってば」
 「梓か…?まだ朝じゃないだろ…」
 「梓ちゃんじゃないよ、わたしだよ」
 「……嘘だろ…なんで、なんで綾香がここに?」
 「久しぶりだね、裕介っ」
 「久しぶりって…俺、どうしちまったんだ?」
 「ふふ、大丈夫だよ裕介はちゃんと生きてるよ」
 「それはよかった…じゃなくて!」
 「じゃあ…『もう死んでるよ』の方がよかった?」
 「……もういい、そうだ!俺、綾香に言うことがたくさんあったんだ」
 「そんなに焦らなくても…何かな?」
 「俺…俺…約束したのに、ずっと側にいるって約束したのに…ゴメンな、謝ってどうにかなるってものじゃないけど」
 「ううん、わたしは大丈夫。だって裕介はわたしにいっぱいいっぱい思い出くれたもん」
 「でも俺…」
 「もう…じゃあね〜えっと…あの時、裕介がわたしにしてあげたくて、できなかった事を立花さんにしてあげて?それで許してあげる」
 「なんだよ、それ」
 「言葉通りだよ、ちょっと妬けるけどね。でもわたしはずっと裕介の中にいるからね。だから…」
 「わかった。なあ、綾香」
 「なぁに?」
 「立花…助かるよな?」
 「それは裕介次第だよ」
 「俺次第?」
 「そう、信じ合えば…想い合えばきっと奇跡は起こるよ」
 「信じ合い、想い合う…」
 「そうだよ、それじゃあ…わたし行くね?」
 「ああ…ありがとな?綾香」
 「どういたしまして。でも…」
 「ん?」
 「できれば最後にもう1度一緒に…あの景色見たかったね…」
 「泣く奴あるかよ…見れるよ、いつだって一緒にな。俺の中にずっといるんだろ?だったら見られるじゃないか」
 「……そうだねっ!うんっなんか元気でた!」
 「元気のある幽霊さん…か」
 「ふふ、変な表現だね。じゃあ今度はホントにばいばい」
 「ああ、じゃあな」

俺にとってもう一人の大切な人が確かにそこにいた。
目が覚めるとそこは病室。
夢だよな…
そう思って自分の手に目をやるとそこには、かすかな雫が…
そう、これは夢なんかじゃない、確かにいたんだ綾香が。
でもこの手の温もりは綾香ではなく立花のものだ
今はこの目の前にいる人を愛しく思う。
失いたくない…大切で…大好きな奴だから
あの時綾香は言ってくれた
 『そう、信じ合えば…想い合えばきっと奇跡は起こるよ』
だから俺は信じる。きっと助かると…
そして俺は想う。これほどまでに大好きだと…
 「だから…深雪!!!目を覚ましてくれっ!…」
そして…目の前の少女は…

  

【深雪編】

私…どこにいるんだろう?
なにも聞こえないし、なにも見えない…
そういえば…私、車に跳ねられて…
寒い…闇の中、私は必死になって探し求める。でも…
何を探すんだろう?
これが死ぬってことなの?

 「深雪…」
 「誰?私を呼ぶのは…」
 「悪いっ!かなり遅れちまったな」
 「直樹…?」
 「あ?当たり前だろ。なに言ってんだよ」
 「ホントに直樹なの?」
 「あのなあ…俺のこと忘れちまったのか?」
 「ううん、ただ…ちょっとビックリして」
 「そっか。…なんか変わったなお前」
 「そうかな…?直樹はそのままだね」
 「はは、死んだ人間が変わってたまるかよ」
 「…やっぱり私も…?」
 「いや、でも深雪次第だ」
 「どういうこと?」
 「俺と一緒にこっちにくるか。それとも…ってことだよ」
 「私は…」
 「冗談だよ。お前はあっちに戻れ」
 「えっ?」
 「悔しいけど、俺以上にお前の事大切に想っている奴、いるみたいだからな」
 「大切に想ってくれてる人…?」
 「聞こえないか?耳を済ましてみろよ」
 「………」
 『深雪!!』
 「ぁ…」
 「な?聞こえるだろ?」
 「この声…裕介?」
 「あいつ…俺と同じくらい…いや、俺以上にバカみたいだしな。深雪が帰るまでずっと待ちつづけるぜ?
 今までずっと深雪が俺のこと待っていたように…な」
 「直樹…」
 「ずっと言えなかったことが言えたしな。俺はもう行かないと」
 「言えなかった事?」
 「遅れてごめん…ってな!」
 「私も…プレゼント、ありがとね?」
 「んじゃあな!いつまでも…笑っていろよ?いつかした約束だからな」
 「うん…ありがとう」

再び辺りは真っ暗な闇へ戻る…
 「深雪…」
 「裕介…」
私は声のするほうへ歩き出す
やがて前方に光が見える
大切な人の声が聞こえる…大好きなあの人の声が
でも、目を覚ましたら直樹の事忘れてしまいそうで怖かった…
 「深雪!」
ああ…この優しい声があるから私は安心して目を開けられる
目が覚めたら真っ先に言おう…

「おはよう、裕介…」

 「おはよう…じゃねえだろっ!人がどれだけ心配したと思ってるんだ」
 「裕介…泣いてる?」
 「な、泣いてねえよ!これは、あれだ…そう、目薬だよ」
 「そうなんだ」
俺の冗談を真に受ける深雪を見て
安心感があらためて俺の心の中に広がる
 「今度は離さない…ずっと、ずっと深雪と一緒だ」
 「言っている事がよくわからないけど…」
わからなくて当たり前だ、夢の中で綾香に言われたことをそのまま口にしたのだから
 「けど…私も裕介と一緒にいたい」
 「深雪…」
 「そう言えばいつのまにか名前で呼んでますね」
 「ん?なんかこっちのがしっくりくるしな。それに…」
 「??」
 「大切な人、だからな。名前で呼ばないと変だろ?」
 「そう…ですね」
思い出の場所で出会った不思議な女の子…
その不思議な女の子は今、一番大切な人へと変わっていった…

To be continued〜

―後書き―

えー…取り敢えず後編です。なんか前編が短くなっちゃってすいません
この章は結構簡単に書けました。手抜きだから早かったのかもしれませんが…(汗)
プロローグと同じく主人公、ヒロイン両視点システムを採用しました
内容手抜きなのはそのためかもしれませんね(笑)
残りはエピローグを残すのみ!!どうか最後まで付き合ってやってください
でわでわ(∵)ノ

執筆日:2001/01/16