おおきく振りかぶって(英題:Ookiku Furikabutte)


† アニメ 作品紹介 †
ジャンル登場キャラクタ :声優
スポーツ 三橋廉:代永翼
阿部隆也:中村悠一
花井梓:谷山紀章
田島悠一郎:下野紘
沖一利:佐藤雄大
栄口勇人:鈴木千尋
巣山尚治:保村真
水谷文貴:角研一郎
泉孝介:福山潤
西広辰太郎:木村良平
百枝まりあ:早水リサ
志賀剛司:室園丈裕
篠岡千代:福圓美里
浜田良郎:私市淳
梅原圭介:疋田高志
榛名元希:松風雅也
原作
ひぐちアサ
脚本
黒田洋介
監督
水島 努




 中学時代、三星学園野球部でエースピッチャーだった三橋廉は、学園の経営者が祖父であることと他人に マウンドを譲らない頑固さから、チームメイト達に『ヒイキ』でエースを続けさせてもらっていると 軽蔑されていた。そのため、極端に卑屈で自信の持てない性格になってしまった。三橋は高校進学の 際はもう野球をやらないと心に決め、埼玉の西浦高校へと進学する。
 西浦高校は野球部を新設したばかり。部員は新入生10人、しかも監督は若い女性であった。野球に 対する執着を捨てきれずに部の様子を見に来た三橋は、監督の百枝マリアに捕まり、自然と野球部に 入部することに。投手経験のある選手が居なかったため、三橋は早速エース投手を任されることとなった。 もう一度投手としてマウンドに立てる喜びが沸いたものの、彼の脳裏にはすぐさま中学時代の周囲の軽蔑が フラッシュバックする。それは、実力が無い自分が投げることで再び周囲からあきれられるのではという 恐怖心であった。しかし、捕手を務める阿部は、自信無さ気に投球する三橋がとんでもない制球力と 不思議な癖球を持っていることを見抜く。球威は無いものの、自分の出したサインに従順に従い、 100%狙い通りに投球できる投手こそ、阿部が求めていた理想のピッチャーであった。


† アニメ 作品レビュー †
 多人数制のスポーツアニメは極少数の実力者がチーム全体を引っ張っていくパターンのものしか見て こなかったので、本作がチームワークで欠点を補い合う清々しさやチームプレイによる駆け引きの奥深さを 重視した作風であることに新鮮味を覚えた。オーソドックスなスポーツドラマが故に、アニメとしては かえって異色に感じる。

 三橋(投手)の制球力があっての阿部。阿部(捕手)の分析力があっての三橋。得点圏にランナーが居て こその田島(四番)。田島には劣るものの、「大抵の学校で1軍に入れる」と評される花井(キャプテン)。 優れた選手は居れど、実際は万能な人間など存在しようがない。そんな多種多様な選手達の得意不得意を踏まえ、 相手の特徴や状況に応じて如何に勝利への方程式を導出していくかといった水面下での心理戦が 実に丁寧に描写されている。他の野球アニメだと打者と投手の駆け引きだけで勝負が完結してしまうが、 本作ではむしろ裏方である捕手や監督が物語の進行役となっている。彼らの思考を前面に出し、彼らの考え出した 戦略が勝負に大きく貢献していくのがこの作品ならでは。特に頭脳派である阿部の活躍はめざましく、 打者の些細な行動や思考を逃さず巧みに分析して投手に絶妙な指示を下していく。監督も試合運び 全体を視野に入れつつ各選手に的確な指示を出す。こういったやり取りは実際の野球でも普通に 行われている地味なものながら、従来の野球アニメだとあまり重視されなかった部分だろう。
 極端に自信の無い主役ピッチャーの存在も特色の一つで、実力の割に精神的脆さを持った投手三橋を 如何に理解し、励まし、最高の投球をさせるべくフォローするかもチームメイトの重要な仕事。三橋には 変わった魅力があり、あまりの被害者妄想にいらいらさせられつつも、恐怖心が安堵に変わる様が妙に 微笑ましいし、信頼すればするほど実力を発揮してこたえてくれる頼もしい一面も持っている。
 欠点と言っていいのか分からないが、野球のルールを知らない人には、このアニメの面白さをどこまで 理解できるのか少々疑問も残る。実際、野球のルールを知らない知人にこのアニメを見せたら、 駆け引きの妙がたくさん盛り込まれていることをあまり理解してくれなかった。まあ、その知人も 「面白い!」とご満悦だったので、ルールを知らない人にとってもそれなりに面白いと言えるのだろう。 漫画版には「フォースプレイ」や「タッチアップ」などの野球のルールを巻末で解説してくれているので、 ルールに疎い人は参考になるかと。
 刊行されている原作がまだ8巻まで(※2007年現在)であり、アニメはこの8巻までを消化する短いもので あったが、今後原作が進んだら是非続きをアニメ化して欲しい(もちろん原作に忠実に!)。そんなわけで、 評価は「S」に。
評価 執筆者 カンガルー【07/11/17掲載】


戻る